Archive for the ‘ネットトラブル’ Category

発信者情報開示請求の「意見照会書」が届いたら――慌てる前に知っておきたい対応の基本

2026-10-12

名誉棄損

ある日、契約しているプロバイダ(インターネット接続会社や携帯電話会社)から、見慣れない封筒が届く。開けてみると「発信者情報開示に係る意見照会書」と書かれている――。

SNSや掲示板への書き込みをめぐって、このような書類を受け取ることは、珍しくなくなっています。「身に覚えがある」という方も、「家族の誰かが書いたのかもしれない」という方も、まずは落ち着いてください。この書類が届いた段階では、まだ何も決まっていません。ただし、ここでの対応がその後を大きく左右します。

「意見照会書」とは何か

ネット上の投稿で名誉やプライバシーを傷つけられたと考える人は、投稿者が誰なのかを特定するため、プロバイダなどに契約者の氏名や住所の開示を求めることができます。これが「発信者情報開示請求」です。根拠は、かつて「プロバイダ責任制限法」と呼ばれ、2025年4月に名前が変わった「情報流通プラットフォーム対処法」です。

ただし、請求があればすぐに開示されるわけではありません。開示が認められるのは、投稿によって権利が侵害されたことが「明らか」で、開示を受ける正当な理由がある場合に限られます。そしてプロバイダは、開示するかどうかを判断する前に、原則として投稿者側の意見を聞かなければなりません。そのために送られてくるのが意見照会書です。

つまり意見照会書は、「あなたの言い分を聞かせてください」という機会のお知らせです。

やってはいけない3つのこと

①無視する

回答しなくても、手続きは止まりません。プロバイダや裁判所は、投稿者の言い分がないまま判断することになり、反論できたはずの事情が考慮されないおそれがあります。

②慌てて投稿やアカウントを消す

削除しても、相手はすでに画面を保存しているのが通常です。消すこと自体が悪いわけではありませんが、自分の側の記録まで失うと、反論の材料もなくなります。消す前に、投稿の内容と前後のやりとりを保存してください。

③相手に直接連絡する

謝りたい気持ちからでも、DMなどで直接連絡すると、かえってこじれたり、不利な発言を残してしまったりすることがあります。

一般的な対応の流れ

  1. 回答期限を確認する。期限は受け取ってから2週間程度とされていることが多く、思いのほか短いものです。間に合いそうになければ、プロバイダに延長を相談します。
  2. 問題とされている投稿を確かめる。どの投稿が、誰の、どんな権利を侵害したと言われているのかを読み取ります。自分に覚えがなければ、同じ回線を使う家族や同居人にも確認します。
  3. 開示に同意するかどうかを決める。同意すれば、氏名や住所が相手に伝わります。同意しない場合は、その理由を書きます。
  4. 回答書を作り、期限内に返送する。

いちばん難しいのが3です。たとえば、書いた内容が事実であり社会的に意味のある指摘だった、単なる感想や論評の範囲だった、そもそも相手を指した投稿ではない――といった事情があれば、開示が認められない可能性があります。その場合は、理由を具体的に書き、裏づけとなる資料を添えることが重要です。「同意しません」とだけ書いて理由を添えなければ、言い分が判断に反映されにくくなります。

反対に、反論が難しい投稿であれば、争い続けるよりも早めに謝罪と話し合いに進むほうが、結果として負担が軽くなることもあります。どちらが得策かは、投稿の中身次第です。

開示された後に起こること

開示が認められると、相手から慰謝料や調査にかかった費用の支払いを求める書面が届いたり、裁判を起こされたりするのが一般的です。

さらに、民事だけで終わらないこともあります。投稿の内容によっては、名誉毀損罪や侮辱罪、デマでお店や会社の信用を傷つけた場合の信用毀損罪・業務妨害罪にあたるとして、警察に告訴される可能性があります。侮辱罪は2022年に刑が重くなり、「軽い悪口のつもりだった」では済まない時代になりました。

この段階では、相手との示談(話し合いによる解決)が成立するかどうかが、民事・刑事の両面で大きな意味を持ちます。

届いたら、期限が来る前にご相談ください

意見照会書への回答は、ご自身で書くこともできます。けれども、「この投稿は法的に問題になるのか」「争うべきか、認めて話し合うべきか」の見極めは、専門的な判断が必要なところです。最初の回答で書いた内容は、後の手続きでも資料として扱われることがあるため、入口での対応が大切です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件を中心に、投稿した側・された側の双方からご相談をお受けしています。回答書の作成から、開示後の示談交渉、万一告訴された場合の刑事弁護まで、一貫して対応できます。

回答期限は待ってくれません。封筒が届いたら、書類一式をお手元に、できるだけ早くご連絡ください。

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Grokでわいせつ画像を作成したら犯罪?生成AIの法的責任を解説

2026-10-05

AI

Xが搭載した生成AIのGrokにより、わいせつ画像が作成されるという事件がありました。

Grok(グロック)は、イーロン・マスク氏が創設したxAI社によって開発されたAIチャットボットです。
Grokは簡単な質問への応答から、リアルタイムの情報検索・文章作成・コード生成・画像生成など、幅広い用途に対応しています。

今回は、この画像生成機能が悪用されました。

実在の人物の写真を利用し、本人の同意なく水着や裸に編集し、わいせつ画像をインターネットに投稿して拡散されました。
特に被害を受けたタレントを中心に、非難が広がり、大きな社会問題となりました。
批判を受け、Xは安全対策を強化し、実在の人物をわいせつな姿に編集できなくしました。
Grokを利用できるのは有料ユーザーだけにし、Xの利用規約に違反しようとする者が責任を問われやすくするようにしました。

今回のXのGrokだけでなく、生成AIを利用して実在の人物の写真や動画をわいせつな内容に修正することは、簡単にできるようになりました。
しかし、このような行為は、犯罪が成立して刑事処分を受け、逮捕される可能性もあります。

わいせつ電磁的記録陳列

生成AIで女性芸能人の画像を編集し、偽のわいせつ画像などをインターネットで販売した人物が、不特定多数の利用者が閲覧可能な状態にしたとして、わいせつ電磁的記録陳列の疑いで逮捕される事件がありました。

わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、2年以下の拘禁刑若しくは250万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は拘禁刑及び罰金を併科されます。
インターネット等によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様となります。
有償で頒布する目的で、上記の物を所持し、又は電磁的記録を保管した者も、同様となります。

実在する女子児童の画像を元に生成AIで作成された性的画像を所持した人物も、児童ポルノ禁止法違反で起訴されました。

児童ポルノ

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律により、児童ポルノの所持や提供等が処罰されることになります。

自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者は、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処されます。
自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノに該当する児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管した者も、同様となります。

児童ポルノを提供した者は、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金に処されます。
電気通信回線を通じて児童ポルノに該当する児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様となります。
児童ポルノを提供する目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同様となります。
児童ポルノを提供する目的で、電磁的記録を保管した者も、同様となります。

名誉毀損

また、悪用された実在する人物との関係で、名誉毀損罪が成立する可能性があります。

公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処されます。

他の犯罪の成立や損害賠償の可能性も

他にも、著作権法違反等の犯罪が成立する可能性があります。

もちろん、民事上の不法行為が成立し、損害賠償義務が生じる可能性があります。

生成AIでわいせつ画像を作成したら

生成AIによるわいせつ画像作成について事件となったら、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
刑事事件やインターネットトラブルに詳しい弁護士が対応いたします。
初回相談は無料ですので、ぜひお気軽にご相談ください。

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SNSでいじめ動画を拡散するとどうなる?法的責任を解説

2026-09-28

名誉棄損

最近、いじめが撮影された動画がSNSを中心に拡散されることがあります。

文部科学省が、「SNS上における暴力行為等の動画の投稿・拡散を受けた緊急の対応等について」の通知を発表しました。

児童生徒が安全・安心に過ごすことができる環境の整備として、暴力行為やいじめが見過ごされていないか、緊急の確認、暴力行為やいじめを許容せず、児童生徒が声を上げられる環境の整備、をしていくことを示しました。
確認された暴力行為やいじめへの対応として、被害児童生徒の安全確保と心身のケア、加害児童生徒への毅然とした対応、をすることを示しました。
SNS等における投稿・拡散への対応について、人権侵害につながり得る動画や誹謗中傷が投稿・拡散された場合における関係機関等と連携した対応、SNS等における誹謗中傷などによる人権侵害のおそれ等も含めた情報モラル教育の実施、をしていくことを示しました。

いじめ加害者等の法的問題

いじめ動画が拡散された場合、加害者、被害者、投稿した第三者について、様々な法的問題が生じる可能性があります。

加害者に関しては、いじめが犯罪に当たるのであれば、これをきっかけに警察が動き、正式に被害者から被害届が出され、刑事事件化する可能性があります。

暴行罪、傷害罪、脅迫罪、恐喝罪、窃盗罪、強盗罪、名誉毀損罪、侮辱罪、不同意わいせつ罪、性的姿態等撮影罪、児童ポルノ禁止法違反、等の犯罪が成立する可能性があります。

状況次第では、逮捕されることもあります。

人物が特定され、氏名等の個人情報がさらされることもあります。

学校から退学等の処分を受けたり、勤務先から懲戒解雇等の処分を受けたりすることになります。

被害者から民事上の損害賠償請求をされ、裁判に訴えられることもあります。

直接手を出した人物だけでなく、仲間として近くにいた人物も共犯者として同様の責任を取らされる可能性があります。

被害に遭った場合

被害者は、警察や所属する学校・勤務先から詳しく話を聞かれることになる可能性があります。

その結果、正式に警察へ被害届を出すことになる可能性があります。

刑事事件化し、加害者が逮捕されたりして、刑事処分をさせることになります。

加害者が同じ学校・勤務先であれば、しかるべき処分を求めていくことになります。

弁護士に相談・依頼をし、加害者に対して民事上の損害賠償請求をし、裁判に訴えることにもなります。

しかし、動画拡散により、被害者自身の個人情報も流出してしまったら、被害者自身の精神的ダメージがより大きくなってしまうことにもなり、動画の拡散が必ずしも被害者のためになるとは限りません。

更には、被害者自身にも非があった等の誤った情報も拡散され、更に被害が拡大してしまうこともあります。

まとめ

いじめ動画を投稿した第三者は、正義感からこのような行為を行ったのかもしれません。

しかし、状況次第では、投稿行為が名誉毀損罪や侮辱罪等の犯罪が成立してしまう可能性があります。

動画が拡散する過程で、間違った情報も同時に拡散されていく可能性があります。

そのような間違った情報を信じてしまい、更にそのような間違った情報を拡散させてはいけません。

民事上でも、プライバシー権の侵害として、損害賠償請求をされる可能性もあります。

何よりも、被害者自身がいじめ動画の拡散を望んでいない可能性もあります。

このようないじめを発見したら、本来であれば学校や警察やその他のしかるべき機関に報告するべきです。

安易にインターネット上に投稿して拡散させるという手段を取るべきではありません。

いじめ動画の投稿により法的問題が生じたら、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
刑事の加害者・被害者への対応や、インターネットトラブルに詳しい弁護士が対応いたします。

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マッチングアプリの相手が既婚者だった、お金を送ってしまった──「独身偽装」と「ロマンス詐欺」にあってしまったら

2026-09-21

指輪

マッチングアプリや出会い系サイトは、いまではごく普通の出会い方のひとつになりました。その一方で、トラブルとなっているのが「独身偽装」と「ロマンス詐欺」の問題です。今回は、この2つについて、刑事・民事の両面から整理してみたいと思います。

1 「独身偽装」──既婚者なのに独身のふりをしていた

民事:慰謝料請求ができる可能性があります

本当は他の人と結婚しているのに、そのことを隠して交際し、性的な関係を持った場合、だまされた側は「貞操権(性的自由)侵害」を理由に、不法行為に基づく慰謝料を請求できる可能性があります(民法709条)。
最高裁も、妻子があることを隠して関係を持った男性に対して、女性からの慰謝料請求を認めた例があります(最判昭和44年9月26日民集23巻9号1727頁)。

ただ、金額はそれほど高額にはなりにくく、実務上は数十万円から100万円程度に収まることが多い印象です。交際期間の長さ、妊娠や中絶の有無、嘘のつき方の悪質さなど、事案によって認められる金額はかなり変わると思われます。

そして、実はもうひとつ気をつけていただきたいのが、逆に独身偽装の被害者が請求される側になるリスクです。
相手の配偶者から「不貞行為だ」として慰謝料を請求されるケースは、決して珍しくありません。もっとも、相手が既婚者だと知らず、知らなかったことに落ち度がなければ、故意も過失もないため責任は負いません。この場合、「本当に知らなかった」ことを裏づける証拠が重要になります。

刑事:「独身と嘘をついた」だけでは、犯罪になりにくいのが実情です

独身と偽って交際する行為そのものを処罰する規定はありません。詐欺罪(刑法246条)は財産的な被害を前提としますので、嘘だけで金銭のやり取りがなければ、成立しないのが原則です。

では、2023年7月施行の不同意性交等罪(刑法177条)はどうでしょうか。同罪が挙げる8つの類型に「婚姻状況を偽ること」は含まれておらず、176条3項の「人違い」にも当たらないと解されています。つまり、独身偽装だけで性犯罪として立件するのは、現行法上かなり難しいのです。ここは立法論として議論が続いている領域でもあります。

2 「ロマンス詐欺」──恋愛感情につけ込んで、お金を奪う

警察庁の統計(令和7年確定値)によれば、SNS型ロマンス詐欺の認知件数は5,645件、被害額は546.4億円にのぼり、いずれも前年から大きく増加しました。SNS型投資詐欺と合わせると、認知件数15,168件・被害額1,834.3億円という規模です。既遂1件あたりの平均被害額は1,000万円を超え、被害者層は40代から60代が中心です。

手口には、はっきりした型があります。

マッチングアプリで知り合い、すぐにLINEなど外部のアプリへ誘導される。数週間から数か月かけて丁寧に親密な関係を築く。そのうえで、

  • 「一緒に将来のために資産を増やそう」と投資サイトへ誘導する(最初は少額を出金させて信用させます)
  • 「送った荷物が税関で止まっている」「関税を立て替えて」と持ちかける
  • 海外赴任中の軍人・医師・エンジニアを名乗り、帰国費用や医療費を求める

といった形でお金を要求してきます。

近年とくに増えているのが暗号資産での送金です。令和7年の暗号資産送信型は2,177件・247.7億円と前年の約2.9倍に急増し、実質的に暗号資産で交付された被害が被害総額の約半分を占めるまでになりました。

刑事:詐欺罪(刑法246条1項)が成立し得ます

嘘によって人を錯誤に陥らせ、財産を交付させているのですから、典型的な詐欺罪です。法定刑は10年以下の拘禁刑。
ご自身がネットバンキングで振り込んだ場合でも、「だまされて交付した」以上、246条1項の詐欺罪が成立します。組織的に行われていれば、組織的犯罪処罰法3条1項13号により、1年以上20年以下の拘禁刑まで加重されます。

ただ、犯行グループの拠点が海外にあることも多く、検挙に至らないケースが少なくありません。「刑事告訴すれば必ず捕まってお金が返る」という前提は、残念ながら成り立ちにくいのが現実です。それでも、被害届・告訴の提出は口座凍結や捜査の端緒として重要な意味を持ちますので、諦める必要はまったくありません。

民事・回収:とにかくスピードが命です

法律構成としては、不法行為に基づく損害賠償(民法709条)や不当利得返還請求(民法703条・704条)が考えられます。ただし相手が特定できない、あるいは振込先が売買された他人名義口座で名義人に資力がない、という壁に突き当たることが多い分野です。

そこで実務上、まず動かすべきは次の手続です。

① 振り込め詐欺救済法による口座凍結と被害回復分配金

 正式名称は「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律」(平成19年法律第133号)。
金融庁も、SNS型投資詐欺・ロマンス詐欺のうち預金口座への振込みが利用されたものは救済の対象になるとしています。警察に被害を申告したうえで振込先の金融機関に連絡すると、口座が凍結され、残っている残高から被害額に応じた分配金の支払いを受けられる可能性があります。

ポイントは、口座に資金が残っている間しか使えないことです。詐欺グループは着金後すぐに引き出しますので、気づいてから数時間の差が結果を分けます。「もしかして」と思った時点で、できるだけ早期に動くことが必要です。

② 相手方の特定

弁護士会照会(弁護士法23条の2)や、判決を得たうえでの預貯金債権に関する情報取得手続(民事執行法207条)により、口座名義人や資産を調べられる場合があります。

③ 暗号資産の場合

 国内の暗号資産交換業者を経由していれば、取引履歴の照会や凍結要請の余地があります。一方、海外の交換業者や個人ウォレットへ直接送金してしまった場合、追跡・回収は極めて困難といわざるを得ません。

あわせて気をつけていただきたい「二次被害」

「必ず取り返します」「着手金だけで全額回収」といった調査会社や海外業者にご注意ください。
弁護士でない者が報酬を得て示談交渉や債権回収を行うことは、非弁行為として禁止されています(弁護士法72条)。被害回復をうたう詐欺で、二重に被害に遭われた方のご相談も実際に受けています。

また、意外に思われるかもしれませんが、知らないうちに加害者側に巻き込まれているケースもあります。「あなたの口座に送金するから転送して」と頼まれて応じると、詐欺の幇助やマネー・ローンダリング、口座譲渡(犯罪による収益の移転防止法違反)として、ご自身が捜査対象になりかねません。心当たりのある方こそ、早めにご相談いただきたいと思います。

3 迷われたら、どうか早めにご相談を

最後に、実務上とくに重要なポイントです。

  • 証拠の保全:メッセージ、プロフィール画面、写真、振込明細は、削除される前にスクリーンショットや画面を保存、印刷して残してください。
  • お金が動いたら、その日のうちに:金融機関への連絡と警察への相談は、早ければ早いほど効果的です。

こうしたご相談は、「こんなことで相談していいのかな」「だまされた自分が悪いのでは」とためらわれる方がとても多い分野です。けれど、悪いのは嘘をついた側です。法的に主張できることがあるのか、逆に請求されるリスクがあるのかは、早い段階で見通しを立てておくほど選択肢が広がります。どうかおひとりで抱え込まず、お気軽にご相談ください。守秘義務のもと、丁寧にお話をうかがいます。

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AIで児童のわいせつ画像を作ると児童ポルノ?生成・加工と法的責任を解説

2026-09-07

AI

X社の提供するサービスのGrokなどAIによる画像編集がより容易になってきました。一方で、実在する人物の画像を編集してわいせつな画像を作成し拡散するといった問題も起きています。特に児童が被写体の場合、被害はより深刻です。

AIによる画像編集

AIによる画像編集は、ディープフェイクとして問題となっていました。
ディープフェイクとは、深層学習(ディープラーニング)を利用して、複数の画像の一部を結合させ、新たな画像を生成する生成AI技術です。

ディープフェイクにより、実在する個人、特にその名前や容姿が重要な価値を有するとみなされている芸能人などに似せることも可能となり、ポルノなどわいせつ画像に、顔だけ有名人の顔に換える画像が問題となっていました。

児童ポルノ

18歳未満の児童のわいせつな画像を作成した場合、児童ポルノの製造に当たります(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(児童ポルノ法)第7条第3項。3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金)。不特定多数に提供又は公然と陳列すれば、わいせつ電磁的記録頒布より重く処罰されます(同法第7条第6項。5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又はこれを併科)。

日本の児童ポルノ法では、「児童」(同法第2条第1項)は実在する18歳未満の者です。
児童ポルノ(同法第2条第3項)は児童の姿態を「描写」したものです。これは写真等により実在する児童をそのままインプットし、そのままアウトプットしたものです。漫画やイラストなどは実在しないキャラクターですし、モデルが実在しているとしてもそのままアウトプットしたとはいえないので、「児童ポルノ」の対象外です。

しかし、今や生成AIにより実在する人物に近い表現や、まさに実在する人物の一部を利用した表現が表れており、これが「児童ポルノ」に該当するかどうかが問題になります。

AIではなくCGで作成した事案ですが、撮影当時18歳未満だった女性の過去のヌード写真をCGで再現したことが児童ポルノ製造にあたると疑われた事件がありました。
最高裁判所は、「同条3項にいう「児童ポルノ」とは,写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって,同項各号のいずれかに掲げる実在する児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいい,実在しない児童の姿態を描写したものは含まないものと解すべきである。」と判示し、当該事件のCGは児童の姿態を描写したものと判断しました(令和2年1月27日最高裁判所第一小法廷決定)。
これはCGを用いているとはいえ、実在した18歳未満の児童の姿態の画像を作成して、実際に見ても18歳未満の児童と認識できるため児童の姿態を描写したと判断したものです。写真かCGかという違いはあれども、実在する児童をインプットしてアウトプットしたという点では同じだと考えられます。

一方で、生成AIによる画像作成の場合、プロンプトに従って、それまでの学習成果を基に出力しているのであり、実在する児童をそのままインプット・アウトプットしたわけではありませんから、「児童」を「描写」したとは言えません。実在する人物の写真等を画像編集したとしても、改変した箇所は実在する人物のインプット・アウトプットをした「描写」とはいえず、日本では「児童ポルノ」に該当しない可能性があります。

もちろん日本以外の国では、実在する児童の描写以外のわいせつな画像も規制する国があり、当該国内(航空機内も含みます)でそうした画像を閲覧したりすれば、その国の法律により処罰される可能性があります。
2025年にも、日本サッカー協会の責任者がフランスの飛行機内で児童ポルノを閲覧したとして逮捕され有罪判決を受けました。

その他に成立する犯罪や損害賠償

名誉毀損

児童ポルノを作成して流出させると、実在する本人がそのように撮影されたのだと人々に受け取られます。これは、本人の社会的評価を低下させるおそれがあります。
このような行為は、名誉毀損(刑法第230条第1項。3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)となる可能性があります。

民事責任

以上のような画像編集は、上記のように名誉棄損に当たる可能性があります。また、本人の顔や姿を勝手に使用していることで、肖像権を侵害しています。
これらにより民事の損害賠償責任を負う可能性があります。

まとめ

このように、AIにより児童の画像を編集すると、様々な責任を追及される可能性があります。

AIによる画像編集や児童ポルノについてお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

こちらの記事もご覧ください▼

生成AIで作成した児童ポルノは違法?児童ポルノ法・ディープフェイク規制の最新動向を解説

生成AIと著作権の問題~著作権侵害や生成物の権利を解説~

2026-08-31

AI

コンテンツビジネスが拡大する中で、ユーザーへの訴求のために、なじみ深いテーマを用いることがよくみられます。
しかし、これは、一歩間違えれば、他人の著作権等の知的財産権を侵害することになりかねません。特に近年では、AI技術の発達は目覚ましいものがあり、これにより、より効率的で迅速なコンテンツの利用が見込まれますが、AI技術の安易な利用が、他者の権利を侵害することもあります。

ここでは、ネット上での知的財産権上の問題について解説します。

著作権侵害

他人の著作物を勝手に利用した場合、著作権の侵害となります。他人の著作物そのものを使わなくても、そのものと誤解しかねないような画像等を使うことも著作権の侵害となります。
著作権の侵害となるかどうかは、「類似性」「依拠性」により判断されます。

「類似性」とは、「表現上の本質的な特徴を直接感得できる」かどうかにより判断されます。作風や画風が同じという程度では類似性があるとはいえません。
「依拠性」とは、類似性のある物を自己の作品中に用いているといえるものであることが必要です。

権利制限規定

著作権者の許諾が不要な権利制限規定に該当する場合、著作権の侵害となりません。
権利制限規定とは、一定の公共の目的があり、利用を認めても著作権者への影響が大きくないため、著作権者が著作権を主張できないこととした規定です。

教科用図書等への記載(著作権法第33条)や立法又は行政の目的のための内部資料としての複製等(同法第42条)等があります。
生成AIの学習も権利制限規定に該当する行為で、著作権者の許諾なく行うことができます(同法第30条の4。著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)。

権利制限規定に該当しない場合、著作者の許諾がなければ、著作権侵害となります。

著作権侵害以外の問題

利用そのものが著作権の侵害ではなくても、著作者人格権(公表権(第18条)、氏名表示権(第19条第1項)、同一性保持権(第20条第1項))を害することはできません。
特に、生成AIの場合、同一性保持権が問題になると考えられます。

また、「似たようなキャラクターを使っている」と消費者に受取られてしまうと、企業のモラルなどに疑いを抱かれ、企業価値の毀損に繋がりかねません。

生成AIの問題

生成AIとは

生成AIとは、データから学習したパターンや関係性を活用し、文章、画像、音声などを生成するAIです。

従来のAIは学習した中からあらかじめ決められた範囲内の行為を自動化することが主な機能でしたが、生成AIは、深層学習(ディープラーニング)により学習したデータの特徴や関係性を基にして、新たなコンテンツを生成できることが重要な機能です。
今や、動画を含めた画像や、音声まで生成することができます。

生成AIでは著作権がない

生成AIを使って作成した物は、基本的に著作権は生じません。

著作権が生じる著作物とは、人の思想又は感情を創作的に表現したものです。
生成AIが自律的に作成したものは、このような人の思想又は感情を創作的に表現したものとはいえず、著作物に該当しないという考えが主流です。作成に当たっては、プロンプトという指示に従って作成されますが、生成物の方向性を指示するものにすぎず、思想又は感情を創作的に表現したとまではいえません。

もっとも、単に簡単な指示をしただけではなく、人の創作意図をもって、人が創作的寄与と認められる行為があれば、生成AIによる生成物も著作物となる可能性があります。
創作意図とは、思想又は感情を、ある結果物として表現しようとする意図を指します。創作的寄与があったといえるかどうかは、生成AIを使用する過程を総合的に評価して判断されます。単に指示をしたりパラメーターを設定するだけでなく、対話形式で繰り返し修正を行うなどしたのであれば、創作的寄与が認められる可能性があります。

また、全体に著作権が認められず、一部だけに認められる可能性もあります。生成AIで生成した作品に手動で手直しをした場合、その部分にだけ著作権が認められるという事態もあり得ます。

このように、生成AIで生成した物に著作権が認められることは容易ではありません。
逆に、生成AIで生成した物が既存のイラストやアニメーションに似た物を出すと、前述の著作権侵害の問題が生じます。

まとめ

このように、コンテンツを利用するにあたっては、知的財産権、特に著作権について様々な問題があります。

コンテンツの利用について不安がある方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

▼こちらの記事もご覧ください。

著作権法

子どもがSNSで動画を拡散したら?法的責任と保護者の対応

2026-08-24

SNS発信

現代の中高生にとってSNSで面白い動画を共有したり、友達の投稿にリアクションしたりするのは日常の光景です。しかし、その「指先一つの操作」が、取り返しのつかない事態を招いてしまうことがあります。

特に自分が撮影したものではない場合、「流れてきた動画をリポスト(シェア)しただけ」「悪いことをしている奴を晒しただけ」「だから、自分は関係ない」と安易に考えてしまいがちです。しかし、これは法的な責任を免れる理由にはなりません。

今回は、SNSでの動画の拡散、特にいじめ等の動画の場合に伴う法的リスクと、保護者の方が知っておくべき対応策について解説します。

1. 「拡散」だけで罪に問われる? 3つの主要な法的リスク

「自分は暴行などには加わっていないから」、「自分が撮影したわけではないから」というだけで、責任を負わなくて済むとは限りません。動画を拡散する行為は、主に以下の3つの責任を問われる可能性があります。

① 刑法上の責任(名誉毀損罪・侮辱罪)

動画をSNSに投稿・拡散する行為は、被害者の社会的評価を低下させるものとして、名誉毀損罪(刑法230条)や侮辱罪(刑法231条)に該当する可能性があります。

・名誉毀損罪: 具体的な事実を挙げて、他人の名誉を傷つけた場合に成立します。「〇〇さんがいじめられている」という内容の動画を広めることは、その事実の真偽に関わらず(事実であっても、逆に冗談であっても)処罰の対象となり得ます。

・侮辱罪: 事実を摘示しなくても、公然と他人を侮辱した場合に成立します。2022年の法改正により厳罰化され、「1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金」などが科されるようになりました。

事件別:暴力:脅迫名誉毀損

② 民法上の責任(損害賠償責任)

刑事罰とは別に、被害者側から慰謝料請求を受ける可能性があります。被害者が精神的苦痛を受けた場合、その損害を金銭で補償しなければなりません。拡散に加担した人数が多い場合でも、一人ひとりが全額の責任を負わされる可能性(共同不法行為)があります。

③ プライバシー権・肖像権の侵害

許可なく他人を撮影した動画をネット上に晒す行為は、プライバシー権や肖像権の侵害にあたります。一度ネットに流出した動画は完全に削除することは難しい場合があります。この場合も、金銭での賠償を求められる場合があります。

2. 子どもが「加害者」になったとき、親はどうなる?

お子さんが未成年の場合、親の法律上の責任はどうなるのでしょうか。

①少年法による手続

中高生であっても、犯罪行為を行えば、警察の捜査対象となり、家庭裁判所で少年審判が行われます。その結果、保護観察や少年院送致といった処分を受ける可能性があります。これは厳密には親の責任が問われる訳ではありませんが、手続の対応等が必要になります。

②親の監督者責任

被害者側は親に対して「監督義務者としての責任」を追及してくるのが一般的です。この場合、親が多額の慰謝料を支払う義務を負うケースもあります。

もし、お子さんのSNS利用に関して具体的なトラブルに巻き込まれてしまった場合は、ご遠慮なく当事務所にご相談ください。私たちは法的な側面から全力でサポートいたします。

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その「闇バイト」仲間、警察官かもしれません──いま広がる「仮装身分捜査」とは

2026-08-17

警察官

「短時間で高収入」「即日即金」「ホワイト案件」。SNSに並ぶこうした言葉は、いわゆる闇バイト、つまり犯罪の実行役の募集であることが少なくありません。

そして近年、その募集に対して捜査員自身が「応募者」として接触するという捜査手法が実際に行われています。警察が「雇われたふり作戦」と呼ぶ手法で、その際に架空の運転免許証などの書類(仮装身分表示文書等)を使うものを「仮装身分捜査」といいます。

警察庁は2025年(令和7年)1月に「仮装身分捜査実施要領」を策定し、全国の警察本部長に通達しました。対象となるのは、インターネット等を通じて実行者の募集が行われていると認められる強盗・詐欺・窃盗・電子計算機使用詐欺などです。他の方法では犯人を検挙し犯行を抑止することが困難と認められる場合に、相当と認められる限度で実施するものとされ、警視総監または道府県警察本部長の指揮の下、あらかじめ承認を受けた実施計画書に基づいて行われます。

すでに実績も公表されています。警察庁の資料によれば、令和7年中に13件の仮装身分捜査が実施され、強盗予備で1件2名、詐欺未遂で3件3名が検挙されたほか、これらを含む7件の被害の発生が抑止されました。

「まだ何もしていない」段階でも検挙されます

ここで注目していただきたいのは、検挙された罪名が強盗予備や詐欺未遂である点です。つまり、現実に誰かからお金を奪う前、被害が発生する前の段階で身柄を確保されているということです。

「応募しただけ」「指示に従って現場に向かっただけ」でも、犯罪の成立が問題になります。また、取調べや裁判では「犯罪だとは知らなかった」と説明しても、信用されるとは限りません。高額な報酬、匿名性の高いアプリへの誘導、身分証の提出といった事情から、「犯罪かもしれないと分かっていた(未必の故意があった)」と認定されることも少なくありません。

弁護人の目から見ると、争点は残されています

一方で、この捜査手法には法律家の間で議論もあります。
いわゆるおとり捜査について、最高裁は平成16年7月12日の決定で、「少なくとも、直接の被害者がいない薬物犯罪等の捜査において、通常の捜査方法のみでは摘発が困難な場合に、機会があれば犯罪を行う意思があると疑われる者を対象に行うことは、刑事訴訟法197条1項に基づく任意捜査として許容される」という枠組みを示しました。

裏を返せば、被害者が存在する強盗や詐欺についてはこの判示が正面から扱った場面ではありません。また、対象者にもともと犯行の意思があった(機会提供型)のか、捜査側の働きかけによって犯意が生じた(犯意誘発型)のかによって、評価は大きく変わり得ます。
さらに、仮装身分捜査は現在のところ法律ではなく警察庁の通達(実施要領)に基づく運用であり、国会でも質問主意書が提出されるなど、その法的な位置づけが議論されている段階です。

つまり、闇バイトに関わった経緯や捜査の経緯によっては手続の適法性を争うことも検討の余地があります。捜査記録を精査し、誰とどのようなやり取りがあったのかを丁寧に確認することが、弁護活動の出発点になります。

すでに関わってしまった方へ

身分証を送ってしまい、「家族に危害を加える」などと脅されて抜け出せない、という事例は決して珍しくありません。警察庁は、闇バイトから抜け出そうとする方やご家族を保護する方針を明確にしており、闇バイト応募者を保護した件数は2025年11月末時点で544件にのぼり、その8割超が10代から30代の若い世代でした。

脅されている状況でも、道は残されています。早い段階でご相談いただければ、警察への相談・自首の付添い、被害者の方への被害弁償や示談、身柄拘束を避けるための活動など、取り得る手段があります。

被害に遭われた方へ

特殊詐欺や強盗の被害に遭われた場合、実行役として現れた人物は、多くの場合「使い捨て」にされた末端です。それでも、被害回復のためには刑事手続への適切な関与(告訴、被害届、被害者参加、損害賠償命令の申立てなど)が重要になります。示談の申入れがあったときに、どう応じるべきか迷われる方も多くいらっしゃいます。

闇バイトに関与してしまい、被疑者となってしまった方、被害に遭われてしまった方、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に関するご相談を広く取り扱っております。
初回相談は無料ですので、お気軽にご連絡ください。

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「よかれと思って」でも罪になるかも──地震のデマと、その投稿・拡散の法的責任

2026-08-10

SNS発信

2026年7月28日、熊本県熊本地方を震源とする最大震度7の地震が発生し、気象庁はこの一連の地震活動を「令和8年熊本地震」と命名しました。

地震の発生後、SNSでは大量の偽情報が流れました。報道や専門機関の検証によって確認されているだけでも、次のようなものがあります。

・商業施設の爆発を映したように見える、生成AIで作られた偽動画
・過去の震災(2024年の能登半島地震など)の映像を、今回の映像として転用したもの
・「阿蘇山が噴火した」「寝台列車が脱線した」といった、事業者が否定した情報
・実在しない住所を書いた偽の救助要請と、QRコードやPayPayでの送金要求

偽情報に対して、総務省は28日に公式Xから科学的根拠のない真偽不明の情報が流通するおそれがあると注意喚起を行いました。29日にはGoogle・LINEヤフー・Meta・X・TikTokの主要5社に対して、利用規約等を踏まえた適切な対応を要請しています。
内閣官房長官も記者会見で、悪質な虚偽情報の流布は決して許されないと述べました。

とりわけ深刻なのが、偽の救助要請です。28日夜には「生き埋めになっています」という投稿が30万回以上閲覧されましたが、記載された住所は実際には存在しないものでした。文面や住所がほぼ同じで名前だけを変えた投稿が、複数のアカウントから発信されていたことも確認されています。

分析企業は、この手口を消防や警察の救助リソースを消耗させる影響の大きい行為だと指摘しています。助かるはずだった人のもとに、救助が届かなくなる。デマの怖さは、ここにあります。

法的責任は?

それでは、偽情報、デマの投稿や拡散は、法的にはどのような罪に問われるのでしょうか

① 偽計業務妨害罪(刑法233条)

嘘の情報を流して他人の業務を妨げた場合に成立し、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が定められています。

実際に2016年の熊本地震の直後、「地震のせいで動物園からライオンが放たれた」と画像付きで投稿した男性が、同年7月、偽計業務妨害の疑いで逮捕されました。熊本市動植物園に100件以上の問い合わせが殺到し、職員が本来の点検業務を行えなくなりました。男性は動機について「見た人を驚かせたかった」と説明していたと報じられています。
この件について、2017年3月に熊本地検は起訴猶予(不起訴)としましたが、逮捕され、報道され、長期間捜査対象となった事実はなかったことにはできません。「悪ふざけだった」ではすまない問題になります。

② 名誉毀損罪(刑法230条)

特定の個人や団体について「〇〇が火をつけた」などと事実無根の投稿をすれば、名誉毀損罪(刑法230条)にあたり得ます。
今回も、根拠のない加害者像を名指しする投稿が確認されています。

③ 詐欺罪(刑法246条)

被災者や支援者を装い、実際は被害に遭っていなかったり、支援をする意思がないのに、募金や送金を求めたりする行為は、詐欺罪(刑法246条)にあたり得ます。
国民生活センターや警察も、義援金詐欺や住宅修理をうたう便乗商法への注意を呼びかけています。

④ 民事上の損害賠償

刑事責任とは別に、民事上の損害賠償請求をされることもあります。企業や施設が風評被害を受けた場合、その額は決して小さくありません。

拡散した場合の責任

「拡散しただけ」でも責任は生じます。

大阪高裁令和2年6月23日判決は、コメントを一切付けない単純なリツイート(リポスト)であっても、元の投稿が他人の社会的評価を低下させる内容であり、リツイート(リポスト)した人が、元の投稿を自分のアカウントのフォロワーが閲読可能な状態にするということを認識していれば、原則としてその経緯・意図・目的を問わず不法行為責任を負い得ると判断しました。
「自分が書いたわけではない」「善意で広めただけ」という説明は、必ずしも免罪符にはなりません。

匿名でも同じです。発信者情報開示の手続によって、投稿者は特定され得ます。

迷ったら、拡散しない

専門家が共通して挙げる確認ポイントは、とてもシンプルです。

・投稿の日時を見る(地震の前の投稿が掘り起こされている例が確認されています) 
・公的機関の情報と照らす(気象庁、自治体、ライフライン事業者の公式発表)
・確信が持てないときは、拡散しない

最後に

被災された方を思う気持ちから、少しでも情報を届けたいと考えて拡散なさる方がほとんどだと思います。しかし、その優しさが、意図せず誰かの救助を遅らせてしまうかもしれないということは、ネットユーザーとしては心に留めておかなければならないでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、ネット上の投稿によって被害を受けられた方の削除・発信者情報開示・損害賠償のご相談、思わぬ形で捜査の対象となってしまった方のご相談の双方をお受けしています。
「これは大丈夫だろうか」と迷われた時点で、どうぞお早めにご相談ください。

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いじめ動画の再投稿・拡散は犯罪?名誉毀損罪や業務妨害罪などの法的リスク

2026-08-03
SNS

SNS

いじめの様子と思われる画像が拡散されることが問題となっています。画像が社会に知られることで学校や警察が迅速に対応し被害を防ぐ可能性がある一方、無関係な第三者からの過剰なバッシングや、関係する学校等の情報の拡散の恐れもあります。そもそもいじめの様子でなかった場合や、無関係の人がいじめの犯人として誹謗中傷されるおそれもあります。
ここでは、いじめ動画を第三者が再投稿・拡散した場合の問題について解説します。

自分が犯罪者となりかねない

名誉毀損

いじめの被害者であれ加害者であれ、その様子が社会に知られれば、名誉を害されることになります。
動画の再投稿や拡散は名誉棄損罪(刑法第230条第1項)に該当する可能性があります。

事実を摘示して行うのが名誉棄損罪、事実を摘示せず行うのが侮辱罪(刑法第231条)ですが、画像の場合、事実が目に映る形で示されていますので、事実の摘示として名誉毀損に当たるでしょう。
名誉棄損罪の場合、3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処されます。被害者に対するもの、加害者に対するもの、いずれも成立しえます。

自分で投稿するだけでなく、他人の投稿にリポスト(X)や「いいね」をつけることも社会にその投稿を再度知らしめることになるため、自分で投稿したものと同じように扱われます。

名誉棄損罪が成立する場合でも、「公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない」(刑法第230条の2。真実性の証明)と定められています。真実と証明できなかったとしても、客観的資料に照らして真実と信じることが相当であると認められるときは、名誉毀損の故意がないとされ、処罰されません。

しかし、ただ投稿された画像だけでは、いじめが本当にあったのか、いじめが本当にあったとしても誰が犯人か、首謀者は誰か、ただ傍観しているだけか、といった真実を証明することは困難です。
再投稿のやり方によっては、単に加害者や学校をバッシングするだけの目的だとみなされれば、「公共の利害に関する事実」や公益目的さえも否定されかねません。
真実と信じることが相当であるかについても、自分自身で調査したわけでもなく、ただネットに流れている画像を再投稿などしただけでは、これを真実と信じることが相当だとは到底いえないでしょう。

事件別:暴力:脅迫名誉毀損

業務妨害

担当者に対して、対応しないと学校情報をさらすなど脅してしまえば、別の犯罪となってしまいます。
学校情報をさらすなど脅せば、強要罪(刑法第223条第1項。3年以下の拘禁刑)に当たる可能性があります。
こうした学校へのクレームなどにより、学校の業務が妨害されれば、業務妨害罪(刑法第233条、第234条。3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)となってしまう可能性もあります。

強要罪で逮捕

事件別:暴力:公務執行妨害・業務妨害

民事責任

こうした動画拡散は、刑事責任だけでなく、不法行為に基づく損害賠償責任(民法第709条)を負うことになりかねません。

まとめ

以上のように、個人でいじめの様子と思われる画像を拡散することは、様々な問題があります。このような画像を見かけたら、まずは弁護士への相談をおすすめします。
いじめ画像のほかにも、インターネットで流れてくる情報への対応でお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

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