インターネット上のいじめ

どのようなネットいじめがあるか

ネットいじめとは、インターネットを介して行われるいじめのことです。

ネットいじめとしては、SNSに悪口を書いたり、クラスメイトが参加するSNSやグループチャットから特定の子どもを排除したり、SNSに個人情報を書き込んだり、いじめられている子どもの恥ずかしい写真や動画をアップロードしたりするものがあります。

ネットいじめが深刻になるのはなぜか

このネットいじめが深刻になる原因については、文部科学省の資料でも取り上げられています。

文部科学省の資料では、ネットいじめが深刻化する理由として、①不特定多数の者から集中的に誹謗中傷が行われることから、被害が短期間で極めて深刻になること、②ネットの匿名性から、子どもが簡単に被害者にも加害者にもなること、③SNSなどで子どもたちの個人情報や画像が流出し悪用されること、④保護者や教師などの身近な大人にとって発見することが困難であるため、実態を把握して効果的な対策を講じることが困難であることなどが挙げられています。

もっとも、これらの資料には作成から相当期間が経過しているものもあり、当時問題となっていた「学校裏サイト」など、現在では状況が変化しているものもあります。そのため、現在のネットいじめについては、SNS、動画共有サービス、グループチャットなど、現在のインターネット環境を踏まえて考える必要があります。

いじめを行った子どもの責任

刑法41条によれば、「14歳に満たない者の行為は、罰しない」と規定されています。

しかし、14歳未満であっても、少年法3条1項2号の触法少年に該当するため、少年法上の手続によって処遇される可能性があります。

また、民法712条により、未成年者が「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかった」場合には、その行為について損害賠償責任を負わないとされています。

この責任能力の有無は、年齢だけによって一律に決まるものではありません。一般には、12歳前後が責任能力の有無を判断する際の一つの目安とされていますが、具体的な事案では、本人の年齢、知能、精神的な成熟度などを踏まえて判断されます。

そのため、責任能力のある子どもがいじめによって他人に損害を与えた場合には、本人が民法709条に基づく損害賠償責任を負う可能性があります。

もっとも、責任能力のある未成年者に損害賠償責任が認められたとしても、本人に十分な資力がない場合には、実際に損害賠償金を回収することが困難になることがあります。

親への責任追及

このように、子ども自身に損害賠償責任を追及することが難しい場合や、親自身に監督上の問題がある場合には、親に対して民事上の責任を追及することが考えられます。

(1)刑法上の親の責任

子どもの行為について親に刑法上の責任を追及することについては、原則として、親自身が犯罪行為を行ったわけではないため、子どもの行為だけを理由として親が刑事責任を負うことはありません。

もっとも、親自身が犯罪行為に関与していた場合などには、親自身の行為について刑事責任が問題となることがあります。

(2)責任能力のない未成年者に対する親の民事上の監督責任

子どもに責任能力がない場合には、民法714条1項により、その子どもを監督する法定の義務を負う者が、原則として損害賠償責任を負うことがあります。

もっとも、監督義務者がその義務を怠らなかったこと、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったことを立証した場合には、責任を免れることができます。

したがって、責任能力のない子どもがいじめによって第三者に損害を与えた場合に、親が常に損害賠償責任を負うというわけではなく、民法714条の要件を満たすかどうかを具体的に検討する必要があります。

(3)責任能力のある未成年者についての親の民事責任

では、責任能力がある子どもの行為について、親が損害賠償責任を負うことがあるのでしょうか。

最高裁昭和49年3月22日判決によれば、未成年者が責任能力を有する場合であっても、「監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係を認め得る」場合には、監督義務者が損害賠償責任を負うことがあると判断されています。

もっとも、責任能力のある子どもが不法行為をしたというだけで、親が当然に損害賠償責任を負うわけではありません。親自身に具体的な監督義務違反があり、その義務違反と子どもの不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係が認められることが必要です。

上記最高裁判決の事案では、未成年者が以前から非行を繰り返していたにもかかわらず、両親が十分な監督を行わなかったところ、その未成年者が他の少年に対して重大な加害行為を行ったことについて、親の監督義務違反と結果との間に相当因果関係があるとして、親の損害賠償責任が認められました。

学校への責任追及

学校におけるいじめについては、学校や学校設置者に対して損害賠償責任を追及することができる場合があります。

公立学校については、教職員の職務上の行為について国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任が問題となることがあります。

一方、私立学校については、学校法人について民法715条の使用者責任等が問題となることがあります。また、学校法人自身の義務違反について、民法709条に基づく損害賠償責任が問題となる場合もあります。

学校側の責任が認められるかどうかについては、学校側がいじめを認識していたか、又は認識することができたか、いじめを防止するために適切な措置を講じたか、いじめを認識した後に適切かつ迅速な対応を行ったか、学校側の対応と生じた損害との間に因果関係があるかなどを踏まえて判断されます。

例えば、いじめについて具体的な申告があったにもかかわらず、学校が必要な調査を行わなかった場合や、いじめの存在を認識していたにもかかわらず、必要な対応を行わなかった場合などには、学校側の責任が問題となることがあります。

いじめ防止対策推進法

平成25年に、いじめ防止対策推進法という法律が制定され、学校におけるいじめの防止や早期発見、いじめが発生した場合の対応、重大事態への対処などについて、具体的な規定が設けられています。

いじめ防止対策推進法は、単にいじめ対策についての理念を定めただけの法律ではありません。

例えば、学校及び学校の教職員には、いじめの防止、早期発見及びいじめへの適切かつ迅速な対処について必要な措置を講ずる責務が定められています。

また、学校においていじめが疑われる場合には、学校による事実確認や被害児童等に対する支援、加害児童等に対する指導などが行われることになります。

さらに、生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがある場合などには「重大事態」として、学校の設置者又は学校による調査が行われることがあります。

もっとも、いじめ防止対策推進法は、いじめの被害者に対して直接損害賠償金を支払わせるような制度を定めた法律ではありません。

そのため、学校等の対応に問題があり、被害者が損害を受けた場合には、国家賠償法や民法等に基づく損害賠償請求を別途検討する必要があります。

このように、いじめ防止対策推進法は、いじめの防止や早期発見、いじめが発生した場合の学校等の対応、重大事態の調査などについて具体的な制度を設けており、学校におけるいじめ問題への対応において重要な法律となっています。

その他の法律による対処

(1)学校教育法による対処

いじめ防止対策推進法には、いじめを行った児童等に対する学校側の措置についても規定されています。

例えば、学校教育法35条1項には、

「市町村の教育委員会は、次に掲げる行為の一又は二以上を繰り返し行う等性行不良であって、他の児童の教育に妨げがあると認める児童があるときは、その保護者に対して、児童の出席停止を命ずることができる。」

と規定されています。

また、同項1号では、出席停止の対象となる行為として、「他の児童に傷害、心身の苦痛又は財産上の損失を与える行為」が挙げられています。

そのため、いじめを繰り返し行い、その結果として他の児童の教育を妨げるような状況がある場合には、教育委員会が出席停止を命じることがあります。

なお、学校教育法35条は小学校についての規定であり、中学校については同法49条により35条が準用されます。

もっとも、いじめを行った児童等がいるからといって、当然に出席停止となるわけではありません。出席停止は、具体的な事実関係や学校における教育環境への影響等を踏まえて判断されることになります。

また、出席停止は、いじめを行った児童に対する単なる制裁を目的とする制度ではありません。いじめを受けた児童その他の児童が安心して教育を受けられるようにすることも、その重要な目的の一つです。

そのため、いじめを受けた子どもの安全や教育を受ける権利を確保するとともに、いじめを行った子どもの教育を受ける機会にも配慮し、両者の利益を踏まえて具体的な措置を判断する必要があります。

(2)警察による対処

子ども同士で起こるいじめであっても、その行為が犯罪に該当する場合には、警察による捜査等の刑事手続が行われる可能性があります。

例えば、暴行、傷害、恐喝、強要、窃盗、器物損壊、名誉毀損、侮辱、脅迫などに該当する行為が行われた場合には、犯罪として刑事責任が問題となることがあります。

また、いじめ防止対策推進法23条6項では、いじめが犯罪行為として取り扱われるべきものであると認めるときは、学校が所轄警察署と連携して対処することが定められています。

さらに、生命、身体又は財産に重大な被害が生じるおそれがあるときは、学校は直ちに所轄警察署に通報し、適切に援助を求めなければならないとされています。

一方、子どもが14歳未満である場合には、刑法41条により刑罰を科すことはできません。

しかし、14歳未満の子どもが刑罰法令に触れる行為をした場合には、少年法3条1項2号の「触法少年」として少年法上の手続の対象となる可能性があります。

触法少年については、警察官が一定の事件について調査を行うことができ、事件の内容等によっては児童相談所長に送致されます。その後、児童相談所長から家庭裁判所に送致され、家庭裁判所による審判の対象となる場合もあります。

このように、14歳未満の子どもについては刑罰を科すことはできませんが、だからといって、犯罪に該当する行為について何の法的な対応もされないというわけではありません。少年法に基づく手続によって、児童相談所や家庭裁判所等が関与することがあります。

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