
X社の提供するサービスのGrokなどAIによる画像編集がより容易になってきました。一方で、実在する人物の画像を編集してわいせつな画像を作成し拡散するといった問題も起きています。特に児童が被写体の場合、被害はより深刻です。
AIによる画像編集
AIによる画像編集は、ディープフェイクとして問題となっていました。
ディープフェイクとは、深層学習(ディープラーニング)を利用して、複数の画像の一部を結合させ、新たな画像を生成する生成AI技術です。
ディープフェイクにより、実在する個人、特にその名前や容姿が重要な価値を有するとみなされている芸能人などに似せることも可能となり、ポルノなどわいせつ画像に、顔だけ有名人の顔に換える画像が問題となっていました。
児童ポルノ
18歳未満の児童のわいせつな画像を作成した場合、児童ポルノの製造に当たります(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(児童ポルノ法)第7条第3項。3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金)。不特定多数に提供又は公然と陳列すれば、わいせつ電磁的記録頒布より重く処罰されます(同法第7条第6項。5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又はこれを併科)。
日本の児童ポルノ法では、「児童」(同法第2条第1項)は実在する18歳未満の者です。
児童ポルノ(同法第2条第3項)は児童の姿態を「描写」したものです。これは写真等により実在する児童をそのままインプットし、そのままアウトプットしたものです。漫画やイラストなどは実在しないキャラクターですし、モデルが実在しているとしてもそのままアウトプットしたとはいえないので、「児童ポルノ」の対象外です。
しかし、今や生成AIにより実在する人物に近い表現や、まさに実在する人物の一部を利用した表現が表れており、これが「児童ポルノ」に該当するかどうかが問題になります。
AIではなくCGで作成した事案ですが、撮影当時18歳未満だった女性の過去のヌード写真をCGで再現したことが児童ポルノ製造にあたると疑われた事件がありました。
最高裁判所は、「同条3項にいう「児童ポルノ」とは,写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって,同項各号のいずれかに掲げる実在する児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいい,実在しない児童の姿態を描写したものは含まないものと解すべきである。」と判示し、当該事件のCGは児童の姿態を描写したものと判断しました(令和2年1月27日最高裁判所第一小法廷決定)。
これはCGを用いているとはいえ、実在した18歳未満の児童の姿態の画像を作成して、実際に見ても18歳未満の児童と認識できるため児童の姿態を描写したと判断したものです。写真かCGかという違いはあれども、実在する児童をインプットしてアウトプットしたという点では同じだと考えられます。
一方で、生成AIによる画像作成の場合、プロンプトに従って、それまでの学習成果を基に出力しているのであり、実在する児童をそのままインプット・アウトプットしたわけではありませんから、「児童」を「描写」したとは言えません。実在する人物の写真等を画像編集したとしても、改変した箇所は実在する人物のインプット・アウトプットをした「描写」とはいえず、日本では「児童ポルノ」に該当しない可能性があります。
もちろん日本以外の国では、実在する児童の描写以外のわいせつな画像も規制する国があり、当該国内(航空機内も含みます)でそうした画像を閲覧したりすれば、その国の法律により処罰される可能性があります。
2025年にも、日本サッカー協会の責任者がフランスの飛行機内で児童ポルノを閲覧したとして逮捕され有罪判決を受けました。
その他に成立する犯罪や損害賠償
名誉毀損
児童ポルノを作成して流出させると、実在する本人がそのように撮影されたのだと人々に受け取られます。これは、本人の社会的評価を低下させるおそれがあります。
このような行為は、名誉毀損(刑法第230条第1項。3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)となる可能性があります。
民事責任
以上のような画像編集は、上記のように名誉棄損に当たる可能性があります。また、本人の顔や姿を勝手に使用していることで、肖像権を侵害しています。
これらにより民事の損害賠償責任を負う可能性があります。
まとめ
このように、AIにより児童の画像を編集すると、様々な責任を追及される可能性があります。
AIによる画像編集や児童ポルノについてお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
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