電子マネーの詐取とはどのようなものか
詐欺の犯人が、被害者に対して、未払いの料金があったり、資産家からの贈与の手数料の支払いのためであったりという理由で、対応する電子マネー(iTunesカードなど)を買ってきてほしいと偽って述べ、騙された被害者がコンビニで電子マネー(iTunesカードなど)を購入し、カードの裏に書かれているパスワードを犯人に伝え、犯人が電子マネーの額面の金を騙し取るというものです。
どのような犯罪に当たるのか
まず、刑法246条2項の詐欺罪が考えられます。
刑法246条2項によれば、人を欺いて、「財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた」場合に詐欺罪が成立するとされます。
このような事例の場合、被害者に対して、本当は未払いの代金が無いにもかかわらず、「未払いの代金がある」とだましていますので、「人を欺い」たということが言えます。
また、このようにだますことによって、電子マネーを手に入れることができるので、「財産上不法の利益を得」たということができます。
そのため、このような手口の犯罪については、刑法246条2項の詐欺罪が成立します。
なお、このような電子マネー詐取については、組織的に行われる場合も多いことから、組織犯罪処罰法違反が合わせて成立するということが多いです。
電子マネーを利用した詐欺事件として、問題になった裁判例
電子マネーを利用した詐欺の事例として問題になったケースとして、広島地方裁判所令和2年3月4日判決(LEXDB25565387)の例があります。
この事件は、生前贈与の受贈者を探している資産家及びその仲介者に成りすまし、資産家から財産を贈与されることは無いうえ、手数料として受け取った現金について犯人らで消費するつもりなのに、17億円の現金が生前贈与される旨の内容虚偽のメールを被害者に送信し、その内容を信じた被害者に電子マネーである「ビットキャッシュ」を購入させ、犯人らが管理する決済画面にビットキャッシュのIDを入力させ、ビットキャッシュの金額相当額の電子マネーを受け取った事件があります。
この事件では、このような手段での電子マネーの詐取について刑法246条2項の詐欺罪が成立すると判断しています。
また、この事件では、このような詐欺が組織的に行われたことから、組織犯罪処罰法も成立しており、懲役5年6月及び罰金300万円、それに加えて9,000万円ほどの没収が認められました。
どのような処罰が予定されているか
刑法246条2項によれば、詐欺罪が成立した場合、10年以下の懲役が予定されています。
このような詐欺というものは、特殊詐欺の一部として、組織的に行われており、被害金額も多大なものになっていると推察されますので、このような詐欺に関与したら、実刑になることが予想されます。
また、組織犯罪処罰法も合わせて成立すると考えられることから、数百万円の罰金やこれまでに得た犯罪収益の没収も行われる可能性があります。
このような事件に巻き込まれないよう気を付けること
このような事件に巻き込まれないため、未払い代金があるかどうかについてきちんと把握しておく必要があります。
また、未払いの代金の支払いを要求する際に、電子マネーを要求された場合その要求が正当なものか疑い、根拠がないと感じたら、警察に連絡を入れることが大切です。
なお、電子マネー詐取の事件発生を防止するために、電子マネーを販売する店舗としても、高齢者が電子マネーを購入しようとしていたらその高齢者になぜ電子マネーが必要なのか聴き取り詐欺被害を未然に防止するということをしているようです。