
インターネットが発達し、銀行に行かずとも、インターネット上の操作で銀行の口座の管理や振込みなどもできるようになりました。一方で、電話やSNSで誘導されて送金したり、アカウントを乗っ取られて預金を下ろされたり送金されてしまう被害も増えてきました。
ここでは、不正送金被害について解説します。
不正アクセス禁止法違反
コンピューターウイルスソフトでネットバンキングのIDやパスワードを盗んでアクセスすることは、不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)の不正アクセス行為にあたります。
「不正アクセス」とは、次のいずれかに該当する行為と定められています(同法第2条第4項)。
①アクセス制御機能を有する特定電子計算機に電気通信回線を通じて当該アクセス制御機能に係る他人の識別符号を入力して当該特定電子計算機を作動させ、当該アクセス制御機能により制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為(当該アクセス制御機能を付加したアクセス管理者がするもの及び当該アクセス管理者又は当該識別符号に係る利用権者の承諾を得てするものを除く。)
②アクセス制御機能を有する特定電子計算機に電気通信回線を通じて当該アクセス制御機能による特定利用の制限を免れることができる情報(識別符号であるものを除く。)又は指令を入力して当該特定電子計算機を作動させ、その制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為(当該アクセス制御機能を付加したアクセス管理者がするもの及び当該アクセス管理者の承諾を得てするものを除く。次号において同じ。)
③電気通信回線を介して接続された他の特定電子計算機が有するアクセス制御機能によりその特定利用を制限されている特定電子計算機に電気通信回線を通じてその制限を免れることができる情報又は指令を入力して当該特定電子計算機を作動させ、その制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為
典型的なのがIDとパスワードを入力してアクセスできるところに、許可なく他人のIDとパスワードを入力してアクセスする場合です。
なお、パスワードは「識別符号」(同法第2条第2項)のうちの「当該アクセス管理者によってその内容をみだりに第三者に知らせてはならないものとされている符号」(同項第1号)に当たりますが、パスワードだけでは意味がないので、IDが「その他の符号」として、IDとパスワードで「次のいずれかに該当する符号とその他の符号を組み合わせたもの」として「識別符号」に当たります。
不正アクセス行為をすれば、3年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処されます(不正アクセス禁止法第3条、第11条)。
以下の行為も禁止されています。
不正アクセス行為の用に供する目的で他人の識別符号を取得すること(同法第4条)
業務その他正当な理由による場合でなく他人の識別符号をアクセス管理者や利用権者以外の者に提供すること(同法第5条)
不正アクセス行為の用に供する目的で不正取得された他人の識別符号を保管すること(同法第6条)
アクセス管理者になりすましたりアクセス管理者と誤認させて識別符号の入力を要求すること(同法第7条)
これらの違反行為をすれば、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処されます(同法第12条第1号~第4号)。
詐欺・窃盗
実際に不正送金をして財産的な被害を与えれば、窃盗罪(刑法第235条)や詐欺罪(刑法第246条)といった財産犯が成立します。
ATMからお金を下ろすように人が介在していない場合は、窃盗罪(刑法第235条。10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)となります。
銀行員に対して行えば詐欺罪(刑法第246条。10年以下の拘禁刑)となります。
他人に成りすましてIDやパスワードを入力して勝手に送金などすれば、電子計算機使用詐欺罪(刑法第246条の2。10年以下の拘禁刑)となります。
実際に被害を被るのは口座名義人ですが、法律上はいずれも被害者は銀行になります。
被害の回復
上記のとおり、不正送金をされても法律上は被害者は銀行となってしまいます。そこで、実際の被害者である口座名義人への補償が重要になってきます。
偽造カードや盗難されたカードによる被害であれば、偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律(預金者保護法)により補償が行われます。しかし、ネットバンキングでの不正送金被害の場合はこのような救済法はありません。そのため、銀行と利用者の契約(約款)に従って補償されます。
ネットバンキングの不正送金のような被害でも、各銀行は、基本的に全額補償をすると定めています。ただし、被害を受けてから一定期間の内に届出をする、銀行の調査に協力する、警察に相談する、などの要件を満たすことが必要です。また、利用者側に過失があると全部又は一部の支払いをしないと定められているところが多いです。IDやパスワードを入力してしまったような場合、過失があるとされやすいです。
これについては、利用者側で銀行に対し過失がないことを主張・立証することで、補償額を増やすよう求めることが考えられます。
また、不正送金に関わった者が検挙された場合、法律上の被害者は銀行ですが、実質的な被害者である口座名義人ですので、加害者との示談をして被害を回復することが考えられます。
いずれの方法でも、法律の専門家である弁護士の援助があればよりよい結果を目指せるでしょう。
まとめ
このように、不正送金被害を受けると、個人では被害の回復は困難となります。
不正送金被害でお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
