虚偽の風説流布による偽計業務妨害罪
刑法233条によれば、「虚偽の風説を流布し、…(中略)…業務を妨害した」場合に虚偽の風説流布による偽計業務妨害罪が成立するとされています。
この「虚偽の風説を流布」とは、客観的真実に反することを不特定又は多数の人に伝播させることを指します。
このような虚偽の風説流布による偽計業務妨害罪に該当するとされた例として、名古屋高裁令和3年12月14日判決の例があります。
この事例は、ユーチューバーである被告人が洋服店前の路上において、動画撮影を行いながら、購入したTシャツ1枚について偽ブランド品であると虚偽の事実に基づいて、洋服店に対して返品を要求し、その偽ブランドと言い募る様子を動画投稿サイト(YouTube)に投稿し、当該洋服店が偽ブランド品を販売しているかのような虚偽の事実を示した事件です。
この事件について、裁判所は、この事実が偽計業務妨害罪に該当することを認めています。
このように、業務を妨害するために、真実品質の悪いものを販売している店舗ではないにもかかわらず、品質の悪いものを販売しているかのように事実を曲げて宣伝した場合、虚偽の風説流布による偽計業務妨害罪が成立します。
信用毀損罪について
刑法233条によれば、「虚偽の風説を流布し、…(中略)…信用を毀損」した場合、信用毀損罪が成立するとされています。
なお、この「信用」というのは、財産上の義務履行能力・意思への社会的信用を指します。
そのため、人の社会的評価ではなく、あくまで、財産に関する社会的評価に対する被害が発生するような虚偽の風説である必要があります。
信用毀損罪が成立するか問題となった事例として、最高裁平成15年3月11日判決があります。
この事例は、コンビニエンスストアで購入したオレンジジュースに家庭用洗剤を注入したうえ、警察官に対して、同コンビニエンスストアで買ったオレンジジュースに異物が混入していたという虚偽の申告をし、その結果、報道機関をして、同コンビニエンスストアで異物の混入されたオレンジジュースが陳列・販売されていたことを報道させた事件です。
この事件について最高裁は、「法233条が定める信用毀損罪は,経済的な側面における人の社会的な評価を保護するものであり,同条にいう『信用』は,人の支払能力又は支払意思に対する社会的な信頼に限定されるべきものではなく,販売される商品の品質に対する社会的な信頼も含むと解するのが相当である」と判断し、このように、オレンジジュースの品質についても信用毀損罪にいう「信用」に含まれると判断しています。このように最高裁が判断したのは、商品の品質というのも、会社の支払い能力にかかわるものであるためだと考えられています。
予想される刑罰
刑法233条によれば、虚偽の風説流布による偽計業務妨害罪と、信用毀損罪についての法定刑は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金であると規定されています。
この罪を犯して逮捕される可能性はあると言えます。
また、前科前歴がない人である場合、どのくらいの業務に対する被害が出たかによって量刑は異なりますが、罰金刑や執行猶予付きの有罪判決となる可能性があります。
示談については,会社などの法人に対する莫大な金銭的被害が発生することがあります。この場合には,割増した形で払わなければならないと考えられます。
損害賠償請求
偽計業務妨害罪に該当する行為や信用毀損罪に該当する行為を行った場合、会社に対する経済的被害が発生することから、莫大な金銭的被害が発生すると考えられます。
そのため、民事的にも莫大な損害賠償請求をされる可能性があります。