インターネット上の名誉毀損

名誉毀損とは何か

「名誉」とは、「人が社会から受ける客観的な評価」のことです。

そのため、名誉毀損とは、簡単に言えば、人の客観的評価を下げる事実を示すことを指します。 

名誉毀損と名誉感情侵害はどう違うのか

もう一度「名誉」の定義を振り返っておきますと、「人が社会から受ける客観的な評価」のことを指します。

そのため、「○○社長の悪行を暴く―年商〇億の酒と女にまみれた生活―」などと言う記事を書き、○○社長の社会的評価を下げる事実を示すことを指します。

心を傷つけるような、嫌なことを単に言うことを指しません。

しかし、名誉毀損とは異なり、名誉感情侵害というものがあります。

名誉感情というものは、自分自身の人格的価値について有する主観的な評価を指します。

この名誉感情侵害というものは、例えば、「○○さんは知的障害者だからこんな簡単なことも分からない、馬鹿野郎だ」と○○さんに対して言うことが典型例です。

こちらは、心に傷をつけるような、嫌なことを言うことが含まれます。

民事の名誉毀損と刑事の名誉毀損の違い

民事の名誉毀損とは、人が社会から受ける客観的評価を下げる事実を示した場合に成立します。

一方、刑事の名誉毀損罪は、刑法230条1項によれば、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した」場合に成立するとされます。

「公然と」とは、「不特定又は多数人が認識できる状況」を指すとされています。

「名誉」とは、「人が社会から受ける客観的な評価」のことを指すとされています。

「事実」とは、「それ自体として、人の社会的評価を低下させるような具体的事実」のことを指すとされています。

「摘示」というのは、事実を示すことを指すとされています。

そのため、認められる要件に大きな違いはありません。

名誉毀損を行ったことで負う責任

民事の名誉毀損が認められた場合、損害賠償が認められたり、書いた記事の削除を求められたりします。

民法709条により、不法行為責任として、損害賠償責任を負うことになります。損害賠償の額は、多くて数百万円、少なく認められる事例で数万円と言ったところです。

民法723条により、名誉毀損による原状回復義務を負うことになります。この原状回復義務の内容について、民法723条上は、「名誉を回復するのに適当な処分」としか書かれていませんが、問題となった記事の削除、誤った事実を公表したことに対する謝罪文章の公表、訂正広告の公表などを行うことになると考えられています。

それに対して、刑事の名誉毀損が認められた場合には、刑法230条1項によれば、「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」が裁判所から命ぜられます。

裁判で認められる量刑としては、前科前歴がないと罰金数十万円となるケースが多く、前科があるなどして、悪質なものだと執行猶予付きの懲役判決となるようです。

真実性の抗弁と相当性の抗弁

真実性の抗弁というのは、刑法230条の2第1項に規定されている抗弁です。

「公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公共を図ることにあったと認める」場合で、「真実であることの証明があった」場合に、名誉毀損罪の成立を否定する主張です。

相当性の抗弁とは、公共の利害に関する事実であること、目的に公共性が認められることは認められても、真実であることが証明できなかった場合に、それでもそう信じた相当な理由がある場合に犯罪を犯す意思が無いとして犯罪の成立を否定する主張です。

これらの抗弁というものは、刑法上に規定がありますが、裁判上、民事事件でも同様の理由で、損害賠償責任を免れるということになっています。

インターネットの情報を信じて名誉毀損を行った場合の責任はどうなるのか

インターネットには真実も嘘も書かれています。さらに、一般人はメディアと異なり、真実を見抜く能力も低いことから、相当性の抗弁の成立範囲を広げていいのではないかとの議論もかつてはありました。

しかし、最高裁平成22年3月15日決定刑集64巻2号1頁によれば、「インターネットの個人利用者による表現行為の場合においても、他の場合と同様に、行為者が摘示した事実を真実であると誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らして相当な理由があるときに限り、名誉毀損罪は成立しないものと解するのが相当であって、より緩やかな要件で同罪の成立を否定すべきものとは解されない」と判断されています。

そのため、インターネットの情報をもとに誰かの信用や社会的評価を下げる情報を書き込む場合も、メディアと同様に、きちんと信頼できる情報源に当たり発信する必要があるということができます。

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