企業への誹謗中傷

※2025年6月1日より、改正刑法に基づき懲役刑および禁錮刑は「拘禁刑」に一本化されました。当ページでは法改正に基づき「拘禁刑」と表記していますが、旧制度や過去の事件に関連する場合は「懲役」「禁錮」の表現も含まれます。

インターネットを通じて、企業に対する誹謗中傷が行われることがあります。

SNS、ブログ、口コミサイト、掲示板などに、企業について事実と異なる情報を書き込まれ、その結果、企業の社会的評価や信用が低下したり、事業活動に支障が生じたりすることがあります。

例えば、「この会社は脱税している」「社長が違法薬物を使用している」「裏社会とつながっている」「刑事事件になるような不祥事を繰り返している」など、具体的な事実を示す書き込みによって、企業の社会的評価を低下させる場合には、名誉毀損罪などの成立が問題となることがあります。

一方で、企業の商品やサービスについて、個人の感想や意見として批判することが直ちに違法となるわけではありません。

企業に対する書き込みが違法となるかどうかは、書き込みの内容、表現方法、根拠となる事実の有無、投稿の目的などを踏まえて個別に判断する必要があります。

また、インターネット上の書き込みは短時間で広く拡散する可能性があるため、企業の信用や事業活動への影響が大きくなる前に、早期に対応することが重要です。

名誉毀損罪

刑法230条1項では、公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者について、3年以下の拘禁刑若しくは50万円以下の罰金に処すると定めています。

ここでいう「名誉」とは、一般に、人の社会的評価を意味します。

例えば、企業について「脱税をしている」「違法薬物を使用している」「犯罪行為を繰り返している」などの具体的な事実を不特定又は多数の人が認識できる状態で示し、企業の社会的評価を低下させるような場合には、名誉毀損罪の成立が問題となります。

ただし、企業に対する批判的な書き込みが、すべて名誉毀損罪に該当するわけではありません。

例えば、単なる意見や論評として行われた表現については、事実の摘示に当たらず、名誉毀損罪が成立しない場合があります。

また、刑法230条の2では、公共の利害に関する事実について、公益を図る目的があり、摘示した事実が真実であることの証明があった場合には、罰しないことが定められています。

さらに、摘示した事実が真実であることの証明がない場合でも、行為者がその事実を真実であると誤信し、その誤信について確実な資料・根拠に照らして相当の理由があると認められるときには、故意が否定され、名誉毀損罪が成立しない場合があります。

民事上も、違法な誹謗中傷によって企業の権利や法律上保護される利益が侵害された場合には、不法行為に基づく損害賠償請求などが問題となります。

企業がインターネット上の誹謗中傷について警察に相談・告訴する場合には、問題となる書き込みを保存するとともに、どのような内容が書き込まれ、企業の社会的評価がどのように低下したのかなどを具体的に整理することが重要です。

信用毀損罪・業務妨害罪

インターネット上で虚偽の情報を流したり、偽計を用いたりすることによって、企業の信用を低下させたり、業務を妨害したりした場合には、信用毀損罪・業務妨害罪の成立が問題となることがあります。

刑法233条では、虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者について、3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処すると定めています。

「信用」とは、単なる主観的な評価ではなく、経済的な側面における社会的評価を意味するとされています。

例えば、「この飲食店は賞味期限切れの食材を使用している」「この店では腐った食材を提供している」「この会社の商品は偽ブランド品である」「この会社は経営が破綻寸前である」など、虚偽の情報を流して企業の経済的な信用を低下させた場合には、信用毀損罪の成立が問題となります。

また、虚偽の情報を流したり、偽計を用いたりして、企業の業務を妨害した場合には、偽計業務妨害罪が成立する可能性があります。

さらに、威力を用いて業務を妨害した場合には、刑法234条の威力業務妨害罪が成立する可能性があります。

例えば、店舗に対して危害を加える旨の書き込みを行い、その結果として店舗の営業を中止させるなど、具体的な事情によっては威力業務妨害罪などが問題となることがあります。

ただし、単に虚偽の情報を書き込んだというだけで、必ず信用毀損罪や業務妨害罪が成立するわけではありません。書き込みの内容、方法、業務への影響などを踏まえて、犯罪の成立要件を満たすかどうかを判断する必要があります。

削除請求・損害賠償請求

インターネット上に企業に対する違法な誹謗中傷が投稿された場合には、投稿が掲載されているサイトやSNSの運営者などに対して、投稿の削除を求めることが考えられます。

もっとも、削除を求めれば必ず対応してもらえるとは限りません。その場合には、裁判上の手続を利用して削除を求めることが検討されます。

また、投稿者が誰なのか分からない場合には、発信者情報開示請求などの手続によって、投稿者の特定を目指すことができます。

投稿者が特定された場合には、書き込みによって生じた損害について、民事上の損害賠償を請求することが考えられます。

さらに、書き込みが犯罪に該当する場合には、警察への相談や刑事告訴を検討することもできます。

インターネット上の誹謗中傷は、短時間で広範囲に拡散する可能性があるため、企業の信用や事業活動に大きな影響を及ぼすことがあります。

そのため、問題となる投稿を発見した場合には、投稿のURL、投稿日時、投稿者のアカウント情報、投稿内容などを保存した上で、できるだけ早期に対応することが重要です。

投稿者の特定や削除請求、損害賠償請求、刑事告訴などには、それぞれ異なる要件や手続があります。具体的な状況に応じて、弁護士に相談し、適切な対応を検討することが重要です。

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