チート行為をしたら,刑事処分を受けるのか―チート行為で問題となる犯罪について解説

オンラインゲームでのいわゆるチート行為は、他のプレイヤーや監理者にも悪影響を及ぼしかねません。このような行為は犯罪となるのでしょうか。

【事例】
Aさんは,甲という多人数参加型のシューティングゲームを遊ぶ際に,相手プレイヤーのキャラクターの頭に自動で照準が合うチートツールを利用して,遊んでいました。
自動で頭に照準が合うことによって,他のプレイヤーのように自力で合わせること無く,ゲームの通常動作する動きと異なって相手プレイヤーを倒しやすくするため,ゲームを面白くなくするとして甲の運営会社は問題視していました。ゲーム会社は,Aさんを警察に通報しました。
そのため,Aさんは警察に呼ばれることになりました。

どのような犯罪が成立するのか
このような,ゲームでのチートツールの利用については,複数の犯罪を根拠として,捜査が行われます。
電子計算機使用詐欺罪:不正なデータを与えて,有料のコインを取得したり,有料のアイテムを取得したりすると成立する犯罪です。10年以下の懲役が予定されています(刑法第246条の2)。
電子計算機損壊等業務妨害罪:不正なデータを与えて,ゲームの運営会社などの業務を妨害したり,ゲーム会社のサーバーを使用不可能にした場合に,成立する犯罪です。5年以下の懲役又は,100万円以下の罰金が予定されています(刑法第234条の2)。
不正指令電磁的記録作成等罪:不正なデータを与えて,コンピュータに意図に反する動作をさせた場合に成立する犯罪です。3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が予定されています(刑法第168条の2)。
著作権法違反(翻案権侵害,同一性保持権侵害):著作物を変更するデータを与えることによって,著作物を改変したことを理由として成立する犯罪です。5年以下の懲役,若しくは500万円以下の罰金,又は,その併科が予定されています(著作権法第119条第2項第1号)。

今回のAさんのケースの場合どのような犯罪が成立するのか
今回のAさんのケースですと,有料コインを取得したりするものではないため,電子計算機使用詐欺罪は成立しません。
甲のサービスを止めるようなツールは使われておらず,甲を提供するゲーム会社の業務を妨害することはしていないため,電子計算機損壊等業務妨害罪は成立しません。
甲のキャラクターの見た目等の著作物と認められるものではなく,ゲーム内の照準の動きに対する改変しか加えられていないため,著作権法違反は認められません。
甲の運営会社のコンピュータやサービス提供に関して,意図に反する動作を与えていないため,不正指令電磁的記録作成等罪も成立しないと考えられます。
そのため,今回のAさんのケースですと,犯罪までは成立せず,刑事処分までは受けないと考えられます。

しかし,例えば,ゲーム内の有料アイテムを無料で取得するようなツールを作成したり,そのツールを利用して有料アイテムを無料で取得したりすると,電子計算機使用詐欺罪や,不正指令電磁的記録作成等罪が成立し,チート行為をしたことを理由として,処罰されることはあります。
また,このようなチート行為をした者が20歳未満だった場合,少年事件として,家庭裁判所の審判を経て保護観察処分を受けたり,厳重注意処分となることがあるようです。
そのため,どんなチートツールを作成したのか,利用したのかということが刑事処分を左右することになります。

刑事処分以外の処分はあるのか
Aさんのケースのようなチート行為をした場合には刑事処分にならない可能性が高いです。
しかし,刑事処分以外の処分を受けることは考えられます。
例えば,甲の運営会社によって,多人数型のシューティングゲームに参加できなくさせられる処分を受ける可能性が考えられます(アカウント凍結など)。
また,ゲームのプレイ人口を減らし,ゲームの運営に支障を与えたことを理由として,損害賠償請求を受けることが考えられます。
そのため,刑事処分を受けない可能性があるとしても,ゲーム運営会社による処分や,民事的な責任追及は行われます。
このような責任追及を受ける可能性があるため,チートツールの利用はやめた方が良いと言えるでしょう。

チート行為で心配な方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

こちらの記事もご覧ください

チケットの不正転売ーチケットの不正転売に関わった場合にどのような刑事罰を受けるかについて解説

keyboard_arrow_up

0359890996 問い合わせバナー LINE予約はこちら