モノなしマルチ

モノなしマルチとは何か

物の販売に関してのマルチ商法を行うものではなく、副業や投資に関するノウハウの紹介といったサービスに関してマルチ商法を行うものです。

このマルチ商法については、何らかのノウハウがあることを紹介されるのですが、その紹介されたノウハウについて、仕組みが分からず、実際には中身がないということに特徴があります。

また、マルチ商法として行われるので、友人を紹介し、友人にノウハウが売れたら、紹介料を支払うという形で勧誘がされるのですが、中身がないため、その友人から返金を求められたり、契約の解除を求められたりしてしまいトラブルに発展するというケースが見られます。

モノなしマルチの例

モノなしマルチの例として、このようなケースがあるようです。

友人より投資の方法を50万円で教えると言われた。

50万円は高いことから、最初は『買わない』と言っていたのですが、『儲かる、50万円なんて一瞬で取り返せる。借金してでも買った方がいい。』と言われ、消費者金融で30万円を借りて支払い、友人より投資の方法の入ったUSBメモリを受け取りました。

しかし、そのUSBメモリの中には、株価のデータが入っているばかりで、投資の方法はよくわかりませんでした。

しかし、私が紹介すれば、紹介料が手に入ること、頭の良い人なら、きっといい投資の仕方と分かってくれることだろうと思い、私の高校の後輩にこの投資の方法を紹介して、USBメモリを購入する手続を教えてしまいました。

このような場合、思った通りの収益を上げることができず、50万円を損してしまうというトラブルが発生します。それだけでなく、紹介した人から責任追及を受けるということもあります。

モノなしマルチの被害回復方法

(1)損害賠償請求

このような場合に被害回復を行う方法としては、友人に損害賠償請求を行うことが考えられます。しかし、その友人も騙されて契約した者であり、その友人も金がない、さらに友人との関係が悪くなることから、損害賠償請求を行うことは現実的ではありません。

裁判例として、東京地裁令和4年11月25日判決のようにマルチ商法の上位者に責任追及を行った例はあります。しかし、被害金額を十分に回収できるとは考えられません。

また、このような物なしマルチの商品を販売している会社に対して、損害賠償請求を行うことも考えられます。

(2)契約解除

特定商取引法に基づくクーリングオフを利用して契約を解除するということも考えられます。

特定商品取引法40条1項によれば、「連鎖販売業(簡単に言えば、マルチ商法のこと)を行う者がその連鎖販売業にかかる連鎖販売契約を締結した場合におけるその連鎖販売契約の相手方は、第37条第2項の書面を受領した日から起算して20日を経過したときを除き、書面又は電磁的記録によりその連鎖販売契約の解除を行うことができる。」と規定されています。

また、この「連鎖販売業を行う者」というのは、特定商取引法37条によれば、連鎖販売の会社ですので、この連鎖販売の会社に対して契約解除の書面を送付すれば、契約の解除をすることができます。

契約を解除すると、商品を返品する代わりに、契約料が返ってきます。

特定商品取引法40条の2第1項によれば、「連鎖販売加入者は、第37条第2項の書面を受領した日から起算して20日を経過した後においては、将来に向かってその連鎖販売契約の解除を行うことができる。」とされています。

なお、特定商品取引法40条の2第2項1号によれば、商品の引き渡しを受けて、受取った日から、90日を経過した場合にはクーリングオフをすることは出来なくなります。

そのため、マルチ商法の加入者であれば、90日までクーリングオフをすることができます。

なお、マルチ商法で購入した商品を再販売した場合には、特定商品取引法40条の2第2項2号によりクーリングオフをすることができなくなります。

但し、消費者金融から金銭を借りた行為については、消費者金融業者との契約ですので、これをクーリングオフにより解除することは出来ません。

モノなしマルチについて気を付けること

近年、このような投資方法を販売するマルチ商法が流行っていますので、どのような手口でマルチ商法を行っているのか知っておくこと、仮に巻き込まれても、クーリングオフにより契約を解除することができることを覚えておくとよいと思われます。

また、投資方法のノウハウを購入する際、借金をしてまで購入しないことをお勧めします。

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