誹謗中傷とは
誹謗中傷というのは,悪口などを言ったり,書き込んだりすることによって,相手の人格を傷つけることを指します。
現代では,誰もがインターネットに情報を書き込めることから,誹謗中傷を行うことができる状態にあります。
しかし,あらゆる誹謗中傷が法的に違法となるかというと,それはそうではありません。そのため,その誹謗中傷が名誉毀損や名誉感情侵害にあたるかを考えて行動しなければなりません。
削除請求
名誉毀損,名誉感情侵害を行うインターネットの情報発信に対しては,民法723条の原状回復請求として,削除請求をすることができます。
これは,サイトの管理者に対して行うものであり,サイトに書き込まれたことについてこれ以上他の人に見られないようにするために行うものです。
このような削除請求が認められるためには,名誉毀損または名誉感情侵害が行われていることと,投稿された情報発信について提供し続けることによる利益と,当該事実を公表されない法的利益を比較して,当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合であると認められなければなりません。
この削除請求については,裁判所を使わない個別のサイトに対して,個人に対する名誉毀損や名誉感情侵害の書き込みを指摘して削除するよう求める方法と,裁判所を介して,削除仮処分を申し立てる方法の二通りがあります。
投稿削除に迅速に応じる5ch等のサイトについては,裁判所ではなく個別サイトに削除要請をする方法が主に用いられ,どうしても削除されない場合や,慎重な判断を求められる場合には裁判所の削除仮処分が用いられています。
損害賠償請求
名誉毀損や名誉感情侵害を理由とする損害賠償請求を書き込んだ人に対して行うということが考えられます。
名誉毀損であるということが言えるためには,「人の社会的評価を下げる事実を示した」と言えなければいけません。
また,名誉感情侵害であると言えるためには,「人の人格的評価について有する主観的な評価を否定した」と言えなければなりません。
もし,名誉毀損であると認められれば,10万円程度から,数百万円程度が損害額として認められます。
また,名誉感情侵害であると認められれば,数万円程度から,数十万円程度が損害額として認められます。
誹謗中傷をする書き込みをした人に対して責任追及を行うなら,このくらいが認められます。
発信者情報開示請求
誰が書き込んだか分からないということであれば,発信者情報開示請求を行うというのが考えられます。
インターネットで誹謗中傷をされた人はたいてい書き込んだ人の名前や住所を知りませんので,この手続が使われるということが良くあります。
この手続は,簡単に言えば,サイト管理者に対して,IPアドレスの開示請求を行い,IPアドレスからプロバイダを特定して,そのプロバイダに対して,発信者の住所・氏名を特定する手続です。
この手続を使っても特定できないなどの問題はあったりするのですが,インターネットで書き込みを行う人に対しては,このような手段を用いなければ,加害者を特定することができない状態にあると言えます。
誹謗中傷を書き込んでしまったら
一応,誹謗中傷に当たるようなことを書きこんだと考えるのであれば,発信者情報開示請求に対する対応であったり,被害者との示談交渉であったり,名誉権侵害を理由とする裁判に対する対応を考えることになります。
発信者情報開示請求がプロバイダにされた場合,投稿者に対する意見照会が行われます。この意見照会に対して,開示を同意するか,不同意にするかを回答することになります。
開示に同意するのであれば,即時に情報開示が行われるのですが,不同意ということであれば,裁判所の審理を経て情報開示が行われます。
また,不同意を主張する場合,不同意の理由を記載する必要があります。この理由書には,例えば,この投稿は名誉権侵害を行うものではない。名誉毀損であっても,真実性の抗弁が認められる。情報開示が行われると,被害者やその関係者と称する人から,不当な攻撃を受ける可能性がある。などの主張を行います。
この記載によって,場合によっては,発信者情報開示請求が認められず,情報開示が行われないということがあります。
この示談交渉をする際には,裁判で認められる損害額では被害者の被害感情を抑えきれないので裁判で認められる損害額より多くの金額を提示することになることが多くなるということを念頭に置いて対応する必要があります。
そのため,示談をする際には,数百万円を示談金として提案することがあります。
名誉権侵害に対する対応としては,被害者に対する名誉権侵害は発生していない,名誉権侵害はあるのかもしれないが,真実性の抗弁が認められるなどの主張を行っていくことになります。