商標法違反について

※2025年6月1日より、改正刑法に基づき懲役刑および禁錮刑は「拘禁刑」に一本化されました。当ページでは法改正に基づき「拘禁刑」と表記していますが、旧制度や過去の事件に関連する場合は「懲役」「禁錮」の表現も含まれます。

商標権侵害になるのはどういう場合か

商標法25条では、「商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する」と規定されています。

そのため、原則として、商標権者の許諾を受けていない第三者が、指定商品又は指定役務について、登録商標と同一または類似する商標を使用するなどして、商標権の効力が及ぶ範囲で商標を使用した場合には、商標権侵害となる可能性があります。

「指定商品」や「指定役務」とは、商標登録の際に指定された商品やサービスのことです。商標権の効力は、登録された商標だけでなく、その商標について指定された商品・役務との関係で定まります。

例えば、ある会社が「ABC」という商標を「かばん」について登録している場合、第三者が「ABC」と同一または類似する商標をかばんに付して販売するなどすれば、商標権侵害となる可能性があります。

一方、同じ「ABC」という文字を、指定商品とは異なる商品について使用したからといって、当然に商標権侵害となるわけではありません。ただし、指定商品と類似する商品について使用した場合などには、商標法37条のみなし侵害に該当する可能性があります。

「使用」については、商標法2条3項に具体的な行為が定められています。

例えば、商品又は商品の包装に商標を付すること、商標を付した商品を譲渡・引渡し・そのために展示すること、輸入すること、インターネットを通じて商品を提供することなどが「使用」に含まれます。

また、役務についても、役務の提供に使用する物に商標を付したり、その物を用いて役務を提供したり、役務の提供に当たって商標を表示したりする行為などが「使用」に該当します。さらに、広告、価格表、取引書類、インターネット上の画面などに商標を表示する行為も、一定の要件の下で「使用」に含まれます。

なお、登録商標と全く同じ標章を使用した場合だけでなく、登録商標と類似する商標を使用した場合にも、指定商品・指定役務との関係で商標権侵害となることがあります。

みなし侵害について

商標法には、直接的な商標権侵害に該当する行為だけでなく、商標権侵害とみなして規制する行為についても規定されています。これが商標法37条の「みなし侵害」です。

例えば、商標法37条では、指定商品・指定役務と同一または類似する商品・役務について、登録商標と同一または類似する商標を使用する行為のほか、一定の要件の下で、侵害品の製造・販売等に使用される物品を業として製造・輸入する行為や、侵害品を譲渡等する目的で所持する行為などが規制されています。

したがって、単に「指定商品とは違う商品だから商標権侵害にならない」とはいえません。

例えば、登録商標の指定商品が「かばん」である場合に、第三者がその登録商標と同一または類似する商標を付した類似商品を販売する場合などには、商標法37条によるみなし侵害が成立する可能性があります。

もっとも、実際にみなし侵害が成立するかどうかは、登録商標と使用された商標との類否、商品・役務の類否、使用の態様などを具体的に検討する必要があります。

メルカリで「○○風」「#○○」と表示する場合にも注意が必要

近年では、メルカリなどのオンラインフリーマーケットで、他社のブランド名や商標を商品説明に記載して商品を販売するケースについても注意が必要です。

この点に関連する裁判例として、大阪地方裁判所令和3年9月27日判決があります。

この事件では、原告が「シャルマントサック」という商標を「かばん類、袋物」について登録していたところ、被告がメルカリ上で販売していたバッグについて、「#シャルマントサック」や「#シャルマントサック風」といった表示をしていました。原告は、これらの表示が商標権を侵害するとして、表示行為の差止めを求めました。

裁判所は、被告の表示について、登録商標と社会通念上同一の商標に当たるか、また、指定商品との関係で商標として使用されたかを検討し、被告標章1及び2について商標権侵害を認めました。

この裁判例からも、インターネット上の商品ページでブランド名や登録商標を表示する場合には、単に「ハッシュタグだから商標権侵害にならない」と考えることはできません。

ただし、**「#○○」や「○○風」と表示すれば必ず商標権侵害になるわけでもありません。**商標として使用されているか、登録商標との類否、指定商品・指定役務との関係などを個別に判断する必要があります。

商標権侵害を行った場合の罪の重さ

商標権を侵害した場合、商標法78条により、10年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金、又はこれらの併科が定められています。ただし、商標法37条の規定によるみなし侵害などについては、商標法78条の2が適用され、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又はこれらの併科となります。

また、法人の業務に関して商標法78条または78条の2などの違反行為が行われた場合には、行為者だけでなく、法人についても両罰規定が適用され、3億円以下の罰金が科される可能性があります(商標法82条)。

したがって、「個人が商標権を侵害した場合には罰金刑で終わることが多い」などと一律にいうことは適切ではありません。

実際の刑事処分は、侵害の規模、侵害品の数量・売上額、侵害行為を行った期間、商標権者に生じた損害、故意の程度、反省・示談の有無、前科・前歴などの事情によって異なります。

また、法人が関与する事件では、法人自体に高額の罰金が科される可能性もあるため、個人の場合と同じように処分を考えることはできません。

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