5chのような掲示板に書き込まれた記事の削除をしたい場合に,どのようにすれば削除することができるか解説します。
【事例】
事実を基にしたフィクションです。
Aさんは一般生活を送る主婦です。
ある日,5chの掲示板に,「A(本名)さんのやってきた悪行一覧」というタイトルのスレッドが立ちあげられ,「AというやベーBBAが○○市○○(細かい住所)にいてさ,Aのやってきた悪行一覧がこれ,①生活保護受給資格が無いのに,生活保護を受給,②風俗店で勤務し,ヤクザを使って恐喝(以下略)」と最初に書き込まれ,「>>1 こいつマジバカだろ,大体生活保護不正受給については,マジでパクられたしな。ソースはこれな(URL)」「>>1 風俗で,ゆすりとか終わってんなwww強盗で捕まって死刑にでもなればいいのに」と続いて書き込まれました。なお,Aさんが,風俗店で勤務し,ヤクザを使って恐喝を行ったことについては,虚偽の事実であることが,法律相談で判明しました。
5chの記事の削除はどのようにするのか
大まかに,裁判によらない方法と裁判による方法があります。
裁判によらない方法というのは,削除申請フォームに申請し,投稿の削除を行ってもらう方法です。
裁判による方法というのは,発信者情報開示請求を行い,削除の仮処分を行う方法です。
5chで削除申請を行う方法
「5ちゃんねる」のトップページ右側の「削除ガイドライン」というリンクから,削除要請版に飛び,「5ちゃんねる削除体制」というページの【削除フロー】に書かれたメールアドレスにメールを送ることで,削除することができる場合があります。
このメールには,件名を「削除申し立て」として,内容に「URL,レス番号,削除理由」を書き,「理由を根拠づける資料(あれば),本人確認のための資料」を添付する必要があります。
この削除対象になる判断基準として,5チャンネル側は1名誉,2プライバシー,3平穏に生活する利益,4社会に害悪が生じる現実的危険のある情報についてリクエストのあった記事について削除すると宣言しています。
なお,犯罪に関する情報や法人に関する情報については,原則として,裁判手続によって仮処分を取得する司法判断を経てから応じると宣言しています。
そのため,Aさんについても,1の名誉や2のプライバシーにかかわる情報を書き込まれたとして,削除ガイドラインに基づき削除要請をすることができます。
なお,この削除申請ですが,本人が削除申請を行うことは出来るのですが,この削除申請については,ノウハウのある弁護士に頼むべきです。
また,弁護士以外の人に頼むことについては,弁護士法72条,27条によって禁止される非弁行為に該当する可能性がありますので,弁護士以外に頼むことは控えるべきです。
裁判所の仮処分によって投稿の削除を行う方法
5chの削除ガイドラインの方針としては,「犯罪に関する情報及び法人に関する情報に関する情報の場合は,原則として,裁判手続によって仮処分を取得して,司法判断を待つことにする」とされています。そのため,犯罪報道に関する情報が書き込まれている場合は,裁判所の仮処分によって削除申請をすることしかできないという場合があります。
裁判所の仮処分によって投稿の削除を行う方法としては,投稿記事削除仮処分を行う方法があります。
この手続は,名誉権あるいは,プライバシー権などが侵害されているとおおむね認められる場合,通常の裁判よりも迅速かつ,簡易な手続によって暫定的に投稿記事の削除を行わせるものです。
この判断については,裁判所に申し立ててから,1か月から2か月程度で結論が出るとされています。そのため,比較的迅速に記事の削除を行わせることができます。
この手続についてもノウハウのある弁護士に頼むことが望ましいです。
また,弁護士や,裁判所から見てどのような書き込みがどのような文脈で出てきたのか分かりやすくするために,書き込まれた記事のスクリーンショットを残しておくと望ましいです。
記事の削除を行わせる場合の注意点
記事の削除を行わせる場合,ログも削除されるのが一般的です。そのため,投稿された記事の削除だけではなく書き込んだ人に対しても責任追及を行いたいという場合,記事の削除ではなく,発信者情報開示請求によるべきです。
この記事の削除については,あくまで,書き込んだ人に対して責任追及を行うつもりはないが,投稿された記事が削除されればそれで,事件が沈静化するという人にとっては有効な手段です。
【事例】の場合の対処方法
この事例の場合,Aさんについての過去の犯罪報道や,別の犯罪行為についての記事が書かれています。
このうち,少なくとも②の風俗店に勤務してゆすりを行ったという事実については虚偽の事実ですので,名誉権侵害を理由として削除請求をすることができます。
また,Aさんの住所について正確な住所が書かれていますので,この点をとらえて,プライバシー権侵害を理由に削除請求をすることができます。
続いて,方法ですが,今回の事例の場合,Aさんの住所について正確に書かれていますので,プライバシー侵害を理由に最初に書き込んだ人の投稿を削除ガイドラインで削除するよう申請することは可能であると考えられます。
一方,最初に書き込んだ人に続いて,書き込んだ人については,個人の犯罪に関する情報ですので,5chへの削除申請によって対応してもらうことは期待できません。そのため,裁判手続を用いて削除するよう仮処分の申し立てを行うことになります。
仮処分による場合,少なくとも,事実無根のAさんが風俗店で恐喝を行ったことの記事については削除が認められそうです。一方,犯罪報道として存在している生活保護の詐取については,事件が発生してから長い年月が経過した等の事情が無い限り削除は簡単には認められないということになります。
このようにインターネット上の投稿の削除は複雑で、法律専門家の弁護士に依頼することで適切な対応が可能になります。
インターネットの記事にお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。