インターネット上のいじめ

どのようなネットいじめがあるか

ネットいじめというのは、インターネットを使ったいじめのことです。

ネットいじめとしては、SNSに悪口を書いたり、クラスメイトの参加するLINEを無視したり、SNSに個人情報を書いたり、いじめられている子の恥ずかしい写真や動画をアップロードしたりするものがあります。

ネットいじめが深刻になるのはなぜか

このネットいじめが深刻になる原因については、文部科学省のサイトでまとめられています。

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/040-2/shiryo/attach/1366995.htm
文部科学省令和6年4月24日参照。ただし、作成されたのが、2008年ごろなので、学校裏サイト等の現在では見られない問題が挙げられている。

これによれば、①不特定多数の者から集中的に誹謗中傷が行われることから、被害が短期間で極めて深刻になること、②ネットの匿名性から、子どもが簡単に被害者にも加害者にもなること、③SNSなどで子どもたちの個人情報や画像が流出し悪用されること、④保護者や教師などの身近な大人にとって、発見することが困難であるため、実態を把握して、効果的な対策を講じることが困難であることが挙げられています。

いじめを行った子どもの責任

刑法41条によれば、14歳に満たない者の行為は罰しないと規定されています。

しかし、14歳未満であっても、少年法3条1項3号の触法少年に該当するため、少年法の手続によって処遇される可能性はあります。

また、民法712条により、「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていな」いとして、民事的責任が免除される可能性があります。この責任能力が備わる年齢については、裁判例の積み重ね上、12歳以上であると考えられています。

また、民事的な責任追及を行ったとしても、子どもは金銭を有していないことがしばしばあることから、損害賠償金を支払える可能性が低いです。

そのため、いじめを行った子どもに対して責任追及をすることは困難です。

親への責任追及

このように、子どもに対して責任追及を行うことが現実的でないため親に対して監督責任を問うことが考えられます。

(1)刑法上の親の責任

子どもの行為について親に刑法上の責任追及を行うことについては、親がした行為ではないため、責任追及を行うことは困難です。

(2)責任能力のない未成年者に対する親の民事上の監督責任

しかし、民法714条1項によれば、未成年者に責任能力がない場合において、「その責任無能力者を監督する法定の義務を負うものは、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」と規定されていることから、12歳未満の子供がいじめで与えた被害については、親が損害賠償責任を負います。

(3)責任能力のある未成年者に親の民事責任

では、責任能力がある子どもの行為について親が責任追及を受けることがあるのかについてはどうなるのかという問題があります。

最高裁昭和49年3月22日判決によれば、「未成年者が責任能力を有する場合であっても監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係を認め得る」場合に損害賠償責任を負うと判断されています。

この最高裁判決の事例は、中学生の子どもがずっと非行を続けていたにもかかわらず、両親が子供を叱る等の適切な監督をせず放置していたところ、その子供が中学1年生の後輩を殺害し、現金を強奪したという事件で、この事例については、親の責任を認めています。

学校への責任追及

国家賠償法1条1項に基づいて学校を運営する市町村や民法715条に基づいて私立学校の運営法人に対して損害賠償請求を行うことが考えられます。

この責任追及については、いじめの事実についての申告があったにもかかわらず、適切な調査を行わなかった場合や、明らかないじめがあるのに、教職員が対応しなかった場合に認められます。

いじめ防止対策推進法

平成25年よりいじめ防止対策推進法という法律が制定されており、学校でのいじめ問題へ対処するための基本事項が定められています。

しかし、この法律というのは、どのような責務があるのかといういじめ対策についての理念を明記しただけの法律であり、国や地方公共団体が適切にいじめに対処しなかった場合の責任や不利益処分などについては規定されていません。また、いじめの被害者の救済についても何か役に立つような行政上の処分を与えるというものでもありません。

ただし、いじめが起こった場合には、いじめの起こった学校でいじめの実態調査を行うよう明記されている点やいじめられた子どもに対する保護、いじめを行った子どもに対する制裁について方針が定められていることを考えると、理念を定めただけでもいじめ対策としては進歩しているとも考えられます。

その他の法律による対処

(1)学校教育法による対処

上記の通り、いじめ防止対策推進法は理念しか書かれていないため、いじめ防止対策推進法に基づいて何かをするということはほとんど出来ないと考えられます。

しかし、例えば、学校教育法35条1項には、「市町村の教育委員会は、次に掲げる行為の一又は二以上を繰り返し行う等性行不良であって、他の児童の教育に妨げがあると認める児童があるときは、その保護者に対して、児童の出席停止を命ずることができる。」と規定されています。

また、この35条1項1号で、出席停止になる理由として、「他の児童に傷害、心身の苦痛又は財産上の損失を与える行為」をしたときと規定されていることから、いじめを繰り返し行うと、その子供は出席停止となり、学校に行けなくなります。

ただし、この手段は、いじめを行った児童の生育にも著しい不利益を与えることから、使うためには厳しいハードルがあるようです。この点が、いじめ問題の難しいところで、虐められている子どもと、いじめを行う子どもの人権や利益の調整を行ったうえで、判断しなければならないということです。

(2)警察による対処

子ども同士で起こるいじめが犯罪行為に該当するということであれば、警察の介入が期待できます。

子どもが14歳未満である場合、刑法犯ではないのですが、少年法の「触法少年」として処遇されます。この場合には、児童相談所、児童福祉士が子ども同士の事件について介入していきます。

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