デジタル遺品

相続

デジタル遺品の問題を考えるために、まず、相続について考えます。

民法882条によれば、相続は、人の死亡によって始まります。

相続によって財産承継を受ける人は、相続人と言われます。その相続人となるのは、民法887条、889条、890条によって、決まっています。簡単に言えば、死亡した人の子、子供がいない場合は両親と兄弟姉妹、配偶者(夫・妻)です。

そのため、パソコン内のデータ、電子決済アプリ内に保管された電子決済の残額、アカウントにチャージされた金銭、電子取引している株や証券については、相続人が権利を持ち、相続人がこれらを自由に利用することができます。

デジタルデータ固有の問題

このように、相続人は、死んだ人と結びついたアカウントのデータや、そのデータ内の金銭や契約関係を承継することになります。

しかし、スマホやパソコンについては、個人情報の宝庫となっていることから、外部からのアクセスが容易にできないようになっています。そのため、家族であってもパソコン内のデータやアカウントにアクセスできないようになっています。

スマホの機種によっては、何度もログインできないことで、スマホ内のデータが自動的に消去されるということもあり、これによって、相続人が家族に財産を残せないという事態も生じます。

そうすると、相続人の契約している通販の定期購入契約を解約したいとか、相続人が持っている電子決済の残額を自分の電子決済に移したいけどできない、相続人と交流のあった人を葬式に呼びたいけど呼べない、相続人の写真を利用したいけど利用できないという問題が発生します。

また、反対に安易にスマホやパソコンにアクセスできるようにしてしまったばっかりに、相続人の恥ずかしい過去や見られたくない写真、画像を家族に発見されてしまい、相続人の尊厳を損なうことになってしまうということも考えられます。

デジタル終活

このようなスマホ内のデータに関する相続については、デジタル終活というものがおすすめされているようです。

デジタル終活とは、パソコンやスマホ、インターネットで取引している相手方の名前、メールアドレスなどをノートやメモに書いておき、死後に家族がパソコンやスマホにアクセスして、スマホ内のデータを相続できるよう準備しておくことです。

国民生活センターによれば、デジタル終活として①パソコンやスマホのパスワード、②ネット金融機関の名前、③見てもいいデータと処分するデータを名刺サイズの紙に書いて財布などに入れておくことをお勧めしています。

なお、③については、見てほしいデータだけを挙げて「後のデータは処分するように。」という一文を書くことをお勧めしています(見てほしくないデータを挙げると、タイトルだけでも何か察せられることがあるため)。

デジタル遺品に関するトラブル事例

① 遺影がない

近年では、個人の写真をスマホに保存して、紙で持たないため、故人の遺影に使う写真がスマホにしかないということがあります。

そのため、スマホにアクセスしなければならないのですが、パスワードが分からないため、写真を入手できず、遺影を用意できなかったということがあります。

② 相続人の契約したサブスク契約を解除できない

故人がインターネット通販サイトでサブスク契約を締結しており、毎月の利用料が個人の死後も発生し続けているということがあります。

そのため、故人がどのようなサイトでどのような契約を締結しているか把握できず、故人の死後もサブスク利用料を発生させ、遺産を目減りさせてしまったということがあります。

デジタル遺品に関する問題の解決

デジタル遺品に関する問題については、結局相続人があらかじめ準備しておく必要のある部分が多いようです。

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