海外企業のプラットフォームでも日本で裁判できる?発信者情報開示請求と国際裁判管轄を弁護士が解説

国際裁判管轄について

名誉棄損

発信者情報開示請求について,「誹謗中傷が書き込まれたプラットフォーマーが日本の会社じゃないから日本で裁判を起こせないのではないか」,「プラットフォーマーが海外の会社だとして,日本のどこに裁判管轄があるのかわからない」という意見をいただくことがありますので,発信者情報開示請求の際の国際裁判管轄について解説していきます。

(1)国際裁判管轄とは

国際裁判管轄とは,ある法的問題について,どの国の裁判所で裁判を起こせるかを振り分ける基準のことを指します。

国際裁判管轄についての規定は,民事訴訟法3条の2以下に規定があります。
そのため,例えばシンガポールにいる日本人に対して,日本の新聞社が名誉毀損となるような記事を書き,日本やシンガポールでその記事が見られた場合,被告の住所地が日本にあるため,民事訴訟法3条の2第1項に基づいて,日本の裁判所が国際裁判管轄を有することになります。
また,アメリカのニューヨーク州の新聞社が,日本にいる日本人に対して,名誉毀損となるような記事を書き,日本だけでなくニューヨーク州の人にも見られた場合,民事訴訟法3条の3第8号に基づいて,日本の裁判所にも国際裁判管轄があることになります。

この民事訴訟法上の国際裁判管轄だけではなく,プロバイダ責任制限法にも発信者情報開示請求に関する特別な国際裁判管轄に関する規定があります。この規定によって,海外に本社を有する会社に対しても国際的な裁判管轄があるかどうかが判断されます。

プロバイダ責任制限法9条1項2号には,発信者情報開示請求に関する国際裁判管轄についての規定があります。プロバイダ責任制限法9条1項2号イによれば,「相手方の主たる事務所又は営業所が日本国内にある」場合に日本に国際裁判管轄があると規定されています。そのため,日本にも法人がある会社については,日本に国際裁判管轄があることになります。

(2)日本にも会社法人が無い場合はどうなるのか

日本にも会社法人が無い場合の規定については,プロバイダ責任制限法9条1項3号に規定があり,「日本において事業を行う者を相手方とする場合において,申し立てが当該相手方の日本における業務に関するものである」場合には,日本に国際裁判管轄があることになります。

この規定が使われた例として,知財高裁令和6年10月4日決定があります。

この事例は,申立人が,台湾に所在する法人で,アクセスプロバイダである被申立人(「中華電信股份有限公司」)に対して,著作権侵害を理由として,発信者情報開示を求めた事件です。
この事件について裁判所は,「台湾に所在し,電気通信業を営む法人であるものの,日本国内において,主に台湾からの旅行者のために国際ローミングサービスを提供しており,日本の航空等では日本から台湾への旅行者向けにSIMカードを販売していることが認められる。」として,「日本において事業を行う者」と認めました。
また,コンテンツプロバイダである「『BOOTH』は日本語が使用される日本向けのサイトであって,相手方が台湾で提供するインターネット接続サービスが,当該サイトのサーバに接続され,その結果,本件各投稿がされたこと,本件各投稿のうちの一部の投稿には,『お初のオリジナルTL漫画です。よろしくお願いします』,『追加支援のお方ありがとうございます。今後もよろしくお願いします。』との流暢な日本語による記載があることが認められ,本件投稿は,日本人向けに提供されているSIMカードその他の相手方の日本人向けサービスを利用して行われた可能性が高いといえる。」として,「日本における業務に関連する」ことが認められました。
その結果,日本にも国際裁判管轄があることが認められ,東京地方裁判所で,発信者情報開示が認められました。

(3)まとめ

このように,日本の会社がアクセスプロバイダや,コンテンツプロバイダになっていないとしても,日本に国際裁判管轄が認められる場合がありますので,アクセスプロバイダやコンテンツプロバイダが日本の会社じゃないとしても弁護士に相談してみることをお勧めします。

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