ネットストーカー

ネットストーカーとは何か

ネットストーカーという用語自体について、明確な定義があるわけではありません。

確かに、「インターネットを利用して法律上禁止されるストーカー行為をはたらく人」という意味もあるのですが、それよりも広い「インターネット上でしつこく絡んでくる人」とか、「インターネットの投稿に対して、いつもアンチコメントを書き込む人」といったような意味合いで使われることもあります。

ただし、ここで問題にするネットストーカーとは、「インターネットを利用して法律上禁止されるストーカー行為をはたらく人」を指すものとして、検討していきます。

「ストーカー行為」とは何か

ストーカー規制法2条4項によれば、ストーカー行為等とは、「同一の者に対し、つきまとい等又は位置情報無承諾取得等を反復してすること」を指します。

この「つきまとい等」については、ストーカー規制法2条1項に定義があります。それによれば、以下の者を指します。

特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。

一 つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他その現に所在する場所若しくは通常所在する場所(以下「住居等」という。)の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと。

二 その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。

三 面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること。

四 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。

五 電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、文書を送付し、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールの送信等をすること。

六 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。

七 その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。

八 その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置き、その性的羞恥心を害する文書、図画、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下この号において同じ。)に係る記録媒体その他の物を送付し若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する電磁的記録その他の記録を送信し若しくはその知り得る状態に置くこと。

長いですが、①恋愛又は怨恨感情、②特定の者に対して行うこと、③各号いずれかの行為を行うことを指します。

特にネットストーカーで問題になりやすいものは、2号や3号、5号、7号、8号です。

例えば、SNSで○○が渋谷にいるときに、「○○ちゃん(くん)今渋谷にいるよね、見てるよ」などのメッセージを送信したり(2号)、「○○ちゃん(くん)復縁したい、会おうよ。」などのメッセージを送信したり(3号)、拒否しているにもかかわらず、「今ヒマ?」といったようなメールを連続して送信したり(5号)、「○○は××の好意を無下にするような卑怯者なの?」といったメールを送信したり(7号)、「これ君だよね?」と言って性行為中の画像を送信したり(8号)することを指します。

「位置情報無承諾取得等」については、ストーカー規制法2条3項によれば、以下のように定義されています。

特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。

一 その承諾を得ないで、その所持する位置情報記録・送信装置(当該装置の位置に係る位置情報(地理空間情報活用推進基本法(平成十九年法律第六十三号)第二条第一項第一号に規定する位置情報をいう。以下この号において同じ。)を記録し、又は送信する機能を有する装置で政令で定めるものをいう。以下この号及び次号において同じ。)(同号に規定する行為がされた位置情報記録・送信装置を含む。)により記録され、又は送信される当該位置情報記録・送信装置の位置に係る位置情報を政令で定める方法により取得すること。

二 その承諾を得ないで、その所持する物に位置情報記録・送信装置を取り付けること、位置情報記録・送信装置を取り付けた物を交付することその他その移動に伴い位置情報記録・送信装置を移動し得る状態にする行為として政令で定める行為をすること。

簡単に言えば、1号の場合が、スマートフォンアプリを操作して、自身のパソコンに位置情報を送信できるようにすることで、2号の場合が、GPSをカバンの中に忍ばせるなどの行為です。

「反復」について

この反復とは、複数回繰り返すことを指します。

この「反復」については、何十回のレベルではなく、2、3回程度行った場合にも認められる場合があるようです。

禁止命令について

ストーカー規制法については、刑事罰だけではなく、行政処分も予定されています。この行政処分が、禁止命令です。

ストーカー規制法5条によれば、禁止命令は、

  1. つきまとい等又は位置情報無承諾取得があった場合で、
  2. 被害者に身体の安全、住居の平穏、行動の自由が害されるとの不安を与えること、
  3. 反復してつきまとい等又は位置情報無承諾取得等を行うおそれがあることの要件を満たす場合に都道府県公安委員会に被害者が申し出ることによってストーカーを行っている人に禁止命令を発することができます。

この禁止命令は、ストーカーをしている者に警告を発するだけでなく、19条によるより重い処罰を期待できるため、効果があると考えられています。

ストーカー規制法に違反した場合の処罰

単純にストーカー行為をした場合には、1年以下の懲役または、100万円以下の罰金となります(ストーカー規制法18条)。

ストーカー規制法によって命じられる禁止命令に反してストーカー行為を行った場合には、2年以下の懲役または、200万円以下の罰金となります(ストーカー規制法19条)。

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