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インターネットと闇バイトー闇バイトをした場合に成立する犯罪について解説
闇バイトが大きな社会問題となっています。
闇バイトの多くはインターネット上での募集に応じて参加してしまうことが多いです。
ここでは、闇バイトに関わった場合の刑事責任について解説します。
【事例】
Aさんは,インターネットの求人サイトをみていたところ,「荷物を運ぶだけの簡単なお仕事,未経験者歓迎 日給2万円」と書かれた求人を発見したため,求人に応募したところ,Bという会社に履歴書と,運転免許証,預金通帳の写しを送るように言われ,これらの書類を送りました。
面接に通過し,最初の仕事の日ということで呼び出され,行ってみたところ,Cさんと,Dさんがおり,Cさんから仕事の内容の説明として,深夜に金属加工工場に侵入して,くず鉄を持ち出し,会社に運ぶよう言われ,金属加工工場に到着したところ,Dさんが金属加工工場のくず鉄を運び出しました。
そのため,Aさんも同様にくず鉄を運び出し,トラックに詰めていたところ,B社の宿直の人に見つかり,警察を呼ばれ,現行犯逮捕されてしまいました。
以上を前提として,
①どのような犯罪が成立するのか,②犯罪が成立するとして,どのくらいの刑罰が予定されているのか
について解説していきます。
成立する犯罪について
・建造物侵入罪
まず,金属加工工場に立ち入っていることから,建造物侵入罪が成立します。
人の看守する建物に立ち入ることが必要で,今回のAさんは,人が看守している金属加工工場内に侵入していることから,この犯罪が成立します。
・窃盗罪
窃盗罪の成立が考えられます。
窃盗罪が成立するためには,「他人の財物を窃取した」という事情が必要です。
今回の事例の場合,くず鉄をトラックに詰めており,いつでも運び出すことができるような状態にしているため,窃盗罪も成立します。
また,窃盗罪と,建造物侵入罪は目的と手段の関係にあるので、法律上牽連犯の関係にあり,刑事手続上,一罪として扱われ,窃盗罪の法定刑の範囲で刑罰を負います。
見込まれる刑罰
窃盗罪の法定刑は,10年以下の懲役又は,50万円以下の罰金が予定されています。そのため,今回の事例の場合についても,この範囲で刑罰を負います。
実際の量刑傾向からすると,前科前歴のない人が,建造物に侵入し,窃盗を行った場合,多くの場合,執行猶予付きの有罪判決になっています。ただし,同様の余罪があったり,被害金額が多額だったりすると,実刑になる可能性もあります。
今回の事案の場合,Aさんに余罪はありませんし,くず鉄の時価相当額は不明ですが,多額に上るとは考えられないことから,執行猶予付きの有罪判決となる可能性が高いです。
そのため,今回の事例の場合,弁護活動としては,執行猶予付きの有罪判決を目指すよう活動していく必要があります。
闇バイト事件について注意すること
このような闇バイト事件はかつては,特殊詐欺に関するものが多かったのですが,
窃盗や強盗に関する闇バイトが存在するというような報道もあります。
また,普通のバイトを装って募集されていることから,犯罪行為に加担する気が無くとも加担することがあります。
そのため,普通のアルバイトの求人であっても,応募の際に免許証などの身分証明書を要求してこないかということや,現場での説明がどうなっているかということについて注意しておく必要があります。
特に,強盗に関わるような闇バイトでは,強盗殺人を命じられるケースがあるということも聞きます。
強盗殺人の場合,無期懲役か死刑しか予定されていない関係から,強盗殺人に該当することになった場合,実刑となり,社会復帰が困難になりますので注意が必要です。
ご自身又はご家族が闇バイトに関わっていないか心配な方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
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詐欺の方法を記載したマニュアルを配布したら詐欺罪に問われるの?ーインターネット上での投稿において注意すること
インターネット上のトラブルーインターネットを利用するなかで遭遇するおそれのあるトラブルについて解説
インターネットを利用する際に生じ得るトラブル
IOT(Internet of Things インターネット・オブ・スィングス)技術の向上により、世界中の人とつながることができ、自由に自己を発信できるようになるなど、一昔前では考えもしなかったことができるようになりました。
一方で、こうした技術が悪用されたり、言動にブレーキがかからなくなって、以前では考えられなかった形で被害に遭うことも見られるようになりました。
インターネット上の被害
性被害
マッチングアプリで知り合った人から、不同意性交等や児童買春などの性被害を受けるおそれが高まっています。
また、同年代の児童や同性に成りすまして裸などの性的画像を送るように要求することが見られます。、これにより入手した性的な画像を拡散したり、脅迫して性的関係を強要するなどの、更なる被害に繋がるおそれがあります。
また、近年では顔写真などの公開されている画像を使って顔が同じ人のわいせつな格好の画像を作成するといった、ディープフェイク・ポルノの被害も生じています。
情報漏洩
コンピューターウイルスに感染させたり、退職者が情報を持ち出すなど様々な方法で、国・公共団体や企業の保有する個人情報の流出がしばしば生じています。このような情報を使われて詐欺が行われる等の被害が生じています。また、自宅や家族構成などが公開され、住居侵入、窃盗・強盗、性犯罪などの被害に繋がるおそれもあります。
名誉毀損・侮辱
インターネットの発達により、投稿サイトやSNSで、匿名で自由に発言できるようになりました。このため発言のハードルが下がり、真偽を問わず個人の情報が勝手に拡散されたり、人格攻撃などが頻繁に起こることが見受けられます。
インターネット上の犯罪への対応
犯罪に該当するようなトラブルは、警察へ被害届を出して捜査してもらうことが重要です。
公然とわいせつな画像などをさらせば公然わいせつ罪となります(刑法第174条)。
わいせつ行為や性交等をすれば、不同意わいせつ(刑法第176条)や不同意性交等(刑法第177条)の罪に問うことができます。
児童買春、児童ポルノの所持・製造は、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」により処罰されます(児童買春:同法第4条、児童ポルノ所持等:同法第7条)。
ネット上で投稿等により名誉毀損や侮辱をした場合、ネット上であっても名誉棄損罪(刑法第230条)や侮辱罪(刑法第231条)に問うことができます。
権限がないのに勝手にパスワードを使ってアクセスするような行為は不正アクセスとして処罰されます(不正アクセス行為の禁止等に関する法律第3条・第11条)。
不正アクセスや退職者が情報を持ち出すこと等により営業秘密を取得して使用するような行為は、不正競争に当たり、不正競争防止法により処罰されます。
発信者情報の開示
インターネット上で名誉毀損や侮辱に当たる投稿をされた場合、その投稿をした者(発信者)を突き止めることができます。「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(プロバイダ責任制限法)では、発信者情報開示の手続きが定められています。発信者情報を開示させることで発信者を特定し、刑事責任や民事責任の追及につなげることができます。
損害賠償請求などの民事責任
以上のようなネットトラブルで被害を被った場合、刑事処罰だけでなく加害者に損害賠償を求めることが重要です(民法第709条)。他にも、違法行為などをされるおそれがあれば差し止め請求をすることが考えられます。
まとめ
このようにネットトラブルは様々なものがありますが、それに対する対抗手段もあります。
ネットトラブルでお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
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ネットトラブルと裁判の証拠ーネットトラブルが起こった場合の証拠の取り方について解説
チート行為をしたら,刑事処分を受けるのか―チート行為で問題となる犯罪について解説
オンラインゲームでのいわゆるチート行為は、他のプレイヤーや監理者にも悪影響を及ぼしかねません。このような行為は犯罪となるのでしょうか。
【事例】
Aさんは,甲という多人数参加型のシューティングゲームを遊ぶ際に,相手プレイヤーのキャラクターの頭に自動で照準が合うチートツールを利用して,遊んでいました。
自動で頭に照準が合うことによって,他のプレイヤーのように自力で合わせること無く,ゲームの通常動作する動きと異なって相手プレイヤーを倒しやすくするため,ゲームを面白くなくするとして甲の運営会社は問題視していました。ゲーム会社は,Aさんを警察に通報しました。
そのため,Aさんは警察に呼ばれることになりました。
どのような犯罪が成立するのか
このような,ゲームでのチートツールの利用については,複数の犯罪を根拠として,捜査が行われます。
電子計算機使用詐欺罪:不正なデータを与えて,有料のコインを取得したり,有料のアイテムを取得したりすると成立する犯罪です。10年以下の懲役が予定されています(刑法第246条の2)。
電子計算機損壊等業務妨害罪:不正なデータを与えて,ゲームの運営会社などの業務を妨害したり,ゲーム会社のサーバーを使用不可能にした場合に,成立する犯罪です。5年以下の懲役又は,100万円以下の罰金が予定されています(刑法第234条の2)。
不正指令電磁的記録作成等罪:不正なデータを与えて,コンピュータに意図に反する動作をさせた場合に成立する犯罪です。3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が予定されています(刑法第168条の2)。
著作権法違反(翻案権侵害,同一性保持権侵害):著作物を変更するデータを与えることによって,著作物を改変したことを理由として成立する犯罪です。5年以下の懲役,若しくは500万円以下の罰金,又は,その併科が予定されています(著作権法第119条第2項第1号)。
今回のAさんのケースの場合どのような犯罪が成立するのか
今回のAさんのケースですと,有料コインを取得したりするものではないため,電子計算機使用詐欺罪は成立しません。
甲のサービスを止めるようなツールは使われておらず,甲を提供するゲーム会社の業務を妨害することはしていないため,電子計算機損壊等業務妨害罪は成立しません。
甲のキャラクターの見た目等の著作物と認められるものではなく,ゲーム内の照準の動きに対する改変しか加えられていないため,著作権法違反は認められません。
甲の運営会社のコンピュータやサービス提供に関して,意図に反する動作を与えていないため,不正指令電磁的記録作成等罪も成立しないと考えられます。
そのため,今回のAさんのケースですと,犯罪までは成立せず,刑事処分までは受けないと考えられます。
しかし,例えば,ゲーム内の有料アイテムを無料で取得するようなツールを作成したり,そのツールを利用して有料アイテムを無料で取得したりすると,電子計算機使用詐欺罪や,不正指令電磁的記録作成等罪が成立し,チート行為をしたことを理由として,処罰されることはあります。
また,このようなチート行為をした者が20歳未満だった場合,少年事件として,家庭裁判所の審判を経て保護観察処分を受けたり,厳重注意処分となることがあるようです。
そのため,どんなチートツールを作成したのか,利用したのかということが刑事処分を左右することになります。
刑事処分以外の処分はあるのか
Aさんのケースのようなチート行為をした場合には刑事処分にならない可能性が高いです。
しかし,刑事処分以外の処分を受けることは考えられます。
例えば,甲の運営会社によって,多人数型のシューティングゲームに参加できなくさせられる処分を受ける可能性が考えられます(アカウント凍結など)。
また,ゲームのプレイ人口を減らし,ゲームの運営に支障を与えたことを理由として,損害賠償請求を受けることが考えられます。
そのため,刑事処分を受けない可能性があるとしても,ゲーム運営会社による処分や,民事的な責任追及は行われます。
このような責任追及を受ける可能性があるため,チートツールの利用はやめた方が良いと言えるでしょう。
チート行為で心配な方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
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チケットの不正転売ーチケットの不正転売に関わった場合にどのような刑事罰を受けるかについて解説
詐欺の方法を記載したマニュアルを配布したら詐欺罪に問われるの?ーインターネット上での投稿において注意すること
「いただき女子」と称する女性が詐欺を実行する際のマニュアルを販売しており,その販売行為が問題となった事件がメディアで取り上げられました。
このような詐欺を実行する際のマニュアルの販売行為については,詐欺幇助として刑事責任を負うことになります。
ここでは,このような詐欺を実行する際のマニュアルの販売行為が詐欺になるのか解説します。
・詐欺罪について
刑法246条1項の詐欺罪が成立するためには,「人を欺いて財物を交付させた」と言えなければならないとされています。
まず,財物交付の基礎となる重要な事実についてうそを言ったということが言えなければなりません。
財物交付の基礎となる重要な事実というのは,例えば,会社を設立するつもりが無いのに,「会社を作るから,株主になってほしい」などの事実を言うことを指します。会社を作るか作らないかということは,株を購入する株主にとって株式の価値を増加させることができるかどうかという関心ごとに関わることですので,財物交付の基礎となる重要な事実ということができます。
また,同様に,結婚するつもりがないにもかかわらず,「結婚するから,日々のアパートの家賃を払ってほしい」というのも,相手の歓心を買い相手と結婚するかどうかが重要な事実となっていることから,この事実を偽っている場合は,欺いたということに該当することになります。
・詐欺幇助について
そのため,詐欺幇助となる場合というのは,こういった欺罔行為を助けた場合です。
このように助けたということが言えるためには,他人の犯罪を容易ならしめる行為を,それと認識,認容しつつ行い,実際に正犯行為が行われたということが言えなければなりません。
例えば,名古屋地方裁判所令和6年4月22日判決によりますと,「いただき女子」のマニュアルに記載されていた内容について,「男性を篭絡して自己に好意を抱かせた後に同男性に対して家賃の支払いを滞納しているなど自分が経済的苦境に陥っている旨の種々のうそを告げて同男性から現金をだまし取る方法などを記載した」と認定されており,このマニュアルを使って男の篭絡方法について助言をし,実際に詐欺を行った人の犯行を容易にしたため詐欺幇助を行ったということが認定されています。
そのため,このようにマニュアルを販売し,助言をすることについては少なくとも,詐欺罪の幇助犯になるようです。
一方,ただマニュアルを販売した点について詐欺罪に問えるかということが問題になりますが,これについては,マニュアルというものは,詐欺にしか利用できないものではないので,具体的にある人物が詐欺に利用するという認識がありつつ,このようなマニュアルを提供したということが言える事情がなければ詐欺罪の幇助として刑事責任を問うことは困難であると考えられます。
・このような事件の弁護活動
近年,「いただき女子りりちゃん」のマニュアルを真似てインターネットで販売する例があるということをニュース等で耳にします。
「いただき女子」に限らず,詐欺の事件というものは,金額が100万円を超えたら,実刑になることが考えられる類型の犯罪です。
そのため,数百万円の示談を行い不起訴や執行猶予をねらうか,実刑の中でも軽い刑罰を目指すかということが重要な関心ごとになります。
このようなマニュアルの販売行為というものについて,マニュアルを販売しただけではなく,助言までしていたということであれば詐欺の幇助として,罪責を負うことは間違いないのですが,単なる販売のみをとらえて詐欺罪の幇助に問うことは難しいです。
この場合の弁護士の弁護活動としては,助言を行っていないということ,具体的に詐欺行為が行われることを認識した上でマニュアルを提供したわけではないということ,示談を行い被害回復を行ったことを主張することになると考えられます。
他にも,マニュアルを販売し,だまし取った犯人に代わって示談を行い,被害回復に努めることが考えられます。詐欺罪というのは,財産犯ですので,財産的被害の回復が行われた場合,被害回復が済んでいるということになり不起訴であったり,有利な事情として考慮されることになります。
このように、インターネット上で犯罪の方法を公開するようなことをした場合、罪に問われる可能性があります。
インターネットでの情報の公開について不安な方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
チケットの不正転売ーチケットの不正転売に関わった場合にどのような刑事罰を受けるかについて解説
【事例】
Aさんは,イベントのチケットを大量に購入して販売するということを長年繰り返している人です。
ある日,Aさんは,ミュージシャンαのコンサートのチケットを正規の販売会社からインターネットで自宅から購入し,販売価格より高額でBさんに販売しました。
このαのコンサートのチケットは,転売してはならないとの特約が付いており,日時・場所,座席指定がされており,購入者についての連絡先やメールアドレスを購入の際に登録する必要があったものでした。
以上を前提として,
①どのような犯罪が成立するか,
②犯罪が成立するとして,どのくらいの刑罰が予定されているか
について解説していきます。
成立する犯罪について
・詐欺罪
まず,詐欺罪の成立が考えられます。
刑法246条2項の詐欺罪が成立するためには,人を欺いて「財産上の利益を得」たということが言えなければなりません。
不正転売について,詐欺罪になると考えられるのは,転売する意思を秘して,チケット販売者に転売してはならないチケットの購入の意思表示をしているためです。
この詐欺罪に該当すると判断された例として,神戸地方裁判所平成29年9月22日判決の例があります。
この事件では,ミュージシャンのライブコンサートの転売が禁止されている電子チケットを転売目的で注文し,チケット販売会社の社員に転売目的がないとの誤信させ,ライブコンサートの電子チケットの送信を受けたという事件です。
この事件について裁判所は,転売目的を秘することについて,「その性質上販売数が限定されているものであり,営利目的転売を企図した購入が横行すると,真にコンサートに参加したい一般客の機会が奪われ,又は一般客が適正価格を著しく超過した暴利価格を支払うことを余儀なくされ,最終的に音楽業界全体に大きな不利益が生じる」ため,財産上の利益の移転のための重要な事項に当たるため,転売目的を秘して注文した行為を人を欺く行為に該当すると判断しています。
そのため,チケットの転売目的があるのか,転売目的があるとして,転売目的があるかどうかを見分ける仕組みがあり,その仕組みを欺いたと言えるかどうかが問題となります。
・迷惑防止条例(ダフ屋規制)
次に,都道府県の迷惑防止条例違反が考えられます。
迷惑防止条例上,ダフ屋規制がされており,迷惑防止条例上のダフ屋行為に該当する場合,迷惑防止条例違反を理由に処罰されます。
例えば,東京都の「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」2条1項によれば,「何人も、乗車券、急行券、指定券、寝台券その他運送機関を利用し得る権利を証する物又は入場券、観覧券その他共の娯楽施設を利用し得る権利を証する物(以下「乗車券等」という。)を不特定の者に転売し、又は不特定の者に転売する目的を有する者に交付するため、乗車券等を、道路、公園、広場、駅、空港、ふ頭、興行場その他の公共の場所(乗車券等を公衆に発売する場所を含む。以下「公共の場所」という。)又は汽車、電車、乗合自動車、船舶、航空機その他の公共の乗物(以下「公共の乗物」という。)において、買い、又はうろつき、人につきまとい、人に呼び掛け、ビラその他の文書図画を配り、若しくは公衆の列に加わつて買おうとしてはならない。」と規定されています。
つまり,コンサートの観覧券をチケット販売店で転売目的で購入したことを理由に処罰されるというものです。
しかし,この規定の問題点としては,「公共の場所」で買わなければならないことから,自宅でインターネットでチケットを購入する行為を処罰することができません。そのため,インターネットを用いたチケットの高額転売に対して,対処できない規定になっています。
・チケット不正転売禁止法
チケットの転売そのものについては、「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」(チケット不正転売禁止法)による処罰ということも考えられます。
チケット不正転売禁止法上販売が規制される「特定興行入場券」というのは,チケット不正転売防止法2条3項によれば,以下のように定義されています。
「一 興行主等(興行主(興行の主催者をいう。以下この条及び第五条第二項において同じ。)又は興行主の同意を得て興行入場券の販売を業として行う者をいう。以下同じ。)が、当該興行入場券の売買契約の締結に際し、興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨を明示し、かつ、その旨を当該興行入場券の券面に表示し又は当該興行入場券に係る電気通信の受信をする者が使用する通信端末機器(入出力装置を含む。)の映像面に当該興行入場券に係る情報と併せて表示させたものであること。
二 興行が行われる特定の日時及び場所並びに入場資格者(興行主等が当該興行を行う場所に入場することができることとした者をいう。次号及び第五条第一項において同じ。)又は座席が指定されたものであること。
三 興行主等が、当該興行入場券の売買契約の締結に際し、次に掲げる区分に応じそれぞれ次に定める事項を確認する措置を講じ、かつ、その旨を第一号に規定する方法により表示し又は表示させたものであること。
イ 入場資格者が指定された興行入場券 入場資格者の氏名及び電話番号、電子メールアドレス(特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(平成十四年法律第二十六号)第二条第三号に規定する電子メールアドレスをいう。)その他の連絡先(ロにおいて単に「連絡先」という。)
ロ 座席が指定された興行入場券(イに掲げるものを除く。) 購入者の氏名及び連絡先」
簡単に言うと,①正規のチケット販売業者が販売する紙のチケットかQRコードであること,②入場資格者の氏名か,指定席で購入されるもの,③入場者の氏名,電話番号,メールアドレスを確認する措置が購入の際にとられているチケットである必要があります。
また,チケット不正転売禁止法上の「不正転売」というのは,チケット不正転売防止法2条4項によれば,「興行主の事前の同意を得ない特定興行入場券の業として行う有償譲渡であって、興行主等の当該特定興行入場券の販売価格を超える価格をその販売価格とするもの」を指します。
つまり,正規のリセール業者ではないにもかかわらず,チケットを販売価格よりも高く販売する行為を規制対象としています。
このように,チケット不正転売行為を定義した上で,チケット不正転売禁止法3条,9条により,不正転売を行った場合に処罰することを規定しています。
このチケット不正転売禁止法は3条で不正転売行為を禁止しているだけではなく,4条で不正転売されたチケットを購入する行為についても規制されています。
そのため,購入者についても,チケット不正転売禁止法により処罰されます。
見込まれる刑罰
詐欺罪の法定刑は,10年以下の懲役が予定されており
迷惑防止条例違反の場合,6月以下又は,50万円以下の罰金が予定されており,
チケット不正転売禁止法違反の場合,1年以下の懲役又は,100万円以下の罰金が予定されています。
実際の量刑傾向としては,前科前歴のない人が詐欺罪で有罪になるとしても,執行猶予付きの有罪判決になっている例が多いです。
迷惑防止条例違反については,罰金で略式起訴され有罪になる例が多いです。
チケット不正転売防止法での例としては,ほとんどが罰金刑で有罪になっているようです。
弁護活動
そのため,弁護活動としては,詐欺罪での起訴を避ける方向で検討することになります。
事例についての検討
事例について,Aさんは,少なくとも,正規の販売会社を通じてチケットを購入していること,指定席での観覧が予定されていること,本人確認の措置が購入の際にとられていること,正規の価格より高額でBさんに販売していることから,チケット不正転売防止法で刑事処分を受けることが想定されます。
詐欺罪による処分については,Aさんが,転売目的を秘していたか,チケット購入の際に不正転売を防止できるような仕組みになっていたかによって判断されます。
また,Bさんについては,正規のチケット代と異なる規制対象となるチケットを購入していることから,チケット不正転売防止法による刑事処分が想定されます。
まとめ
このように、チケットの転売により刑事処分を受ける可能性があります。
チケットの転売について不安な方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
トレント利用による犯罪と法的問題点について解説
Bit Torrentやμトレントというものは,P2P方式のファイル共有ソフトです。
このトレントを使った場合にどのような犯罪が成立するか解説します。
トレントとは何か?
トレントとは,クラウドコンピューティングなどのようにどこかのサーバーにデータを保存する仕組みではなく,それぞれのパソコンでデータを細分化して共有する仕組みによりデータのやり取りをスムーズに行うソフトです。このような仕組みになっていることから,トレントにデータをアップロードした場合はもちろん,ダウンロードした場合もダウンロードするのと同時にアップロードをするというデータのやり取りを行っていることになります。
トレントを利用するとなぜ犯罪になるのか
著作権法119条1項によれば,著作権を侵害した場合には,10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はその併科が予定されています。
この著作権侵害の中には,著作権法23条1項の公衆送信権侵害が含まれており,著作物を無断でインターネットにアップロードした場合に,この公衆送信権侵害になります。
トレントというのは,ダウンロードをすると同時に細分化したデータのアップロードを行い,共有者との間でデータのやり取りをすることになりますので,著作物を著作者に無断でアップロードしているということを理由として著作者の公衆送信権侵害を行っているということになります。
このように,著作権侵害があるため,著作権法119条1項の著作権侵害罪が成立することになります。
トレントを利用した場合に見込まれる刑罰はどのようになるか
トレントを利用した場合,ダウンロードしたデータについてダウンロードしただけではなく,同時にアップロードしていることになることから,少なくともダウンロードしたファイル分についての責任を負います。
そのため,警察にとって捜査する必要があると考えられた場合には,逮捕などがされる可能性があります。
トレントからの数点のダウンロードを理由として逮捕された場合に,裁判所で裁判が開かれ,実刑にしたり,執行猶予付きの有罪判決にしたりということは考えにくいのです。しかし,略式裁判を経て,罰金刑になる可能性はあります。
ただし,ダウンロードしたファイルの点数が多くなると,罰金ではすまず,裁判所での裁判が開かれるということになります。
また,アップロードした場合については,情状が悪くなる傾向があり,アップロードを行い,アップロードした点数も膨大に上るということになると,実刑判決を受ける可能性が出てきます。
トレントを利用したダウンロード行為について弁護士として何ができるか
まず,不起訴を目指すということであれば,ダウンロードしたファイルについて示談を行い不起訴にすることが考えられます。
ダウンロードした著作物が数点であれば,事件化したり,示談金も数百万円などの多額にはならないと考えられます。
ただし,アップロードしたような事件で,アップロードした点数も多数に上る場合,示談を行っても実刑になることが考えられます。
ただし,どのように悪質であっても,示談を行えば有利な事情として考慮されることにはなります。
執行猶予を目指すということであれば,ダウンロードしたファイルの点数が少ないことや,アップロードしたような事件でも,示談したという事情を主張することによって,執行猶予を目指すことができると考えられます。
いずれにせよトレントを利用して著作物に関するデータをやり取りしてしまったということであれば,迅速に弁護士に頼むことが良いと考えられます。
まとめ
このように、トレントを使用することが犯罪となってしまう場合があります。
トレントなどのファイル共有ソフトの使用で不安な方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。