業務妨害・脅迫

※2025年6月1日より、改正刑法に基づき懲役刑および禁錮刑は「拘禁刑」に一本化されました。当ページでは法改正に基づき「拘禁刑」と表記していますが、旧制度や過去の事件に関連する場合は「懲役」「禁錮」の表現も含まれます。

業務妨害罪

業務妨害罪には、刑法233条の偽計業務妨害罪と、刑法234条の威力業務妨害罪があります。

偽計業務妨害罪は、「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の業務を妨害した」場合に成立します。

「虚偽の風説の流布」とは、客観的な真実に反するうわさや情報を、不特定または多数の人に伝播させることをいいます。

また、「偽計」とは、人を欺いたり、人の錯誤や不知を利用したりするなど、相手の不知や判断を利用する行為をいいます。虚偽の情報を利用して業務を妨害する行為などがこれに当たる場合があります。

一方、威力業務妨害罪は、「威力を用いて人の業務を妨害した」場合に成立します。

ここでいう「威力」とは、人の意思を制圧するに足りる勢力をいいます。暴行や脅迫だけでなく、多数人による圧力や、業務を困難にするような行為なども、具体的な態様によって「威力」に該当することがあります。

そのため、業務に従事している人に対する暴行などのほか、発煙筒を使用して業務を混乱させる行為などについて、威力業務妨害罪が成立することがあります。実際に、発煙筒を使用して会議を混乱させ、約2時間にわたって会議を中止させた行為について、威力業務妨害罪の成立が認められた裁判例があります。

特にインターネットで問題になる業務妨害罪の例は何か

インターネット上では、SNSや電子掲示板などに虚偽の犯罪予告を書き込む行為が、偽計業務妨害罪に問われることがあります。

例えば、「明日、○○駅で通行人をナイフで刺して殺す」など、実際には犯罪を行う意思がないにもかかわらず、虚偽の犯行予告を書き込んだとします。

その書き込みによって警察が駅周辺の警戒や捜索などを行い、本来予定していた業務の遂行が困難になれば、偽計業務妨害罪が成立する可能性があります。

実際に、インターネット掲示板に虚偽の無差別殺人予告を書き込み、警察官を現場に出動させ、本来の職務の遂行を困難にした事案について、偽計業務妨害罪の成立が認められています。

警察庁も、インターネット上の爆破予告や殺人予告などによって、施設の警戒、危険物の検索、身辺警戒などの対応が必要になることを指摘しています。

また、飲食店などでのいわゆる「迷惑動画」も、内容や行為の態様によっては威力業務妨害罪に問われることがあります。

例えば、店舗内で醤油さしの注ぎ口をなめるなどの迷惑行為を撮影してSNSに投稿した事案では、威力業務妨害罪の容疑で逮捕・起訴された例があります。

ただし、インターネット上に動画を投稿したというだけで、直ちに業務妨害罪が成立するわけではありません。実際の行為の内容、業務への影響、投稿の態様などを踏まえて判断されます。

脅迫罪

インターネット上の投稿やメッセージによって、脅迫罪が成立することもあります。

刑法222条の脅迫罪は、生命、身体、自由、名誉または財産に対して害を加える旨を告知して、人を脅迫した場合に成立します。

例えば、SNSやメッセージアプリを利用して、特定の人物に対して「スタジオの入口で待ってろ。刺すからな」などと伝えれば、内容や具体的な状況によっては脅迫罪が成立する可能性があります。

また、インターネット上で不特定多数に向けて書き込んだ場合でも、具体的な内容や相手方との関係などによって、脅迫罪その他の犯罪が成立することがあります。

インターネット上の書き込みで逮捕される可能性

業務妨害罪や脅迫罪は、インターネット上の書き込みによって成立する場合があり、逮捕される可能性もあります。

「インターネットに匿名で書き込めば、誰が投稿したのか分からない」と考えるのは適切ではありません。

事件の内容によっては、捜査機関が通信履歴などの捜査を行い、投稿者の特定につながる場合があります。実際に、能登半島地震の際に、被災者を装って救助が必要であるとの虚偽情報をSNSに投稿し、警察官らに不要な捜索活動を行わせた事案では、捜査によって投稿者が特定され、偽計業務妨害罪で逮捕されています。

もっとも、投稿者が特定されるかどうかや、逮捕されるかどうかは、事件の内容や証拠、捜査の進展などによって異なります。

どのくらいの刑罰が予想されるのか

偽計業務妨害罪と威力業務妨害罪の法定刑は、いずれも3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。

脅迫罪の法定刑は、2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です。

もっとも、実際にどのような刑事処分になるかは、犯罪の内容、犯行の動機・目的、業務への影響、被害の程度、被害者への謝罪や賠償、前科・前歴など、さまざまな事情を考慮して判断されます。

そのため、「初犯であれば罰金になる」と一概にはいえません。比較的軽微な事案で罰金刑となる可能性がある一方、業務への影響が大きい場合や、悪質な犯行を繰り返している場合などには、より重い刑事処分となる可能性があります。

また、一定の条件を満たせば、拘禁刑について執行猶予が付される場合もありますが、具体的な処分は個別の事情によって判断されます。

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