犯行予告や迷惑行為と偽計業務妨害罪

偽計業務妨害罪

刑法233条の偽計業務妨害罪が成立するためには、「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて…(中略)…その業務を妨害した」場合に成立するとされています。

この「虚偽の風説を流布」とは、客観的真実に反するうわさや情報を不特定又は多数人に伝播することを指します。簡単に言えば、嘘のうわさを広めるということです。

また、「偽計」とは、人を欺き、あるいは人の錯誤又は不知を利用することを指します。

犯行予告と偽計業務妨害罪

インターネットで問題になる業務妨害罪の例は、SNSや電子掲示板に「明日、○○駅で通行人を片っ端からナイフで突き刺して殺す」などの虚偽の犯罪予告を行う事例です。

このような犯行予告については、東京高裁平成21年3月12日判決高刑集62巻1号21頁の例があります。

この事例は、被告人がインターネットの掲示板にJR土浦駅において無差別殺人を実行するという内容の虚構の殺人事件の実行を予告し、その掲示板を閲覧した者から警察に通報があったことから、警察署職員らが、土浦駅構内及びその周辺等への出勤、警戒等の徒労の業務に従事し、その間、同人らは、本来であれば遂行されたはずの警ら立番業務その他の業務の遂行が困難となったという事件があります。

この事件について裁判所は、「警察に対して犯行予告の虚偽通報がなされた場合、警察においては、直ちにその虚偽であることを看破できない限りは、これに対応する徒労の出動・警戒を余儀なくされるのであり、その結果として、虚偽通報さえなければ遂行されたはずの本来の警察の公務(業務)が妨害されるのである。」と認めて、偽計業務妨害罪の成立を認めました。

SNSでの活動と偽計業務妨害罪

SNSで書き込みをし、その書き込みが、偽計業務妨害罪に問われた事例として、東京高裁令和3年8月31日判決があります。

この事件は、「私はコロナだ」と投稿していた被告人が、その投稿に引き続いて都内の飲食店のロゴが付されたグラスを含め、店内の様子を撮影し、「濃厚接触の会」とコロナに感染している者たちがこの店で飲食しているかのような虚偽の投稿した事件があります。

この事件について裁判所は、このような被告人の投稿によって、この店の営業部長に警察への通報や従業員への店への入念な消毒等の指示を余儀なくさせて、営業部長らの正常な業務の遂行に支障を生じさせたとして、偽計業務妨害罪の成立を認めました。

なお、飲食店に対して、「私はコロナ」などと、コロナ感染症にり患している事実を告げた事例について、偽計業務妨害罪ではなく、威力業務妨害罪を認めている事例もあります。

予想される処分や刑罰

インターネットに書き込んだりアップロードした人が誰であるか特定されたならば、逮捕される可能性があります。

ただし、インターネットに書き込んだ記録、虚偽の通報を受けて、警察官が出動した記録などは警察の方で保管している可能性が高いことから、逮捕や勾留といった身柄拘束を防ぐ弁護士の活動を行う余地は大きいと思われます。

刑法233条の偽計業務妨害罪の法定刑は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。

そのため、初犯であれば、罰金刑で済む事例もあります。ただし、妨害された業務の影響が大きかったり、社会的耳目を集める事件であったりする場合には、罰金刑ではなく、執行猶予付きの有罪判決となる可能性があります。

犯罪をしないために注意すること

SNSやインターネット掲示板に投稿する際は,犯行予告や迷惑行為になる投稿にならないよう注意しながら投稿する必要があります。

また、迷惑行為をしている様子を投稿すると、これらの犯罪に問われる可能性があることを認識しておく必要があります。

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