インターネット上での名誉毀損に対する損害賠償請求

インターネット上で名誉毀損となる内容の投稿をされた場合、広範に拡散して大きな被害を受けるおそれがあります。このような場合、投稿をした者を特定して損害賠償を請求することが重要となります。

ここでは、5chに名誉毀損となる内容を書き込まれた場合に,書き込んだ人に対して損害賠償請求できるか解説します。

【事例】
事実を基にしたフィクションです。
AさんはB県C市においてAクリニックを開業している医者です。
ある日,5chの掲示板に「C市のAクリニックの院長が詐欺」というタイトルのスレッドが立ちあげられ,「この前,A院長が『最新の医療機器を導入する必要がある』と言って,C市に補助金を申請していたんです。しかし,今日『医療機器の件どうなりました?』と聞いたら,『買わない買わない,その話は補助金のための嘘だから』と言っていたんです。私としても,こういわれてしまい,どうしたらいいか分からず,ここに書いてみました。」と書き込まれている投稿を発見しました。
Aさんとしては,最新の補助金の申請をして,医療機器を買ったのは本当のことであるにもかかわらず,このような書き込みがされていたため,このような投稿をした人が誰なのかを明らかにして,損害賠償請求をしたいと考えました。
この場合に,発信者情報の開示を行い,書き込んだ人に対して損害賠償請求を出来るか検討していきます。

大きな流れ
このようなインターネットでの名誉毀損が行われた場合,書き込んだ人が誰だか分からないため,そのままでは書き込んだ人に対して損害賠償請求をすることができません。
そのため,まず,①発信者情報開示請求を行って,②名誉毀損を理由とする損害賠償請求を行うことになります。

発信者情報開示請求
まず,コンテンツプロバイダにIPアドレスの開示請求を民事保全請求の形で行い,次にアクセスプロバイダに対してIPアドレスの開示を裁判で行う手続で進んでいきます。
5chである場合,コンテンツプロバイダになるのは,Loki Technology,Incです。
そのため,まず,コンテンツプロバイダに対して,名誉毀損の対象となる投稿をURLやスクリーンショットから特定して,投稿の際に使われたIPアドレスと,ポート番号,送信された日時を開示するように求めます。
すると,コンテンツプロバイダからのIPアドレスの情報開示と,タイムスタンプについての連絡があります。
このように,コンテンツプロバイダからの情報開示があったことから,アクセスプロバイダに対して,発信者情報消去禁止仮処分を請求することになります。
発信者情報消去禁止仮処分が認められた場合,発信者が投稿した際に経由したアクセスプロバイダに対して,発信者情報開示請求の裁判を提起することになります。このアクセスプロバイダというのは,掲示板に投稿する際に使われた通信会社のことを指します。そのため,たとえば,NTTがアクセスプロバイダになります。
このように,裁判を行って,発信者情報の開示請求が認められた場合に,ようやく,名誉毀損の投稿を行った人物の名前と,住所を特定することができます。

損害賠償請求
このように,発信者情報を特定した場合,損害賠償請求に進んでいきます。
損害賠償請求の段階に入ったら,どのような書き込みがされたのか,これによってどんな損害を被ったのかということについて審理し,金銭による損害の回復を行う段階に入っていきます。

今回の事例の場合
今回の事例の場合,まず,Loki Technology,Incに発信者情報の開示を求め,次に,NTTなどに対して,発信者情報開示請求を行います。
そこで,ようやく発信者がXと特定され,その人に対して,Aさんが名誉毀損を理由とする損害賠償請求を行って行き,金銭による損害の回復を行うということになります。

注意点
注意点としては,ログの保存期間の関係から,アクセスプロバイダに対して開示請求を行ったとしても開示が認められない可能性もあることや,発信者がXさんと特定されても,書き込みをしたのはXさんの家でインターネットを使ったYさんが書き込んだと言われてしまい,損害賠償請求が認められないというケースもあります。

もし,インターネットのトラブルにあったため,書き込んだ人を何とかしたいということであれば,弁護士に依頼して,このような形で損害賠償請求を行っていくことになります。

インターネットのトラブルでお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

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