電子マネー

※2025年6月1日より、改正刑法に基づき懲役刑および禁錮刑は「拘禁刑」に一本化されました。当ページでは法改正に基づき「拘禁刑」と表記していますが、旧制度や過去の事件に関連する場合は「懲役」「禁錮」の表現も含まれます。

電子マネーの詐取とはどのようなものか

電子マネーの詐取とは、例えば、犯人が被害者に対して「未払いの料金がある」「資産家から財産の贈与を受けるために手数料が必要」などとうそをつき、電子マネーを購入させ、その電子マネーの利用に必要なコードやIDを伝えさせることで、電子マネー相当額の財産上の利益を得る手口です。

具体的には、被害者が犯人の説明を信じてコンビニなどで電子マネーを購入し、カード等に記載されたコードを犯人に伝えたり、犯人が指定したサイトに入力したりします。犯人は、そのコード等を利用して電子マネーを使用し、被害者に購入させた電子マネー相当額の利益を得ます。

このような手口は、特殊詐欺の一類型として行われることがあります。

どのような犯罪に当たるのか

このような行為については、刑法246条2項の詐欺罪が成立する可能性があります。

刑法246条2項は、刑法246条1項の方法により「財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた」場合について、1項と同様に処罰すると定めています。現在の法定刑は、10年以下の拘禁刑です。

例えば、実際には存在しない未払い料金について「支払わなければならない」とうそをつき、被害者に電子マネーを購入させてコードを伝えさせた場合、犯人は虚偽の説明によって被害者をだまし、その結果として電子マネー相当額の財産上の利益を得ています。

そのため、具体的な事実関係によっては、刑法246条2項の詐欺罪が成立します。

なお、被害者がコンビニなどで電子マネーそのものを購入しているため、事案によっては刑法246条1項の「財物を交付させた」詐欺罪との関係が問題となることもあります。電子マネーの仕組みや被害者から犯人側への財産の移転方法などを踏まえて、どの構成が適切かを検討する必要があります。

また、詐欺が組織的に行われた場合には、事案によっては組織犯罪処罰法の適用が問題となります。しかし、電子マネーを利用した詐欺であることや、複数人が関与していることだけで、当然に同法違反が成立するわけではありません。

組織犯罪処罰法には、一定の組織的な詐欺について刑を加重する規定があるほか、犯罪収益の隠匿・収受や犯罪収益の没収・追徴について特則が定められています。

電子マネーを利用した詐欺事件として問題となった裁判例

電子マネーを利用した詐欺事件では、資産家から多額の財産を贈与されることができるとうそをつき、そのための手数料などの名目で電子マネーを購入させる手口が問題となった裁判例があります。

提示された広島地方裁判所令和2年3月4日判決(LEXDB25565387)の事案では、資産家やその仲介者になりすまし、実際には生前贈与をする意思がないにもかかわらず、多額の財産を贈与するなどとうそをついて被害者をだまし、電子マネー「ビットキャッシュ」を購入させ、そのIDを犯人側が利用するという手口が問題となりました。

このように、被害者に虚偽の説明をして電子マネーを購入させ、犯人側がそのコード等を利用して財産上の利益を得る行為については、刑法246条2項の詐欺罪が成立し得ます。

なお、裁判例について具体的な刑や没収額を記事に記載する場合には、判決原文を確認した上で記載するのが適切です。

どのような処罰が予定されているか

刑法246条2項の詐欺罪が成立した場合、10年以下の拘禁刑が予定されています。詐欺罪には罰金刑の規定はありません。

もっとも、実際にどのような刑が科されるかは、被害額、犯行の回数・期間、犯行における役割、組織性、被害弁償の有無、前科・前歴など、さまざまな事情を考慮して判断されます。

したがって、「電子マネーを利用した詐欺であれば必ず実刑になる」とはいえません。ただし、組織的・継続的に多数の被害者から多額の金銭をだまし取った事案などでは、重い処分となる可能性があります。

また、組織犯罪処罰法の要件を満たす場合には、同法による刑の加重が問題となるほか、犯罪収益について没収や追徴の対象となることがあります。

このような事件に巻き込まれないために

電子マネーを利用した詐欺の被害を防ぐためには、身に覚えのない未払い料金などを突然請求された場合に、相手の説明をそのまま信用しないことが重要です。

特に、「コンビニで電子マネーを購入して、そのコードを電話やメールで教えてほしい」といった要求を受けた場合には、詐欺を疑う必要があります。

実際に未払い料金があるかどうかを、相手から示された連絡先ではなく、契約している事業者の公式サイトや正規の窓口から確認することも有効です。不審に感じた場合には、警察や消費生活センターなどに相談することも考えられます。

また、電子マネーを販売する店舗では、電子マネーの購入を求められた顧客に対して声かけを行うなど、詐欺被害を防止するための取組が行われています。

電子マネーは便利な決済手段である一方、コードを相手に伝えることで、現金に近い形で財産的利益を移転させられてしまうことがあります。そのため、電子マネーの購入やコードの提供を求められた場合には、その要求が本当に正当なものなのかを慎重に確認することが大切です。

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