インターネットによる契約は、パソコンやスマートフォンで手軽に行うことができるので、非常に便利です。
しかし、消費者による操作ミスが生じやすいという弱点があります。
操作ミスにより、消費者の意図しない契約が成立してしまうことがあります。
民法では、錯誤について、以下のように規定されております。
(錯誤)
第95条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
2 前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。
3 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。
一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。
4 第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
1項1号の「意思表示に対応する意思を欠く錯誤」について、パソコンの操作ミスでボタンを押してしまうことがあります。
消費者の重大な過失とされてしまうと、意思表示の取消しをすることができず、操作ミスで契約が成立してしまいます。
しかし、対面ではないインターネット上の取引では、不慣れな人はミスをしやすいですし、ミスをしたかを慎重に確認することも難しいです。
そこで、「電子消費者契約に関する民法の特例に関する法律」は、消費者が行う電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示について特定の錯誤があった場合に関し民法の特例を定めております。
電子消費者契約とは、消費者と事業者との間で電磁的方法により電子計算機の映像面を介して締結される契約であって、事業者又はその委託を受けた者が当該映像面に表示する手続に従って消費者がその使用する電子計算機を用いて送信することによってその申込み又はその承諾の意思表示を行うものをいいます。
この法律では、民法の原則を修正しております。
民法第95条第3項の規定は、消費者が行う電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示について、その意思表示が同条第1項第1号に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであり、かつ、次のいずれかに該当するときは、適用しません。
一 消費者がその使用する電子計算機を用いて送信した時に当該事業者との間で電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を行う意思がなかったとき。
二 消費者がその使用する電子計算機を用いて送信した時に当該電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示と異なる内容の意思表示を行う意思があったとき。
インターネットでの契約では、消費者の操作ミスによってボタンを押してしまった場合、錯誤を主張して契約の取消しができることになります。
ただし、当該電子消費者契約の相手方である事業者が、当該申込み又はその承諾の意思表示に際して、電磁的方法によりその映像面を介して、その消費者の申込み若しくはその承諾の意思表示を行う意思の有無について確認を求める措置を講じた場合又はその消費者から当該事業者に対して当該措置を講ずる必要がない旨の意思の表明があった場合は、原則通りに消費者の錯誤主張は認められません。
事業者としては、簡単に消費者から錯誤取消を主張されないために、契約内容についての最終確認画面を表示した上で契約を成立させることになります。
消費者は、最終確認画面をきちんと確認し、訂正箇所があれば訂正した上で契約を成立させなければなりません。