著作権法違反について

著作権法違反になる要件

著作権侵害になるための要件を簡単にまとめると、著作権侵害になるためには、著作物について、①依拠性、②類似性が認められ、かつ著作権法21条以下の権利を侵害する行為を行ったと言えなければなりません。

また、著作権侵害に形式的に該当する行為であっても、著作権法30条以下の権利制限規定に該当する場合、著作権侵害ということではなくなります。

しかし、インターネットでは、しばしば、著作権侵害でない物に対して、著作権侵害であると書き込まれる例がしばしばみられます。

著作権侵害でないのに著作権侵害と言われた例

著作権侵害でないのに、著作権侵害であると世間的に言われたと考えられる例として、五輪エンブレムの事件があるため、紹介します。

この事件は、佐野研二郎の作った東京オリンピックのロゴが、ベルギーの劇場のロゴにそっくりであるとして話題になった事件です。

https://www.bbc.com/japanese/34125008

https://www.bbc.com/japanese/34125008

問題となったオリンピックのロゴと、ベルギーの劇場のロゴは、この記事で見れるのですが、問題になった作品は、「T」のような形に「L」のような形を合わせた形になっています。この部分が、ベルギーの劇場のロゴと雰囲気が似ているというのは見てわかるのですが、それ以外の部分が違います。

そのため、法的には、オリンピックのロゴはベルギー劇場のロゴの本質的特徴を直接感得できない、つまり、類似性がないとして著作権侵害が否定されるべき事案ではないかと考えられています。

しかし、ネットで、「パクリ疑惑」として話題になり、佐野氏のロゴが撤回されるに至るという結末になりました。

著作権侵害でないのに著作権侵害であると言われた場合にどのような対応ができるのか

著作権侵害ではないのに、著作権侵害であるとインターネットで言われた場合、もちろん、著作権侵害と疑われた作品を撤回し、騒ぎを収めるという方法や、著作権侵害ではないと広告する方法により、世間に訴える方法もあります。

しかし、インターネットで騒ぎになったというだけで、信用を失わせることができることから、これらの方法では被害の回復が限定的になると一般的に考えられています。 

こうした被害に対抗する手段として、著作権侵害と不当に主張した者に対して裁判を提起して、損害賠償請求を行うことが考えられます。

著作権侵害でないのに、著作権侵害と不当にプラットフォーマーに主張され、作品を削除された場合、そのような主張を行った者に対して、損害賠償請求を行った事例というものがあります。

このような事例として問題となったのが、大阪地裁令和6年1月16日判決の事件です。

この事件は、将棋の実況中継を配信する被告が、将棋の棋譜の映像を利用して将棋の解説動画を配信する原告の動画について、グーグルに対して、著作権侵害を理由とする削除申請を行ったため、原告の動画が削除されてしまったという事件です。

この事件について、裁判所は、原告が利用した将棋の棋譜というものは公表された客観的事実であることから、著作物であるとはいえず、被告の削除申請は理由が無かったものと認めたうえで、このような理由のない削除申請は、不法行為を構成すると判断しました。その上で、118万円程を損害額として認めました。

著作権侵害であると主張する際に気を付けること

このように、著作権侵害でないにもかかわらず、著作権侵害であると訴え、作品の作者に被害を与えた場合、不法行為を理由として、損害賠償請求される可能性があります。

そのため、著作権侵害であると思った場合、以下の点に注意しておきましょう。

  1. 真似したと思われる部分は、著作物と言えるのかどうか
  2. 似ているのかどうか
  3. 正式に引用されているなどの著作権の制限に該当するかどうか確認すること

このうち、特によくあるのは①と②を確認しないまま著作権侵害だとインターネットに書き込まれる例です。

「月がまぶしい」などのありふれた表現が一致しているに過ぎない、「2011年3月11日に東日本大震災が起こった」などの客観的な事実についての表現が一致しているに過ぎないということであれば、①の問題として、著作権侵害にはなりません。

似てるかどうかは、「既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる」(最高裁平成13年6月28日判決)かによって判断されます。イラストの線の一部が一致しているに過ぎない、キャラクターの雰囲気が似ているに過ぎないということであれば、②の問題として、本質的特徴部分が似ていないため、著作権侵害になりません。

そのため、こういう「パクリ冤罪」でないかに気を付けて、インターネットで情報発信を行う方が良いと考えられます。

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