※2025年6月1日より、改正刑法に基づき懲役刑および禁錮刑は「拘禁刑」に一本化されました。当ページでは法改正に基づき「拘禁刑」と表記していますが、旧制度や過去の事件に関連する場合は「懲役」「禁錮」の表現も含まれます。
麻薬を取り締まる法律
「麻薬」という言葉は、日常用語としては広く使われますが、法律上は必ずしも同じ意味ではありません。日本では、薬物の種類や成分、行為の内容に応じて、複数の法律によって規制されています。
主な法律としては、**麻薬及び向精神薬取締法、覚醒剤取締法、あへん法、麻薬特例法、医薬品医療機器等法(薬機法)**などがあります。
また、大麻については法改正により規制体系が大きく変更されています。2024年12月12日以降、大麻等の不正な施用についても、麻薬及び向精神薬取締法上の「麻薬」として規制されるようになり、所持、譲渡、譲受、輸入等についても同法による規制が適用されています。従来の「大麻取締法」は「大麻草の栽培の規制に関する法律」に改称され、大麻草の栽培について規制しています。(mhlw.go.jp)
麻薬特例法は、薬物犯罪に関係する犯罪収益の没収・追徴や、薬物犯罪に関する捜査手法などを定める法律であり、特定の薬物そのものを指定して規制する法律ではありません。
危険ドラッグについては、薬機法によって「指定薬物」が指定され、医療等の正当な用途を除き、その製造、輸入、販売、授与、所持、使用などが規制されています。(mhlw.go.jp)
法律の規制対象薬物
麻薬及び向精神薬取締法
麻薬及び向精神薬取締法では、政令によって指定された麻薬を規制しています。代表的なものとして、コカイン、LSD、MDMA、ヘロイン(ジアセチルモルヒネ)などがあります。
また、2024年12月12日以降は、大麻等の不正な所持、譲渡、譲受、輸入、施用などについても、同法上の麻薬として規制されています。ただし、大麻草由来製品については、Δ9-THCの残留限度値が定められており、その限度値以下の製品は麻薬規制の対象外となる場合があります。(mhlw.go.jp)
なお、コデインなどの向精神薬については、麻薬とは別の規制区分であり、麻薬と同じように扱わないことが重要です。
覚醒剤取締法
覚醒剤取締法では、フェニルアミノプロパン、フェニルメチルアミノプロパン及びこれらの塩類などを「覚醒剤」として規制しています。
覚醒剤については、輸入、輸出、製造、所持、譲渡、譲受、使用などが規制対象となります。
あへん法
あへん法では、けしの栽培や、あへん・けしがらなどについて規制しています。
また、けしの中には、あへん法上栽培等が禁止されているものがあります。代表的なものとして、アツミゲシやハカマオニゲシなどがあります。
大麻草の栽培の規制に関する法律
大麻については、現在、「大麻草の栽培の規制に関する法律」によって大麻草の栽培が規制されています。
大麻草を栽培する場合には、目的に応じて第一種大麻草採取栽培者、第二種大麻草採取栽培者、大麻草研究栽培者などの免許が必要です。(mhlw.go.jp)
薬機法
薬機法では、厚生労働大臣が指定する「指定薬物」について、医療等の正当な用途を除き、製造、輸入、販売、授与、所持、使用などを規制しています。
指定薬物には、いわゆる危険ドラッグに使用されるさまざまな化学物質が含まれます。指定薬物は随時追加されているため、具体的な物質については、その時点の指定状況を確認する必要があります。(mhlw.go.jp)
刑罰の対象となる行為
薬物に関する法律では、薬物の種類によって異なりますが、主に**輸入、輸出、製造、栽培、所持、譲渡、譲受、施用(使用)**などが規制されています。
また、営利目的で行った場合には、単純な所持や使用などと比較して重い刑罰が定められていることがあります。
例えば、覚醒剤をみだりに所持、譲渡、譲受した場合は10年以下の拘禁刑であり、営利目的の場合は1年以上の有期拘禁刑に加え、情状により500万円以下の罰金を併科することができます。(laws.e-gov.go.jp)
麻薬についても、例えばジアセチルモルヒネ等以外の麻薬をみだりに所持、譲渡、譲受した場合は7年以下の拘禁刑で、営利目的の場合には1年以上10年以下の拘禁刑に加え、情状により300万円以下の罰金を併科することができます。(laws.e-gov.go.jp)
予想される刑罰
薬物犯罪では、行為や薬物の種類によって法定刑が大きく異なります。そのため、「麻薬犯罪には罰金刑がない」と一括りに説明することはできません。
もっとも、単純な所持や使用などについては、拘禁刑のみを法定刑とする規定もあります。一方、営利目的の輸入、製造、所持などについては、拘禁刑に加えて罰金を併科できる規定があります。
例えば、覚醒剤の営利目的の輸入・輸出・製造については、無期または3年以上の拘禁刑に加えて、情状により1,000万円以下の罰金を併科することができます。(laws.e-gov.go.jp)
また、大麻についても、現在は単純な所持・譲渡・譲受・施用について7年以下の拘禁刑が定められ、営利目的の場合にはより重い刑罰が予定されています。大麻草の栽培については、「大麻草の栽培の規制に関する法律」によって別途規制されています。(npa.go.jp)
薬物犯罪では、犯罪の内容、薬物の種類・量、営利目的の有無、入手経路、使用歴、前科・前歴などによって処分や量刑が異なります。そのため、薬物犯罪で起訴された場合に必ず実刑になるとも、必ず執行猶予が付くともいえません。
また、薬物犯罪では逮捕・勾留されるケースがありますが、逮捕が必ず行われるわけではなく、証拠隠滅や逃亡のおそれなど、刑事訴訟法上の要件に基づいて判断されます。
薬物犯罪では被害者との示談によって事件そのものを解決するということが難しい場合が多く、一般の財産犯や傷害事件とは異なる対応が必要です。ただし、だからといって不起訴の可能性がないわけではなく、犯罪の内容や証拠関係、初犯かどうか、使用状況、再犯防止のための治療・支援など、具体的な事情を踏まえて処分が判断されます。
なお、覚醒剤の営利目的の輸入・輸出・製造について無期拘禁刑が法定刑に含まれるため、裁判員裁判の対象となります。また、ジアセチルモルヒネ等についても、一定の重大な輸入・輸出・製造事件では無期拘禁刑が法定刑に含まれます。
一方、指定薬物については、通常の違反であれば3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、またはその併科、業として行った場合には5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、またはその併科とされています。(mhlw.go.jp)
インターネットでの麻薬取引について
近年は、SNSなどを利用して違法薬物の売買を持ち掛けるケースもあります。
例えば、一般の商品を装った言葉を使って大麻などの違法薬物を販売・購入するよう誘引するケースがあります。しかし、SNS上であっても、違法薬物の譲渡や譲受などが適法になるわけではありません。
違法薬物の購入を持ち掛けられた場合には、購入や譲受をしないことが重要です。また、薬物の売買に関する投稿や連絡をしたこと自体が、具体的な行為や目的によって刑事責任につながる場合もあるため、安易に応じることは避ける必要があります。
