商標権侵害になるのはどういう場合か
商標法25条によれば、「商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。」と規定されています。
このように規定されていることから、商標権侵害となるのは、「指定商品又は指定役務」に対して、他人の登録商標を「使用した」場合に成立します。
指定商品又は指定役務とは、商標権者が商標登録の際に商標権の範囲として指定するものです。
例えば、アップル社のAPPLEの商標については、「電子計算機のプログラム設計・作成及び保守、電子計算機による情報処理、電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む)の貸与」が指定商品・指定役務として取得されています。
そのため、リンゴに対してAPPLEの商標をつけても、アップル社の商標権の侵害とはなりません。なぜなら、リンゴや農作物についてアップル社は商標の指定商品・指定役務として、指定していないためです。
「使用」については,商標法2条3項各号によれば、以下の行為をした場合に成立します。
- 商品や商品の包装に商標をつけること
- 違法な商標が付された商品を販売したり、商品棚に陳列したり、輸出したり、輸入したり、インターネット通販で買えるようにしたりすること
- サービスを提供するにあたって、引き渡した物に商標つけること
- サービスを提供する際に、商標に関するものを身に着けた状態でサービスの提供を行うこと
- サービスの提供をする際に商標の付いた衣服を着るということを示すこと
- サービス提供の際に、商標の付いたシールなどをつけること
- テレビ放送や、インターネット通販の際に、商標を表示すること、
- 商品の広告や、契約書に商標を付して、販売したり、インターネットのデータに商標を付すこと
- 音の商標の場合に、商品の宣伝や提供の際に、音を出すこと
そのため、これらの行為を商標権者に無許可で行った場合には、商標権侵害になります。
みなし侵害について
商標権については、みなし侵害の規定があります。
みなし侵害とは、簡単に言えば、商標権侵害ではないものの、商標権侵害として扱う行為のことを指します。
商標権のみなし侵害規定については、商標法37条各号に規定されています。
商標法37条によれば、以下の行為が規制されています。
- 指定商品に類似した商標をつけること(apple社のパソコンにあっぽうの商標を付すこと等)
- 指定商品に類似する商品に登録商標をつけること(電卓にappleの商標を付すことなど)
- 指定商品に類似する商品に類似した登録商標をつけること。(電卓にあっぽうの商標を付すること)
- 販売目的で、指定商品に偽ブランドロゴが付いたものを所持すること(appleの偽ブランド品を販売目的で、所持すること)
近年で気を付けること
最近問題になっている例は、メルカリなどでの中古品販売の際にブランド名をつけたり、メルカリで自作の商品を作って、○○風と付けて販売した場合に問題になります。
メルカリで、ハッシュタグに「#○○」と付けても、商標権侵害となります。
このことが問題となった例として、大阪地裁令和3年9月27日判決があります。
この事件は、被告がメルカリで、シャルマントサックに似たカバンを販売する際に、「#シャルマントサック」「#シャルマントサック風」と付して販売していたところ、シャルマントサックの販売会社から、商標権侵害を理由として、販売ページの差し止めを請求された事件です。
この事件について、裁判所は、「#シャルマントサック」という文字列は、シャープを入れたか入れないかに違いがあり、少なくとも類似していることを認め、シャルマントサックの指定商品であるバッグのページに付していることから、商標権侵害を認めました。
この事件から、偽ブランドの商品について、「#○○」「#○○風」とハッシュタグをつけて、販売することは、刑事事件になるかどうかは別として、商標権侵害になるということが言えます。
商標権侵害を行った場合の罪の重さ
商標権を侵害した場合には、商標法78条により10年以下の懲役若しくは、1,000万円以下の罰金又は、その併科が予定されています。
類似した商標を付した場合には、商標法78条の2により、5年以下の懲役若しくは、500万円以下の罰金又はその併科が予定されています。
商標法違反の犯罪の場合、個人が犯人の場合は商標権者である販売会社に対する被害が小さくなりがちであることから、罰金刑で終わる類型が多いです。一方、事業者が被告人になっているような類型だと、罰金刑では終わらないケースもあるようです。