児童買春罪
(1)児童買春罪とは何か
マッチングアプリや出会い系サイト(このようなものではなくても、InstagramやXなどが使われることもあるようですが)で出会った相手が、未成年である場合、児童買春罪の問題になります。
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(いわゆる児ポ法)4条によれば、児童買春の禁止が規定されています。
ここで言う児童買春とは、18歳未満の者(以下、「児童」といいます)に対し、対価を供与し、又はその供与を約束して、性交や性交類似行為をすることを指します。
簡単に言えば、児童に対して、かつての援助交際や最近の性行為を伴うパパ活をするようなこと禁止する規定です。
また、この性行為については、児童を脅したとか、児童に暴力を振るったとかそういった行為は関係ありません。同意があってもこの犯罪は成立します。
また、買春の対象となった相手が、16歳未満である場合、より重い不同意性交罪の問題になります。
なお、対価の授受が無い場合については、別の犯罪が成立するかどうかという点に見当が移ります。
(2)逮捕の見込みや、処罰の見込みについて
逮捕される可能性は十分にあります。
児童買春罪の法定刑は、5年以下の懲役又は300万円以下の罰金となっています。
処罰としては、初犯で前科が無い場合、罰金や執行猶予になる可能性はあります。
児童福祉法違反
(1)児童福祉法の淫行罪
児童福祉法34条1項6号によれば、18歳未満の者に淫行をさせる行為をしてはならないと規定されています。
この「淫行をさせる行為」とは「直接たると間接たるとを問わず児童に対して事実上の影響力をおよぼして児童が淫行をなすことを助長し促進する行為」(最高裁昭和40年4月30日決定)を指すとされています。
典型的には、18歳未満の者を性風俗店で働かせたり、性風俗店で働くよう強要したりすることが、この罪に当たります。
しかし、この犯罪については、淫行の相手方となるのが誰であるのかということを規定していないので、淫行の相手となるのが被告人自身であっても成立すると考えられています。そのため、マッチングアプリなどで、18歳未満の者と性交するよう持ち掛けて、性交したというような場合にはこの犯罪が成立します。
また、同意があるかどうかとは関係がありません。
(2)逮捕の見込みや、処罰の見込みについて
児童福祉法34条1項6号についての罰則規定である児童福祉法60条1項によれば、児童福祉法上、淫行をさせる行為をした場合、10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科することが規定されています。
逮捕の可能性については、家庭内暴力と見られる事案についてはもちろん、児童と性交したとみられる事件についても逮捕される可能性は十分にあると言えます。
裁判所で下される刑罰については、前科が無く、初犯であると言える場合には、罰金や執行猶予付きの懲役刑になると考えられます。
都道府県の健全育成条例
(1)いわゆる淫行条例違反
都道府県の健全育成条例で、青少年に対する性交または淫行を取り締まっている例があります。ただし、都道府県ごとに規制内容が違います。
例えば、東京都の東京都青少年の健全な育成に関する条例(東京都青少年健全育成条例)の18条の6によれば、「何人も、青少年と淫らな性交又は性交類似行為を行ってはならない」と規定されています。
しかし、一番多い例は、福岡県青少年健全育成条例31条1項で規定されているように、「何人も、青少年に対し、いん行又はわいせつな行為をしてはならない」と規定されている条例です。
これらは、犯人自身から性交を持ち掛けたか持ち掛けていないかに関わらず処罰する規定です。
また、「いん行」とは、最高裁昭和60年10月23日判決によれば、「広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為」のことを指すとされています。
そのため、結婚を前提としたお付き合いであるとか、両親も公認のお付き合いの際に行われる性交である場合には、条例違反とならないと解されています。
(2)逮捕の見込みや、処罰の見込みについて
逮捕される可能性は十分にあります。
東京都青少年健全育成条例違反の場合も、福岡県青少年健全育成条例違反の場合も、法定刑は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金です。
ただし、都道府県によって法定刑が違う可能性がありますので、細かくは確認が必要です。
前科も無い場合には、罰金か、執行猶予付きの懲役刑になることが予想されます。
不同意性交罪
(1)不同意性交罪による未成年者との性交の規制
刑法177条3項によれば、「16歳未満の者に対し、性交等をした者」も不同意性交罪を行ったとして、処罰されることになります。
ただし、正確には、「当該16歳未満の者が13歳以上である場合については、その者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者に限る」と規定されていることから、20歳までの者であれば、相手の年齢次第で、この罪が成立しないということがあります。
なお、この規定は、相手の年齢次第で、性交すれば犯罪が成立する規定ですので、不同意状況の有無は関係ありません。ただし、年齢についての錯誤がある状況ならば、不同意状況の有無が問題になります。
(2)逮捕の見込みや予想される処罰
不同意性交罪の法定刑は、5年以上の懲役です。
そのため、示談するなど情状酌量の事情を作らない限り、実刑になります。そのため、もしこの犯罪を犯したと言えるならば、示談による不起訴か、情状酌量の獲得によって、執行猶予付きの有罪判決を得るということを目指します。
また、重大な犯罪ですので、逮捕される可能性は高いです。
出会い系アプリ・サイトで子供に起こるトラブル
出会い系サイトというのは、電子掲示板や電子メール等の機能を用いて、交際を希望する面識のない異性同士の交流を取り持つウェブサイトのことです。また、マッチングアプリというのは、交際を希望する面識のない異性同士の交流を取り持つスマートフォンアプリです。
しかし、これらのウェブサイトやアプリを使っている相手の人というのは何者か分かりませんし、「同級生の中学生です」と素性を偽っている成人の可能性があります。
これらを使った未成年者の性被害が発生しているため、トラブルになっています。
出会い系サイトで起こる未成年が被害者となる例
政府広報や警察白書によれば出会い系サイトで起こるトラブルとして、以下のようなものが報告されています。
- 女子中学生が、コミュニティサイトで知り合った男に、裸の画像を送信しなければ連絡先と顔写真をばらまくと脅されて自分の裸の写真を送信させられた。
- 女子中学生が、コミュニティサイトで知り合った男に、衣類を買い与える約束で誘い出され、ホテルでわいせつな行為をされた。
- 男子中学生が、コミュニティサイトで知り合った男と実際に会った結果、わいせつな行為をされ、その様子をカメラで撮影され、その後、その男から、「学校にばらす」などと脅された。
未成年者の被害が起こる原因
このような未成年者に対する被害が発生しているのは、子どもの携帯電話保有率が高くなり、マッチングアプリや出会い系サイトへのアクセスが容易になったことに原因があると考えらえます。
また、インターネットは、匿名で情報を瞬時に拡散させる機能があることから、相手の素性が分からず、相手に騙されて犯罪被害に遭ってしまうということがあるようです。
出会い系サイトなどで未成年者に対する犯罪被害を防止するための法律
このような出会い系サイトでの未成年者の犯罪被害を防止するための法律として、インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律(通称「出会い系サイト規正法」)があります。
この出会い系サイト規正法によれば、未成年者でないことを確認する仕組みを設けること(出会い系サイト規正法11条)と、未成年者を誘引するような内容の書き込みを発見した場合にはその公開を停止する措置を取ることが義務付けられています(出会い系サイト規正法12条)。
このことから、適法に運営されている出会い系サイト、マッチングアプリであれば、未成年者が登録し、それによって犯罪被害に巻き込まれることを防ぐ仕組みがあるということができます。
また、出会い系サイト規正法6条各号には禁止行為が規定されています。
これによれば、禁止される行為というのは、
一 児童を性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、他人の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは他人に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)の相手方となるように誘引すること。
二 人(児童を除く。第五号において同じ。)を児童との性交等の相手方となるように誘引すること。
三 対償を供与することを示して、児童を異性交際(性交等を除く。次号において同じ。)の相手方となるように誘引すること。
四 対償を受けることを示して、人を児童との異性交際の相手方となるように誘引すること。
五 前各号に掲げるもののほか、児童を異性交際の相手方となるように誘引し、又は人を児童との異性交際の相手方となるように誘引すること。
です。
そのため、未成年者が出会い系サイトを使って売春を持ち掛けたり、性交類似行為をするよう持ち掛けたりすることも禁止されていると言えます。
また、この6条の規定に違反した場合、出会い系サイト規正法33条により、100万円以下の罰金が予定されています。
出会い系サイト、マッチングアプリを子供に使わせないために
このように、子どもが出会い系サイト、マッチングアプリを使うことは犯罪被害に遭うリスクを高めるものですし、子どもが利用すること自体が犯罪行為になりかねないものです。
そのため、子どもが出会い系サイトやマッチングアプリを利用しないようにする必要があると言えます。
使わせないようにする方法は様々ですが、出会い系サイトやマッチングアプリの危険性を周知したり、子どもに対して交友関係をそれとなく聞いておいたりすることが重要であると考えられます。
そうすることで変な人と会っていないかなどを察知することができます。