口座情報・キャッシュカードの提供

※2025年6月1日より、改正刑法に基づき懲役刑および禁錮刑は「拘禁刑」に一本化されました。当ページでは法改正に基づき「拘禁刑」と表記していますが、旧制度や過去の事件に関連する場合は「懲役」「禁錮」の表現も含まれます。

キャッシュカード情報と引き換えに融資をしてくれる消費者金融

最近では、キャッシュカードや預金通帳を担保や信用確認のためとして要求し、これと引き換えに融資を行うように装う手口が問題となっています。

例えば、SMSで「ブラックでも借りられる消費者金融」などと勧誘し、融資を申し込んだ人に対して、「信用確認のため、使用していない預金通帳やキャッシュカードを送ってほしい」などと要求するケースがあります。

これに応じてキャッシュカードや預金通帳を送付すると、実際には融資を受けられず、送付したキャッシュカードや口座が特殊詐欺などに利用されることがあります。

このような場合、キャッシュカードや預金通帳を送った本人が、特殊詐欺の被害者である一方で、犯罪収益移転防止法上の預貯金通帳等の不正譲渡について刑事責任を問われる可能性があります。

警察庁も、預貯金通帳やキャッシュカードの譲渡が特殊詐欺などに利用されているとして、注意を呼び掛けています。

犯罪収益移転防止法

犯罪収益移転防止法では、預貯金通帳やキャッシュカードなどの「預貯金通帳等」の不正な譲受け・譲渡しを処罰しています。

現在の第28条2項では、相手方に不正な利用目的があることを知って預貯金通帳等を譲り渡した場合だけでなく、通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、有償で預貯金通帳等を譲り渡した場合も処罰対象とされています。

したがって、単に「相手が特殊詐欺に利用することを知らなかった」というだけで、必ず犯罪が成立しないとはいえません。

例えば、融資を受ける条件としてキャッシュカードや預金通帳を送付するよう求められ、その見返りとして融資を受ける利益を得ることになっていた場合には、その融資とキャッシュカード等の交付との関係が問題となります。

もっとも、実際に犯罪が成立するかどうかは、相手とのやり取り、キャッシュカード等を送付した経緯、融資との関係、交付時の認識など、具体的な事情を踏まえて判断する必要があります。

また、キャッシュカードや預金通帳を送付した行為については、「譲り渡し」「交付」「提供」のいずれに該当するかも、具体的な行為態様を踏まえて判断されます。

予想される刑罰について

2026年7月10日から犯罪収益移転防止法が改正施行され、預貯金通帳等の不正譲渡等について法定刑が引き上げられました。**現在の第28条2項の対象となる行為については、3年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又はこれらの併科が法定されています。業として行った場合には、さらに重い刑が定められています。

法定刑が3年以下であるからといって、個別の事件について直ちに実刑になるということでもありません。実際の処分は、交付した通帳・キャッシュカードの数、交付の経緯、対価の有無、相手方との関係、特殊詐欺への関与の程度、本人の認識や反省状況、前科・前歴などの事情によって異なります。

また、逮捕されるかどうかについても、法定刑だけから判断することはできません。逃亡や証拠隠滅のおそれ、事件の内容、捜査の必要性などを踏まえて判断されます。

そのため、「前科がなければ罰金になる可能性が高い」「逮捕される可能性は低い」と一律に断定することは適切ではありません。

気を付けてほしいこと

このような事件では、融資を受けようとした人自身が特殊詐欺グループから騙されていたとしても、キャッシュカードや預金通帳を渡した行為について刑事責任を問われる可能性があります。

特に、特殊詐欺グループが入手した口座を利用して多数の被害者から金銭を振り込ませるなどすれば、口座の不正譲渡がその後の犯罪に利用されることになります。警察庁も、預貯金口座の不正譲渡等が特殊詐欺などの犯罪に利用されている実態を指摘しています。

したがって、「融資のため」「信用確認のため」などと言われても、キャッシュカードや預金通帳を他人に送付してはいけません。

正規の金融機関や貸金業者から融資を受ける場合でも、キャッシュカードや預金通帳そのものを相手に渡すことを求められた場合には、詐欺などの犯罪を疑い、送付しないようにしましょう。

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