児ポ法違反(児ポ法7条1項)
児ポ法7条1項によれば,「自己の性的好奇心を満たす目的で,児童ポルノを所持した」場合,自己の性的好奇心を満たす目的で,児童ポルノに該当する「情報を記録した電磁的記録を保管した」場合について,児童ポルノの単純所持罪が成立すると規定されています。
児童ポルノの「所持」というのは,児童ポルノを手元に置いておくことを指すようです。そのため,写真を手元に持っている場合だけではなく,児童ポルノが保存されたHDDを手元に持っておくことも児童ポルノの所持罪として処罰されるようです。
児童ポルノのデータの「保管」については,リモートストレージで自分のパソコンからアクセスできる媒体に保存されている状態も含むようです。
児ポ法の所持罪の加重類型について
児ポ法の7条3項によれば、児童ポルノを特定かつ少数の誰かに渡す目的で所持している場合、児童ポルノの提供目的所持罪が成立します。
また、児ポ法の7条7項によれば、児童ポルノを不特定多数の誰かに渡す目的で所持している場合、児童ポルノの不特定多数人への提供目的所持罪が成立します。
このように類型が分けられており、7条1項の罪が1年以下の懲役又は100万円以下の罰金、7条3項の罪が3年以下の懲役又は300万円以下の罰金、7条7項の罪が5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金又はその併科とされています。
児ポ法の所持罪については、提供目的の有無によってこのように刑罰が重くなっており、一番重い刑罰は、不特定多数への提供目的の所持であることから、児童ポルノの販売サイトの運営者などは、この一番重い刑罰で処罰されることになります。
児童ポルノをダウンロードせずにパソコンで視聴する行為は犯罪か
児童ポルノをダウンロードせずにパソコンで視聴する行為については、データの保管を行わないため、犯罪ではないと考えられています。また、児童ポルノの視聴を取り締まる法律はないため、このような行為は犯罪ではありません。
インターネットでサイトを見た場合、キャッシュと言われるサイトのデータがパソコンやスマートフォンに保存されます。このキャッシュに児童ポルノのデータが含まれる場合、児童ポルノの所持罪で処罰されるのかという問題があります。
しかし、児童ポルノをインターネットなどで閲覧した際に残るキャッシュについては、「所持」であったり、「保存」であったりの要件に該当しないと考えられていますので、インターネットで性的なサイトを見て、その一部に児童ポルノに該当する映像や画像があったとして、そのキャッシュがパソコンやスマートフォンに保存されても、それは児童ポルノの単純所持には当たりません。
そのため、キャッシュが残っていたことを理由として児童ポルノの所持罪で取り締まられることはありません。
児童の年齢を知らなくても成立するのか
児ポ法の所持罪は、故意犯ですので、児童の年齢を知らない場合、犯罪は成立しません。
そのため、特にインターネットに上げられている年齢も分からない児童の画像をダウンロードした場合に、その画像の人物が、児童だったのかが争われます。
児童の年齢の推測方法としては、タナー法が使われます。しかし、タナー法で適切に児童の年齢を推測で来ているのかという疑問が呈されることもあります。
また、最近では、AIの画像生成により、実在するかのような実在しない児童の画像というものも出回っており、そのようなAIの生成した画像については、児童ポルノ法の規制対象ではないため、ダウンロードした画像が実在の児童なのかそうでないのかが争われることが予想されます。
予想される刑罰について
児童ポルノの所持罪についての法定刑について確認すると、
- 7条1項の単純所持罪については、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
- 7条3項の譲渡目的所持罪については、3年以下の懲役300万円以下の罰金
- 7条7項の公衆譲渡目的については、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金又は、その併科
です。
単純所持罪については、前科前歴がない人であれば、数十万円の罰金で終わる例が多いようです。
逮捕される可能性は十分にあります。
単純所持についても適切に対処しなければ、逮捕ということも考えられます。