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「よかれと思って」でも罪になるかも──地震のデマと、その投稿・拡散の法的責任

2026年7月28日、熊本県熊本地方を震源とする最大震度7の地震が発生し、気象庁はこの一連の地震活動を「令和8年熊本地震」と命名しました。
地震の発生後、SNSでは大量の偽情報が流れました。報道や専門機関の検証によって確認されているだけでも、次のようなものがあります。
・商業施設の爆発を映したように見える、生成AIで作られた偽動画
・過去の震災(2024年の能登半島地震など)の映像を、今回の映像として転用したもの
・「阿蘇山が噴火した」「寝台列車が脱線した」といった、事業者が否定した情報
・実在しない住所を書いた偽の救助要請と、QRコードやPayPayでの送金要求
偽情報に対して、総務省は28日に公式Xから科学的根拠のない真偽不明の情報が流通するおそれがあると注意喚起を行いました。29日にはGoogle・LINEヤフー・Meta・X・TikTokの主要5社に対して、利用規約等を踏まえた適切な対応を要請しています。
内閣官房長官も記者会見で、悪質な虚偽情報の流布は決して許されないと述べました。
とりわけ深刻なのが、偽の救助要請です。28日夜には「生き埋めになっています」という投稿が30万回以上閲覧されましたが、記載された住所は実際には存在しないものでした。文面や住所がほぼ同じで名前だけを変えた投稿が、複数のアカウントから発信されていたことも確認されています。
分析企業は、この手口を消防や警察の救助リソースを消耗させる影響の大きい行為だと指摘しています。助かるはずだった人のもとに、救助が届かなくなる。デマの怖さは、ここにあります。
法的責任は?
それでは、偽情報、デマの投稿や拡散は、法的にはどのような罪に問われるのでしょうか
① 偽計業務妨害罪(刑法233条)
嘘の情報を流して他人の業務を妨げた場合に成立し、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が定められています。
実際に2016年の熊本地震の直後、「地震のせいで動物園からライオンが放たれた」と画像付きで投稿した男性が、同年7月、偽計業務妨害の疑いで逮捕されました。熊本市動植物園に100件以上の問い合わせが殺到し、職員が本来の点検業務を行えなくなりました。男性は動機について「見た人を驚かせたかった」と説明していたと報じられています。
この件について、2017年3月に熊本地検は起訴猶予(不起訴)としましたが、逮捕され、報道され、長期間捜査対象となった事実はなかったことにはできません。「悪ふざけだった」ではすまない問題になります。
② 名誉毀損罪(刑法230条)
特定の個人や団体について「〇〇が火をつけた」などと事実無根の投稿をすれば、名誉毀損罪(刑法230条)にあたり得ます。
今回も、根拠のない加害者像を名指しする投稿が確認されています。
③ 詐欺罪(刑法246条)
被災者や支援者を装い、実際は被害に遭っていなかったり、支援をする意思がないのに、募金や送金を求めたりする行為は、詐欺罪(刑法246条)にあたり得ます。
国民生活センターや警察も、義援金詐欺や住宅修理をうたう便乗商法への注意を呼びかけています。
④ 民事上の損害賠償
刑事責任とは別に、民事上の損害賠償請求をされることもあります。企業や施設が風評被害を受けた場合、その額は決して小さくありません。
拡散した場合の責任
「拡散しただけ」でも責任は生じます。
大阪高裁令和2年6月23日判決は、コメントを一切付けない単純なリツイート(リポスト)であっても、元の投稿が他人の社会的評価を低下させる内容であり、リツイート(リポスト)した人が、元の投稿を自分のアカウントのフォロワーが閲読可能な状態にするということを認識していれば、原則としてその経緯・意図・目的を問わず不法行為責任を負い得ると判断しました。
「自分が書いたわけではない」「善意で広めただけ」という説明は、必ずしも免罪符にはなりません。
匿名でも同じです。発信者情報開示の手続によって、投稿者は特定され得ます。
迷ったら、拡散しない
専門家が共通して挙げる確認ポイントは、とてもシンプルです。
・投稿の日時を見る(地震の前の投稿が掘り起こされている例が確認されています)
・公的機関の情報と照らす(気象庁、自治体、ライフライン事業者の公式発表)
・確信が持てないときは、拡散しない
最後に
被災された方を思う気持ちから、少しでも情報を届けたいと考えて拡散なさる方がほとんどだと思います。しかし、その優しさが、意図せず誰かの救助を遅らせてしまうかもしれないということは、ネットユーザーとしては心に留めておかなければならないでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、ネット上の投稿によって被害を受けられた方の削除・発信者情報開示・損害賠償のご相談、思わぬ形で捜査の対象となってしまった方のご相談の双方をお受けしています。
「これは大丈夫だろうか」と迷われた時点で、どうぞお早めにご相談ください。
いじめ動画の再投稿・拡散は犯罪?名誉毀損罪や業務妨害罪などの法的リスク

SNS
いじめの様子と思われる画像が拡散されることが問題となっています。画像が社会に知られることで学校や警察が迅速に対応し被害を防ぐ可能性がある一方、無関係な第三者からの過剰なバッシングや、関係する学校等の情報の拡散の恐れもあります。そもそもいじめの様子でなかった場合や、無関係の人がいじめの犯人として誹謗中傷されるおそれもあります。
ここでは、いじめ動画を第三者が再投稿・拡散した場合の問題について解説します。
自分が犯罪者となりかねない
名誉毀損
いじめの被害者であれ加害者であれ、その様子が社会に知られれば、名誉を害されることになります。
動画の再投稿や拡散は名誉棄損罪(刑法第230条第1項)に該当する可能性があります。
事実を摘示して行うのが名誉棄損罪、事実を摘示せず行うのが侮辱罪(刑法第231条)ですが、画像の場合、事実が目に映る形で示されていますので、事実の摘示として名誉毀損に当たるでしょう。
名誉棄損罪の場合、3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処されます。被害者に対するもの、加害者に対するもの、いずれも成立しえます。
自分で投稿するだけでなく、他人の投稿にリポスト(X)や「いいね」をつけることも社会にその投稿を再度知らしめることになるため、自分で投稿したものと同じように扱われます。
名誉棄損罪が成立する場合でも、「公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない」(刑法第230条の2。真実性の証明)と定められています。真実と証明できなかったとしても、客観的資料に照らして真実と信じることが相当であると認められるときは、名誉毀損の故意がないとされ、処罰されません。
しかし、ただ投稿された画像だけでは、いじめが本当にあったのか、いじめが本当にあったとしても誰が犯人か、首謀者は誰か、ただ傍観しているだけか、といった真実を証明することは困難です。
再投稿のやり方によっては、単に加害者や学校をバッシングするだけの目的だとみなされれば、「公共の利害に関する事実」や公益目的さえも否定されかねません。
真実と信じることが相当であるかについても、自分自身で調査したわけでもなく、ただネットに流れている画像を再投稿などしただけでは、これを真実と信じることが相当だとは到底いえないでしょう。
業務妨害
担当者に対して、対応しないと学校情報をさらすなど脅してしまえば、別の犯罪となってしまいます。
学校情報をさらすなど脅せば、強要罪(刑法第223条第1項。3年以下の拘禁刑)に当たる可能性があります。
こうした学校へのクレームなどにより、学校の業務が妨害されれば、業務妨害罪(刑法第233条、第234条。3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)となってしまう可能性もあります。
民事責任
こうした動画拡散は、刑事責任だけでなく、不法行為に基づく損害賠償責任(民法第709条)を負うことになりかねません。
まとめ
以上のように、個人でいじめの様子と思われる画像を拡散することは、様々な問題があります。このような画像を見かけたら、まずは弁護士への相談をおすすめします。
いじめ画像のほかにも、インターネットで流れてくる情報への対応でお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
予測市場は違法?賭博罪・秘密漏えい・公務員の懲戒リスクを解説

ポリマーケットなどの予測市場が話題となっています。
予測市場は自由な情報のやり取りが期待できる一方、賭博に該当する恐れがあります。また、秘密漏洩やインサイダー取引などに発展する恐れもあります。
ここでは、予測市場について解説します。
予測市場とは
予測市場とは、参加者が将来の出来事の結果の確立に基づいて、取引をする市場です。予測対象となる出来事は、選挙結果や政策決定、天候、景気指標など様々なものが挙げられます。参加者は自ら予測対象を設定し資金を投入し、予測が的中すれば利益を得られます。
多数の参加者が自身の資金を投じて将来の出来事を予測することで、人々がある出来事についてどれだけ起きると考えているかを知る手掛かりになり、情報の自由なやり取りを活発化させることが期待されます。
予測市場としてはPolymarket(ポリマーケット)などが有名です。
日本で予測市場に参加した場合、賭博に該当する可能性があります。
「賭博」とは、勝敗が偶然の事情に左右されるもので、その勝敗により財物や財産上の利益の得喪が行われることをいいます。
賭博は国民に怠惰浪費の弊風を生じさせ、勤労の美風を害するばかりでなく、暴行その他の副次的犯罪を誘発し又は国民経済の機能に重大な障害を与えるおそれがあるとして、禁止されています(最高裁昭和25年11月22日大法廷判決)。
予測市場の賭けの対象は、基将来の出来事の結果の確立に基づいており、その勝敗が偶然の事情に左右されるものといえ、「賭博」にあたる可能性があります。
賭博(とばく)については、日本の刑法の「第二十三章 賭と博及び富くじに関する罪」にて、次のように定めています。
(賭博)
第百八十五条 賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。
(常習賭博及び賭博場開張等図利)
第百八十六条 常習として賭博をした者は、三年以下の拘禁刑に処する。
2 賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、三月以上五年以下の拘禁刑に処する。
(富くじ発売等)
第百八十七条 富くじを発売した者は、二年以下の拘禁刑又は百五十万円以下の罰金に処する。
2 富くじ発売の取次ぎをした者は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。
3 前二項に規定するもののほか、富くじを授受した者は、二十万円以下の罰金又は科料に処する。
スマートフォンの解析などにより予測市場の利用履歴が解析され、その頻度が多ければより重い常習賭博となる可能性があります。
運営元によっては、「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」(組織犯罪処罰法)違反となり、より重い刑罰(常習賭博:第3条第1項第5号、5年以下の拘禁刑。賭博開帳等図利:同項第6号、3月以上7年以下の拘禁刑)を科される可能性もあります。
秘密漏洩
賭博は当事者が左右できない事情を賭けるものです。
しかし、予測市場では、組織内の情報を知る者が、今後何が行われるかを知りつつ予測市場で賭けを行うことができることが問題となります。
アメリカでは、2026年1月に起きたベネズエラ大統領を逮捕した作戦の計画・実行に関わった兵士が、ベネズエラ大統領が失脚するかどうかと予測市場で賭けを行い利益を得たとして、訴追されています。
日本の公務員も、その秘密を漏らすことを禁じられており(国家公務員法100条1項、地方公務員法34条1項)、これに違反して秘密を洩らしたときは、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処されます(国家公務員法109条12号、地方公務員法60条2号)。
我が国の安全保障に関わるような特定秘密を、特定秘密を取扱う者が洩らしたときは、10年以下の拘禁刑に処され、情状によりさらに1000万円以下の罰金に処されます(特定秘密保護法第23条第1項)。
懲戒処分
賭博に該当する行為を公務員が行えば、刑罰を受けるだけでなく、所轄官庁による懲戒処分の対象になります。
国家公務員に関する「懲戒処分の指針」によれば、
3 公務外非行関係
賭博
ア 賭博をした職員は、減給又は戒告とする。
イ 常習として賭博をした職員は、停職とする。
と定められています。
まとめ
このように、予測市場への参加は、賭博に当たる可能性があるだけでなく、様々な問題があります。
予測市場について心配な方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
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犯収法改正で何が変わった?有償口座譲渡・不正送金の厳罰化を弁護士が解説

インターネットが発達し、銀行に行かずとも、インターネット上の操作で銀行の口座の管理や振込みなどもできるようになりました。
一方で、こうした口座が特殊詐欺に使われることも問題となっています。犯罪組織が通帳やキャッシュカードがなくても口座を集めたり、被害金を不正に送金してマネーロンダリングを行うことができてしまいます。
こうした事態を防ぐべく、犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯収法)の改正法が令和8年7月10日に施行されました。有償口座譲渡を重く処罰し、送金自体も犯罪とするなどの改正が行われました。
ここでは、犯収法の改正について解説します。
有償口座譲渡
犯収法
第二十八条 他人になりすまして第二条第二項第三十一号に掲げる特定事業者(以下この項及び第三十二条第四項第一号において「資金移動業者」という。)との間における為替取引により送金をし若しくは送金を受け取ること又はこれらを第三者にさせることを目的として、当該為替取引に係る送金の受取用のカード、送金又はその受取に必要な情報その他資金移動業者との間における為替取引による送金又はその受取に必要なものとして政令で定めるもの(以下「為替取引カード等」という。)を譲り受け、その交付を受け、又はその提供を受けた者は、三年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。通常の商取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、有償で、為替取引カード等を譲り受け、その交付を受け、又はその提供を受けた者も、同様とする。
2 相手方に前項前段の目的があることの情を知って、その者に為替取引カード等を譲り渡し、交付し、又は提供した者も、同項と同様とする。通常の商取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、有償で、為替取引カード等を譲り渡し、交付し、又は提供した者も、同様とする。
3 業として前二項の罪に当たる行為をした者は、五年以下の拘禁刑若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
4 第一項又は第二項の罪に当たる行為をするよう、人を勧誘し、又は広告その他これに類似する方法により人を誘引した者も、第一項と同様とする。
口座の譲受については、以前から罰則付きで規制されていました。
第1項は譲り受ける側、第2項は譲り渡す側を処罰します。いずれも前段の「他人になりすまして」よりも後段の「通常の商取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、有償で、」の場合が多く検挙されてきました。正当な理由もないのに有償で口座の譲渡を行えば、通常は不正な行為であることが明確だからです。
「有償」とは、実際に報酬を支払った場合はもちろん、お金を貸す場合や、報酬を支払う約束をしてまだ支払っていない場合も含まれます。
改正前は、1年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金又はその併科でした。これが、3年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金又はその併科と大幅に引き上げられました(犯収法第26条第2項・第1項)。
譲受する側も譲渡する側も、業として行えば、さらに重い処罰が科されます(第3項。改正法では5年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金又はその併科)。
不正送金の処罰
犯収法
第三十二条 通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、自己又は第三者が管理し、又は管理しようとする財産を移転することを目的として、人に、有償で特定役務利用財産移転行為をするように依頼した者は、二年以下の拘禁刑若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、当該目的で、有償で特定役務利用財産移転行為をするよう、広告その他これに類似する方法により人を誘引した者も、同様とする。
2 通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、他人の依頼を受けて、当該他人に前項前段の目的があることの情を知って、有償で特定役務利用財産移転行為をした者は、二年以下の拘禁刑若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、特定役務利用財産移転行為を引き受けることを示して、有償での特定役務利用財産移転行為の実施を自己に依頼するよう、人を勧誘し、又は広告その他これに類似する方法により人を誘引した者も、同様とする。
3 業として第一項前段又は前項前段の罪に当たる行為をした者は、三年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
4 第一項及び第二項において「特定役務利用財産移転行為」とは、次に掲げる行為をいう。
一 預貯金契約等役務(次のイからホまでに掲げる特定事業者との間における当該イからホまでに定める契約に係る役務及び預貯金取扱事業者又は資金移動業者との間における為替取引による送金又はその受取に係る役務をいう。次号及び第三号において同じ。)を利用して自己以外の者に財産を移転する行為
イ 預貯金取扱事業者 預貯金契約
ロ 高額電子移転可能型前払式支払手段発行者 高額電子移転可能型前払式支払手段利用契約
ハ 電子決済手段等取引業者 電子決済手段等取引契約
ニ 電子決済等取扱業者等 電子決済等利用契約
ホ 暗号資産交換業者 暗号資産交換契約
二 預貯金契約等役務を利用して受け取った財産に相当する財産の全部又は一部を自己以外の者に移転する行為
三 預貯金契約等役務を利用して財産を受け取ることを約して、当該財産に相当する財産の全部又は一部を自己以外の者に移転する行為
通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、自己又は第三者が管理し、又は管理しようとする財産を移転することを目的として、人に、有償で送金(「特定役務利用財産移転行為」犯収法第32条第4項)をするように依頼した者、広告その他これに類似する方法により人を誘引した者は、2年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金を科され、又は併科されます(犯収法第32条第1項)。
そして、通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、他人の依頼を受けて、この他人が自己又は第三者が管理し、又は管理しようとする財産を移転する目的があると知って、有償で送金した者も、2年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金を科され、又は併科されます(犯収法第32条第2項前段)。
このような送金をすることを引受けることを示して、送金を自分に依頼するよう人を勧誘し、又は広告その他これに類似する方法により人を誘引した者も、同様の刑を科されます(犯収法第32条第2項後段)。
これにより不正送金や、その勧誘を処罰します。
業としてこれらの行為をすれば、3年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金を科され、又は併科されます(犯収法第32条第3項)。
「正当な理由」とは、飲食会の幹事が代金を参加者から集めてお店に振込むような場合です。
まとめ
このように、特殊詐欺やマネーロンダリングを防ぐため、有償口座譲渡や不正送金を厳格に処罰するようになりました。
他人に依頼されて口座譲渡や送金をしてしまいお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
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生成AIで作成した児童ポルノは違法?児童ポルノ法・ディープフェイク規制の最新動向を解説

X社の提供するサービスのGrokなど生成AIによる画像作成がより容易になってきました。一方で、児童ポルノなどのわいせつな画像を作成し拡散するといった問題も起きています。特に児童が被写体の場合、被害はより深刻です。ここでは、生成AIにより作成された児童ポルノについて解説します。
生成AIで作成されたポルノは「児童ポルノ」か
児童についてのわいせつな画像は「児童ポルノ」として規制されます(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(児童ポルノ法)第2条第3項)。
18歳未満の児童のわいせつな画像を作成した場合、児童ポルノの製造に当たります(児童ポルノ法第7条第3項。3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金)。
不特定多数に提供又は公然と陳列すれば、わいせつ電磁的記録頒布より重く処罰されます(同法第7条第6項。5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又はこれを併科)。
日本の児童ポルノ法では、「児童」(同法第2条第1項)は実在する18歳未満の者です。
児童ポルノ(同法第2条第3項)は児童の姿態を「描写」したものです。これは写真等により実在する児童をそのままインプットし、そのままアウトプットしたものです。漫画やイラストなどは実在しないキャラクターですし、モデルが実在しているとしてもそのままアウトプットしたとはいえないので、「児童ポルノ」の対象外です。
しかし、今や生成AIにより実在する人物に近い表現や、まさに実在する人物の一部を利用した表現が表れており、これが「児童ポルノ」に該当するかどうかが問題になります。
日本以外の国では、実在する児童の描写以外のわいせつな画像も規制する国があり、当該国内(航空機内も含みます)でそうした画像を閲覧したりすれば、その国の法律により処罰される可能性があります。
2025年にも、日本サッカー協会の責任者がフランスの飛行機内で児童ポルノを閲覧したとして逮捕され有罪判決を受けました。
しかし、日本の場合、上記の通り、実在している「児童」であることが前提ですので、一から生成AIで作成した児童と思われる者のポルノ画像は「児童ポルノ」に当たりません。
一方で、児童の映っている写真を加工するなど一部は実在する児童の姿態を用いた場合は児童ポルノに当たる余地があると考えられます。
このような画像は、ディープフェイクとして問題となっていました。
ディープフェイクとは、深層学習(ディープラーニング)を利用して、複数の画像の一部を結合させ、新たな画像を生成する生成AI技術です。
これまでも、ディープフェイクにより、実在する個人、特にその名前や容姿が重要な価値を有するとみなされている芸能人などに似せることも可能となり、ポルノなどわいせつ画像に、顔だけ有名人の顔に換える画像が問題となっていました。
このような画像は、実在する本人がそのように撮影されたのだと人々に受け取られます。これは、本人の社会的評価を低下させるおそれがあります。このような行為は、名誉毀損(刑法第230条第1項。3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)となる可能性があります。
また、本人の顔や姿を勝手に使用していることで、肖像権を侵害しています。これらにより民事の損害賠償責任を負う可能性があります。
もっとも、これらは、あくまで実在する本人の名誉や肖像権を害することを問題としており、児童ポルノであることを問題にしていません。
「児童ポルノ」該当性の余地
CGで作成した事案ですが、撮影当時18歳未満だった女性の過去のヌード写真をCGで再現したことが児童ポルノ製造にあたると疑われた事件がありました。
最高裁判所は、「同条3項にいう「児童ポルノ」とは,写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって,同項各号のいずれかに掲げる実在する児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいい,実在しない児童の姿態を描写したものは含まないものと解すべきである。」と判示し、当該事件のCGは児童の姿態を描写したものと判断しました(令和2年1月27日最高裁判所第一小法廷決定)。
これはCGを用いているとはいえ、実在した18歳未満の児童の姿態の画像を作成して、実際に見ても18歳未満の児童と認識できるため児童の姿態を描写したと判断したものです。写真かCGかという違いはあれども、実在する児童をインプットしてアウトプットしたという点では同じだと考えられます。
一方で、生成AIによる画像作成の場合、プロンプトに従って、それまでの学習成果を基に出力しているのであり、実在する児童をそのままインプット・アウトプットしたわけではありません。
ディープフェイクの場合でも、一部は実在する「児童」そのものを「描写」していますが、AIで編集した部分は実在しておらず「描写」とはいえない可能性があります。
最新の裁判例
児童の写真を性的に加工した物が児童ポルノに該当するとした判決が、令和8年6月4日、名古屋地方裁判所で下されました。
この事件は、教員が女子児童の盗撮画像等をSNSのチャットグループで共有したということで社会を震撼させました。その所持していたわいせつな画像の中には、女児の写真をAIで加工した画像もありました。
名古屋地裁は「一般人から見れば裸を誤信させる精巧なもの」などと指摘し、「児童ポルノ」に該当するとしました。画像では児童の顔や姿勢などはそのまま使われており、性的な部分は編集によるものだとしても本物の裸と見分けがつかず、「描写」したものに該当すると判断したと考えられます。
もっとも、これは地裁の判断であり、上級審で覆される可能性があります。
条例による規制
以上のとおり、実在する児童の写真を性的に加工すれば「児童ポルノ」に該当する余地はありますが、まだ確定したわけではなく、情勢は流動的です。
一方で、鳥取県の青少年健全育成条例などのように、条例で実在する児童の写真を性的に加工したものも「児童ポルノ」に含めて規制対象としている自治体もあります。
鳥取県青少年健全育成条例
第3章 青少年の健全な成長を阻害する行為の規制
(定義)
第10条
9 この章以下において「児童ポルノ等」とは、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号)第2条第3項に規定する児童ポルノ又は同法第7条第2項に規定する電磁的記録その他の記録をいい、生成AIその他の情報処理に関する技術を利用し、青少年の容貌の画像情報を加工して作成した姿態(当該青少年の容貌を忠実に描写したものであると認識できる姿態に限る。)を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録及びその記録媒体を含む。
(児童ポルノ等の提供の求めの禁止)
第18条の2 何人も、正当な理由がなく、青少年に対し、当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を求めてはならない。
(児童ポルノ等の作成、製造及び提供の禁止)
第18条の3 何人も、児童ポルノ等の作成又は製造(県内に居住し、又は県内に通学若しくは通勤する青少年の容貌の画像情報を加工して作成した姿態に係る児童ポルノ等について本県の区域外で行われる作成又は製造を含む。)をしてはならない。
2 何人も、SNSの利用その他の手段により児童ポルノ等の提供(県内に居住し、又は県内に通学若しくは通勤する青少年の容貌の画像情報を加工して作成した姿態に係る児童ポルノ等について本県の区域外で行われる提供を含む。)をしてはならない。
3 知事は、前2項の規定に違反した者に対して、期限を定めて、当該児童ポルノ等の廃棄、削除その他の必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
4 知事は、前項の規定による命令を受けた者が当該命令に従わないときは、その者の氏名若しくは名称又はこれらに代わる呼称及び当該命令の内容を公表することができる。この場合、当該公表による青少年の心身への影響に十分配慮するものとする。
第6章 罰則
第26条
5 次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金に処する。
(4) 第18条の2の規定に違反した者
第28条
第18条の3第1項又は第2項の規定に違反したときは、当該違反行為をした者は、5万円以下の過料に処する。
2 第18条の3第3項の規定による命令を受けた者が当該命令に従わないときは、5万円以下の過料に処する。
まとめ
このように、生成AIによる児童ポルノについても処罰できる可能性があります。
児童ポルノについてお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
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暗号資産とネットトラブル~仮想通貨取引に潜む法的リスクと規制を解説~

ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)に注目が集まっています。こうした新しい分野には、大きな経済効果を期待できる一方で、対面の取引はまず考えられず、過剰な広告、利用者を誤認させる詐欺的な取引、個人情報の漏洩、さらには暗号資産そのものの流出も問題になっています。
ここでは、暗号資産とそれに関わるネットトラブルについて解説します。
資金決済に関する法律
暗号資産について、「資金決済に関する法律」(資金決済法)では、次のように規定されています。
資金決済に関する法律第2条
第14項
この法律において「暗号資産」とは、次に掲げるものをいう。ただし、金融商品取引法第二十九条の二第一項第八号に規定する権利を表示するものを除く。
一 物品等を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨、通貨建資産並びに電子決済手段(通貨建資産に該当するものを除く。)を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
第15項
この法律において「暗号資産交換業」とは、次に掲げる行為のいずれかを業として行うことをいい、「暗号資産の交換等」とは、第一号又は第二号に掲げる行為をいい、「暗号資産の管理」とは、第四号に掲げる行為をいう。
一 暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換
二 前号に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理
三 その行う前二号に掲げる行為に関して、利用者の金銭の管理をすること。
四 他人のために暗号資産の管理をすること(当該管理を業として行うことにつき他の法律に特別の規定のある場合を除く。)。
第16項
この法律において「暗号資産交換業者」とは、第六十三条の二の登録を受けた者をいう。
第17項
この法律において「外国暗号資産交換業者」とは、この法律に相当する外国の法令の規定により当該外国において第六十三条の二の登録と同種類の登録(当該登録に類するその他の行政処分を含む。)を受けて暗号資産交換業を行う者をいう。
暗号資産によるトラブル
資金洗浄(マネーロンダリング)の手段としても利用されます。
特殊詐欺で送金させた詐取金を暗号資産に換えて送金するなどの手口が行われています。
このような悪用を防ぐため、暗号資産について、様々な規制が課せられています。
資金決済法では「第三章の三 暗号資産」(第63条の2以下)で規制されています。
暗号資産(仮想通貨)を扱うためには、暗号資産交換業者として登録する必要があります(資金決済法第63条の2第14項)。
この登録を受けないで暗号資産交換業を行うと、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金に処され、又はこれを併科されます(資金決済法第107条第12号)。
法人の代表者などが違反をした場合、法人も同額の罰金刑を科されます(資金決済法第115条第1項第4号)。
暗号資産交換業者として登録するためには、株式会社又は外国暗号資産交換業者(国内に営業所を有する外国会社に限る。)であること(資金決済法第63条の5第1項第1号)、(資金決済法第63条の5第1項第3号・暗号資産交換業者に関する内閣府令第9条第1項第1号)などの条件を満たす必要があり、条件を満たさないときは、登録を拒否されます(資金決済法第63条の5第1項柱書)。
登録後も、情報の安全管理(資金決済法第63条の8)、利用者の保護等に関する措置(同法第63条の10)、利用者財産の管理(同法第63条の11)などの規定を遵守し、利用者の保護を図らなければなりません。
暗号資産の性質について利用者を誤認させないよう、様々な規制が設けられています。
暗号資産交換業の広告においては、暗号資産は本邦通貨又は外国通貨ではないことのほか、暗号資産の性質であって、利用者の判断に影響を及ぼすこととなる重要な事項を表示しなければなりません(資金決済法第63条の9の2)。この重要な事項として、①暗号資産の価値の変動を直接の原因として損失が生ずるおそれがあるときは、その旨及びその理由、②暗号資産は代価の弁済を受ける者の同意がある場合に限り代価の弁済のために使用することができること、が定められています(暗号資産交換業者に関する内閣府令第18条)。
暗号資産の売買契約の締結や勧誘などにおいて、虚偽の表示をしたり、暗号資産の性質について相手方を誤認させるようなことは禁止されています(資金決済法第63条の9の3第1号・暗号資産交換業者に関する内閣府令第19条)。これに違反すると、1年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金に処され、又はこれを併科されます(資金決済法第109条第10号)。法人の代表者などが違反をした場合、法人も2億円以下の罰金刑を科されます(資金決済法第115条第1項第2号)。
資金決済法第63条の9の3第2号では「その行う暗号資産交換業に関して広告をするに際し、虚偽の表示をし、又は暗号資産の性質等について人を誤認させるような表示をする行為」、第3号では「暗号資産交換契約の締結等をするに際し、又はその行う暗号資産交換業に関して広告をするに際し、支払手段として利用する目的ではなく、専ら利益を図る目的で暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換を行うことを助長するような表示をする行為」を禁止しています。これらに違反すると、6月以下の拘禁刑若しくは50万円以下の罰金に処され、又はこれを併科されます(資金決済法第112条第14号)。法人の代表者などが違反をした場合、法人も同額の罰金刑を科されます(資金決済法第115条第1項第4号)。
このように暗号資産は、新しい取引の可能性を持つだけでなく、様々なネットトラブルのリスクもはらんでいます。
暗号資産についてご不安な方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
インターネット不正送金被害の法的対応とは?刑事責任・補償・回復手段を解説

インターネットが発達し、銀行に行かずとも、インターネット上の操作で銀行の口座の管理や振込みなどもできるようになりました。一方で、電話やSNSで誘導されて送金したり、アカウントを乗っ取られて預金を下ろされたり送金されてしまう被害も増えてきました。
ここでは、不正送金被害について解説します。
不正アクセス禁止法違反
コンピューターウイルスソフトでネットバンキングのIDやパスワードを盗んでアクセスすることは、不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)の不正アクセス行為にあたります。
「不正アクセス」とは、次のいずれかに該当する行為と定められています(同法第2条第4項)。
①アクセス制御機能を有する特定電子計算機に電気通信回線を通じて当該アクセス制御機能に係る他人の識別符号を入力して当該特定電子計算機を作動させ、当該アクセス制御機能により制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為(当該アクセス制御機能を付加したアクセス管理者がするもの及び当該アクセス管理者又は当該識別符号に係る利用権者の承諾を得てするものを除く。)
②アクセス制御機能を有する特定電子計算機に電気通信回線を通じて当該アクセス制御機能による特定利用の制限を免れることができる情報(識別符号であるものを除く。)又は指令を入力して当該特定電子計算機を作動させ、その制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為(当該アクセス制御機能を付加したアクセス管理者がするもの及び当該アクセス管理者の承諾を得てするものを除く。次号において同じ。)
③電気通信回線を介して接続された他の特定電子計算機が有するアクセス制御機能によりその特定利用を制限されている特定電子計算機に電気通信回線を通じてその制限を免れることができる情報又は指令を入力して当該特定電子計算機を作動させ、その制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為
典型的なのがIDとパスワードを入力してアクセスできるところに、許可なく他人のIDとパスワードを入力してアクセスする場合です。
なお、パスワードは「識別符号」(同法第2条第2項)のうちの「当該アクセス管理者によってその内容をみだりに第三者に知らせてはならないものとされている符号」(同項第1号)に当たりますが、パスワードだけでは意味がないので、IDが「その他の符号」として、IDとパスワードで「次のいずれかに該当する符号とその他の符号を組み合わせたもの」として「識別符号」に当たります。
不正アクセス行為をすれば、3年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処されます(不正アクセス禁止法第3条、第11条)。
以下の行為も禁止されています。
不正アクセス行為の用に供する目的で他人の識別符号を取得すること(同法第4条)
業務その他正当な理由による場合でなく他人の識別符号をアクセス管理者や利用権者以外の者に提供すること(同法第5条)
不正アクセス行為の用に供する目的で不正取得された他人の識別符号を保管すること(同法第6条)
アクセス管理者になりすましたりアクセス管理者と誤認させて識別符号の入力を要求すること(同法第7条)
これらの違反行為をすれば、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処されます(同法第12条第1号~第4号)。
詐欺・窃盗
実際に不正送金をして財産的な被害を与えれば、窃盗罪(刑法第235条)や詐欺罪(刑法第246条)といった財産犯が成立します。
ATMからお金を下ろすように人が介在していない場合は、窃盗罪(刑法第235条。10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)となります。
銀行員に対して行えば詐欺罪(刑法第246条。10年以下の拘禁刑)となります。
他人に成りすましてIDやパスワードを入力して勝手に送金などすれば、電子計算機使用詐欺罪(刑法第246条の2。10年以下の拘禁刑)となります。
実際に被害を被るのは口座名義人ですが、法律上はいずれも被害者は銀行になります。
被害の回復
上記のとおり、不正送金をされても法律上は被害者は銀行となってしまいます。そこで、実際の被害者である口座名義人への補償が重要になってきます。
偽造カードや盗難されたカードによる被害であれば、偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律(預金者保護法)により補償が行われます。しかし、ネットバンキングでの不正送金被害の場合はこのような救済法はありません。そのため、銀行と利用者の契約(約款)に従って補償されます。
ネットバンキングの不正送金のような被害でも、各銀行は、基本的に全額補償をすると定めています。ただし、被害を受けてから一定期間の内に届出をする、銀行の調査に協力する、警察に相談する、などの要件を満たすことが必要です。また、利用者側に過失があると全部又は一部の支払いをしないと定められているところが多いです。IDやパスワードを入力してしまったような場合、過失があるとされやすいです。
これについては、利用者側で銀行に対し過失がないことを主張・立証することで、補償額を増やすよう求めることが考えられます。
また、不正送金に関わった者が検挙された場合、法律上の被害者は銀行ですが、実質的な被害者である口座名義人ですので、加害者との示談をして被害を回復することが考えられます。
いずれの方法でも、法律の専門家である弁護士の援助があればよりよい結果を目指せるでしょう。
まとめ
このように、不正送金被害を受けると、個人では被害の回復は困難となります。
不正送金被害でお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
ママスタ掲示板の誹謗中傷は削除できる?削除請求の方法と弁護士対応を解説

【事例】
Aさんは,ママスタに漫画を投稿している専業主婦です。ある日,義理の母親に小言を言われて腹が立ったことを内容に漫画を描いて投稿したところ,ママスタ内の掲示板に,「そんなんで腹が立つのかよ,幼稚すぎ」「これは,嫁が悪い,こんなことで義理の母を悪く言うなんてとんでもない嫁だ」などと投稿されました。(本事例はフィクションです。)
このような場合に,Aさんがどのようにして,掲示板の投稿の削除を求めることができるか解説します。
削除請求を行う方法として,大きく,①ママスタの掲示板で削除請求を行う方法と,②裁判所に申し立てを行い,削除請求を申し立てる方法があります。
ママスタの掲示板で削除請求を行う方法
ママスタの掲示板については,トピックを削除する方法と,掲示板のコメントを消す方法とで,操作方法は違います。今回は,掲示板のコメントを消す方法について解説していきます。
ママスタの掲示板のコメントの削除請求を行う場合には,問題となる投稿の番号をクリックして,問題となった投稿が拡大されると,右上に,「通報/削除依頼」が表示されるので,クリックします。
そこに,削除依頼をする人の名前と,削除理由を書き込みます。削除理由には,どういう投稿から,請求をする人のどのような権利が侵害されたのかを書き込んでいきます。
その上で,「確認する」をクリックして,請求することができます。
そのようにして,削除請求した後,数日してから,投稿が削除されているということになります。
裁判所を介して削除請求する方法
ママスタに削除請求をしても削除されないという場合には,裁判所を通じて削除請求を行うことになります。
ママスタの運営会社は,株式会社インタースペースであり,どのような投稿から,どのようにして名誉が侵害されたのかということを主張することになります。権利侵害があると大まかに認められれば,通常の裁判より,簡易迅速な手続により削除されます。
今回の【事例】のような事件の場合,Aさんに向けた名誉権侵害があると考えられますので,削除請求が認められる可能性があります。
このような手続で,ママスタのけいじばんの書き込みの削除を行うことができると考えられますので,名誉棄損に当たると考えられる投稿でお困りの場合には,弁護士に依頼されることをお勧めします。
海外企業のプラットフォームでも日本で裁判できる?発信者情報開示請求と国際裁判管轄を弁護士が解説
国際裁判管轄について

発信者情報開示請求について,「誹謗中傷が書き込まれたプラットフォーマーが日本の会社じゃないから日本で裁判を起こせないのではないか」,「プラットフォーマーが海外の会社だとして,日本のどこに裁判管轄があるのかわからない」という意見をいただくことがありますので,発信者情報開示請求の際の国際裁判管轄について解説していきます。
(1)国際裁判管轄とは
国際裁判管轄とは,ある法的問題について,どの国の裁判所で裁判を起こせるかを振り分ける基準のことを指します。
国際裁判管轄についての規定は,民事訴訟法3条の2以下に規定があります。
そのため,例えばシンガポールにいる日本人に対して,日本の新聞社が名誉毀損となるような記事を書き,日本やシンガポールでその記事が見られた場合,被告の住所地が日本にあるため,民事訴訟法3条の2第1項に基づいて,日本の裁判所が国際裁判管轄を有することになります。
また,アメリカのニューヨーク州の新聞社が,日本にいる日本人に対して,名誉毀損となるような記事を書き,日本だけでなくニューヨーク州の人にも見られた場合,民事訴訟法3条の3第8号に基づいて,日本の裁判所にも国際裁判管轄があることになります。
この民事訴訟法上の国際裁判管轄だけではなく,プロバイダ責任制限法にも発信者情報開示請求に関する特別な国際裁判管轄に関する規定があります。この規定によって,海外に本社を有する会社に対しても国際的な裁判管轄があるかどうかが判断されます。
プロバイダ責任制限法9条1項2号には,発信者情報開示請求に関する国際裁判管轄についての規定があります。プロバイダ責任制限法9条1項2号イによれば,「相手方の主たる事務所又は営業所が日本国内にある」場合に日本に国際裁判管轄があると規定されています。そのため,日本にも法人がある会社については,日本に国際裁判管轄があることになります。
(2)日本にも会社法人が無い場合はどうなるのか
日本にも会社法人が無い場合の規定については,プロバイダ責任制限法9条1項3号に規定があり,「日本において事業を行う者を相手方とする場合において,申し立てが当該相手方の日本における業務に関するものである」場合には,日本に国際裁判管轄があることになります。
この規定が使われた例として,知財高裁令和6年10月4日決定があります。
この事例は,申立人が,台湾に所在する法人で,アクセスプロバイダである被申立人(「中華電信股份有限公司」)に対して,著作権侵害を理由として,発信者情報開示を求めた事件です。
この事件について裁判所は,「台湾に所在し,電気通信業を営む法人であるものの,日本国内において,主に台湾からの旅行者のために国際ローミングサービスを提供しており,日本の航空等では日本から台湾への旅行者向けにSIMカードを販売していることが認められる。」として,「日本において事業を行う者」と認めました。
また,コンテンツプロバイダである「『BOOTH』は日本語が使用される日本向けのサイトであって,相手方が台湾で提供するインターネット接続サービスが,当該サイトのサーバに接続され,その結果,本件各投稿がされたこと,本件各投稿のうちの一部の投稿には,『お初のオリジナルTL漫画です。よろしくお願いします』,『追加支援のお方ありがとうございます。今後もよろしくお願いします。』との流暢な日本語による記載があることが認められ,本件投稿は,日本人向けに提供されているSIMカードその他の相手方の日本人向けサービスを利用して行われた可能性が高いといえる。」として,「日本における業務に関連する」ことが認められました。
その結果,日本にも国際裁判管轄があることが認められ,東京地方裁判所で,発信者情報開示が認められました。
(3)まとめ
このように,日本の会社がアクセスプロバイダや,コンテンツプロバイダになっていないとしても,日本に国際裁判管轄が認められる場合がありますので,アクセスプロバイダやコンテンツプロバイダが日本の会社じゃないとしても弁護士に相談してみることをお勧めします。
投稿したイラストがピクシブに無断転載されてる⁉ 無断転載を削除するための手続や流れを解説!
ピクシブに投稿されたイラストの削除

【事例】
Aさんは,αとしてイラストレーターとして活動しています。Aさんはイラストをピクシブ(pixiv)やXに上げて投稿しており,甲というタイトルのイラストもピクシブやXに上げていました。
しかし,Aさんがある日ピクシブを見ていると,βというアカウントの人が,Aさんのイラストをそのまま自分のイラストとして上げていました。
そのため,Aさんは,βのイラストを削除することを考えました。
この場合に,どのようにして,βが挙げているイラストを削除できるのか解説していきます。
(事例はフィクションです。)
削除請求
削除請求を行う方法は大きく二つあります。
①ピクシブのお問い合わせフォームや郵送で削除依頼を行う方法
②裁判所に対して削除請求を行う方法
そのため,それぞれの方法について解説していきます。
①ピクシブのお問い合わせフォームや郵送をする方法
ピクシブには,削除申請フォームというものは存在していません。ですが,ピクシブのお問合せフォームが削除申請フォームと同様の役割を果たしており,お問い合わせフォームから連絡することによって,削除請求を行うことができるようです。
また,もう一つの手段として,ピクシブの運営会社に送信防止措置依頼書を送信することで対応することも出来ます。
これらのどちらかを使って,著作権侵害などを理由に削除請求を行うことができます。
この方法によって,ピクシブが著作権侵害の著作物を削除してくれることがあるようです。
②裁判所に申し立てを行い,削除請求を行う方法
ピクシブに削除請求を行ったにもかかわらず,削除がされない場合,削除仮処分を申し立てることによって,削除請求を行うことが考えられます。
ピクシブはピクシブ株式会社が運営会社となっています。
そのため,ピクシブ株式会社を被申立人として,どのような投稿が著作権侵害で,誰が著作権者なのかを示し,権利侵害があると主張することになります。そこで,権利侵害があると認められれば,通常の裁判より簡易迅速な手続によって削除が認められます。
今回の【事例】のような事件の場合,著作権者であるAさんではない人が,勝手に甲を公開していますので,著作権侵害が考えられます。
そのため,今回のような事例の場合,ピクシブ株式会社に対して,投稿の削除請求をすることができると考えらえます。
このような手続によって削除をすることが考えられますので,著作権侵害に当たるような投稿でお困りの場合には,弁護士に相談することをお勧めします。
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