口座情報・キャッシュカードの提供

キャッシュカード情報と引き換えに融資をしてくれる消費者金融

最近、キャッシュカード、預金通帳と引き換えに融資をする消費者金融についての事件が起こっています。

具体的には、SMSで「ブラックでも借りられる消費者金融甲金融」といったメッセージが突然届き、このメッセージに応じて、「借りたい」旨を述べると、「信用性確認の担保として、使っていない預金通帳やキャッシュカードを送ってほしい」と返事が届き、これに応じて、キャッシュカードや預金通帳を指定された住所へ郵送すると、騙されて、キャッシュカードや預金通帳を送った人が、犯罪収益移転防止法違反で処罰されるというものです。

このキャッシュカードや預金通帳を信用性担保のために欲しがる奇特な消費者金融の正体は、特殊詐欺のグループであり、預金通帳やキャッシュカードを融資を受けたいと考える人から騙し取り、預金通帳やキャッシュカードを特殊詐欺に利用しているようです。

犯罪収益移転防止法

犯罪収益移転防止法28条2項によれば、「通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由が無いのに、有償で、預貯金通帳等を譲り渡し、交付し、又は提供した者」に該当する場合、預金通帳等譲渡の罪が成立すると考えられています。

融資を行う際に通常預金通帳やキャッシュカードの郵送は行わないだけでなく、預金通帳やキャッシュカードを貸与することは銀行の約款で禁止されているため、正当な理由はありません。

預金通帳やキャッシュカードを郵送することは譲り渡したということに該当します。

問題は、「有償で」ということになるのですが、この有償というのは、有形無形の利益を指すため、融資を受けることのできる地位がこの預金通帳やキャッシュカードの郵送の対価となるため、この有償について該当すると裁判例上考えられています。

また、故意も問題になりえますが、対価である融資を受けることのできる地位が与えられること、預金通帳やキャッシュカードの貸与が許されていないという約款があることから、正当な理由は無いと考えられることについては、消費者金融とのやり取りから、認定できるため、有効な反論にならないと考えられます。

予想される刑罰について

犯罪収益移転防止法28条2項によれば、1年以下の懲役若しくは、100万円以下の罰金又は、その併科が予定されています。

キャッシュカード数枚を送る単純な犯罪ですので、いきなり執行猶予付きの懲役刑であるとか、実刑であるといったことになるとは考えにくいです。

逮捕される可能性についても、このように、詐欺グループへの関与の程度が小さいこと、罰金の可能性があることから、可能性は低いと考えられます。

前科も無いのであれば、起訴されるとしても、罰金となる可能性が高いと思われます。

気を付けてほしいこと

このように、巧妙な手口で被害に遭う犯罪ですが、事件の被害者は、同時に特殊詐欺に手を貸してしまった加害者でもあります。被害品である預金通帳やキャッシュカードを使って、特殊詐欺が行われることから、被害額も数百万円、数千万円に上ることになります。

そのため、検察官としては、許し難い犯罪と捉えているようです。

銀行や消費者金融、闇金は信用性確認のために預金通帳やキャッシュカードを要求することは無いと覚えておきましょう。

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