性的姿態等撮影罪とは何か
性的姿態等撮影罪というのは、簡単に言えば、盗撮についての犯罪です。
ただし、盗撮と言っても、例えば、メディアが組織的な犯罪を行っている団体の長にインタビューに行き、犯罪行為をしている様子を隠し撮りしてカメラに収める行為を取り締まる法律ではありません。
性的姿態等撮影罪で取り締まられている盗撮とは、「性的な部位を覆っている下着や、人が性行為を行っている様子をひそかに撮影すること」を指します。
不特定多数の人に見られている場面の下着姿や、性行為を行っている様子、不特定多数の人に見られても良いと思っている場合の下着姿、性行為の様子を撮影することについては、処罰の対象から外れています(そのため、下着モデルの撮影や成人向けビデオの撮影は処罰対象外です)。
都道府県の迷惑防止条例による取り締まり
都道府県の迷惑防止条例では、盗撮が取り締まられています。
例えば、東京都の迷惑防止条例(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例)5条1項2号によれば、
次のいずれかに掲げる場所又は乗り物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。
イ 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所
ロ 公共の場所、公共の乗り物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物(イに該当するものをのぞく。)
と規定されています。
こちらは、ほとんど盗撮罪と重複しているように思われます。
ただし、東京都の迷惑防止条例5条1項3号によれば、「前2号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所又は公共の乗り物において、卑わいな言動をすること」も処罰対象となっています。
そのため、最高裁平成20年11月10日決定のように、ズボンを着用した女性の臀部(お尻)を数メートル先から、数分間付け狙い、撮影したような場合についても、「卑わいな言動」に当たるとしてこの5条1項3号によって処罰されると考えられます。
量刑について
性的姿態等撮影罪については、法律上3年以下の懲役又は、300万円以下の罰金刑が予定されています。
東京都迷惑防止条例の場合だと、単純な盗撮であれば、1年以下の懲役又は、 100万円以下の罰金が予定されており(東京都迷惑防止条例8条2項1号)、常習的な盗撮であれば、2年以下の懲役又は、100万円以下の罰金が予定されています(東京都迷惑防止条例8条7項)。
盗撮については、前科のない人であれば、概ね罰金刑となると考えられ、同種の前科前歴がある場合には、執行猶予付きの懲役刑となる可能性が高くなります。
損害賠償額について
民事訴訟になった場合、確認できた事例としては、デリヘル嬢と客の性行為を客が盗撮した場合に50万円の損害賠償請求を認めた事案があります(東京地方裁判所令和2年1月29日判決)。
そのため、性行為を撮影する場合については、このくらいの請求が認められると考えられます。
ただし、スカートの中を盗撮するような事案で、このくらいの額の損害賠償請求が認められるかは明らかではありません。
示談の額
盗撮の際の示談の額については、事案の性質、早期解決を望むかなどによって変わりますが、示談が成立した事例としては、40万、50万円が認められた例が多いようです。
盗撮を防止する方法
盗撮対策については、様々な方法で対策がされているようです。
電車や公共施設に訳もなく置かれているような鏡がその例です。
鏡があると、人の視線はその鏡に注目しがちであり、その鏡を見ると、背後が見えることから、その鏡を使って盗撮を発見するということがあるようです。
また、この鏡を使った盗撮防止というのは、盗撮を行う犯罪者にとっても効果的で、人に見られているという感覚を与え、盗撮しないようにしようと思わせる効果があります。