GPS・全地球測位システムとは、位置情報記録・送信装置をいい、当該装置の位置に係る情報を記録・送信する機能を有しております。
わかりやすいのはスマートフォンや自動車のカーナビゲーションシステムなどで、所持者の位置が分かり、記録されて履歴が残り、送信して位置情報のデータを渡すことができます。
最近では子供に持たせて、子供の位置情報を親が把握し、子供を守ろうとすることも増えております。
このGPSの利用において、他人のプライバシーを侵害するリスクが生じます。
プライバシーとは、自分が他人に知られたくない個人情報をいいます。
GPSで判明するのは位置情報ですが、いつどこにいるかについても個人情報としてプライバシー侵害の問題が生じます。
位置情報により、住所や勤務先や交友・交際関係などが分かってしまう可能性があります。
ストーカー行為等の規制等に関する法律では、最近に法律が改正され、被害者の位置情報を取得するストーカー行為も犯罪として規制されることになりました。
刑事事件の犯罪捜査でも、裁判所の令状なしにGPSを利用して相手の位置情報を取得する行為は違法であると、最高裁判所で判断されております。
現代では、位置情報はプライバシー侵害のリスクを考慮して慎重に扱われなければなりません。
最近も民事裁判において、不倫の探偵調査で無断で相手の自動車にGPSを設置する行為が違法と判断され、業者に賠償が命じられました。
不倫調査で相手を追跡するために、相手の自動車に相手に無断でGPSの端末を取り付けました。
この探偵業者の調査手法がプライバシーの侵害に当たるかが旭川地方裁判所で争われました。
探偵業者側は、相手の行動そのものではなく、自動車の位置情報を得たに過ぎない、と反論しました。
判決で、調査目的は正当だが、やり方は相当性を欠いており違法、と判断されました。
主な移動手段が自動車である地方の地域では、GPSの情報でかなりの行動履歴が分かるとして、プライバシーの侵害を認め、探偵業者側に賠償を命じました。
最近、GPSを利用して従業員の位置情報を把握する会社が増えております。
従業員のプライバシーを侵害するかが問題となります。
会社としては、最近はリモートワークも増え、外出などで従業員がさぼったりしていないかを調べるため、GPSを利用して労務管理をする目的があります。
従業員としても、勤務時間中は基本的に会社の支配下に置かれているため、位置情報を把握されることは許容されてもいいとも思われます。
なので、基本的には業務命令として適法と評価されます。
GPSを利用して従業員の位置情報を把握し、勤務時間中にパチンコや飲食や遊びに行っていたことが発覚したら、懲戒処分の対象となります。
しかし、業務時間外も位置情報を把握されてしまったら、それはまさにプライバシーの侵害となります。
勤務時間外にどこにいるかは個人の自由であり、その情報も知られたくないと思うのは当然だからです。
そのため、GPSが社員の自動車に取り付けられているのであれば、勤務時間外は機能を停止できるようにしなければなりません。
携帯電話でGPSが利用されているのであれば、勤務時間外は電源をオフにしたりしてGPSの利用を停止できるようにしなければなりません。
このような配慮がないまま、会社がGPSの利用を従業員に強制していたら、違法と判断され、賠償を命じられてしまう可能性があります。
GPSの利用は、あくまでも相手の同意を得て利用することが原則です。
きちんと相手に説明し、何のために利用するのか、データをどのように利用するのか、利用目的外で利用しないようにすること、勝手にデータを第三者に渡さないこと、等を説明して理解してもらわなければなりません。